FC2ブログ




店を出て総二郎と別れ、俺はマンションに帰ってきた。
牧野はまだ戻っていない。

現在時刻は23:43

いつ牧野や三条から連絡があるとも限らない。
俺はシャワーも浴びず、着替えもせずに、脱いだコートを投げ出してリビングのソファに座って携帯をいじっていた。


RR ………


そこへ着信があり、コール音が鳴る前に俺は通話をスライドした。


「今どこだ?」


電話の相手は三条で、Rememberにいるから迎えに来いとのことだった。


「牧野は一緒だよな? どうしてる?」

『先輩は語り疲れてカウンターに突っ伏して寝ちゃってます。』

「語り疲れてってことはお前に全部、話したのか?」

『…道明寺さん、先輩がどうしても道明寺さんは嫌だって言ったらオーストリアに連れ去りますからね。』

「はぁ!?? おい、ふざけんなっ」

『もう、いいですから、早く来てください! 私は早く帰って泣きたいんですから!!』

「泣きたいぃ!?? ったく、すぐに行くからそこにいろよ!」


泣きたいって三条は一体、何を聞いたんだよ。
そして牧野は何を語ったんだよ!

俺は投げ出したコートを手に取り、マンションを出た。








Rememberに着くと、手前に三条、奥に牧野が座り、牧野は肩にコートをかけられ三条が言った通り、カウンターに突っ伏していた。


「おい、こいつどれだけ飲んだ?」


俺はマスターに問いかけた。
マスターは穏やかな笑みを見せた。


「ジンライムを2杯とカラントサンライズを1杯です。」


カラントサンライズ…『希望』か…

そんなことを薄らと思い出しながら牧野の奥側に立って背に手を当て、腕に伏せた顔を覗き込めば寝息が聞こえた。


「それで、牧野はなんだって?」


俺は牧野の向こうの三条を見た。
こっちに顔を向けた三条は泣いたような赤い目をして、そして珍しく化粧の崩れた顔だった。


「そんなこと、道明寺さんには話しません。先輩は私だから打ち明けてくださったんですよ? 先輩の許しがない限り、墓場まで持っていきます。」

「お前な、何のために呼んだと思ってんだよ!? それで牧野は本当は俺をどう思ってるって?」

「だから、それも含めて内緒です。道明寺さん、とにかく、先輩をそのまま受け入れてあげてください。一生でも待ってあげる覚悟で包んであげてくださいね? じゃないと、私が奪いに来ますから!」


三条も珍しく出来上がってる。


「ってことは、いつかはって希望を持ってていいんだよな?」


三条はカウンターチェアから降り、酔いが回った目で俺を見上げた。
目が据わってるぞ。


「いつかは、じゃありません! もうすでに、なんです。でも先輩はそれを認めたくなくて、逃げてるだけです。また道明寺さんを奪われるのが怖いんですよ! もうっ! 男でしょ!? それくらい、わかってあげてくださいよっ!!」


三条の迫力に押され気味になり、その言葉を理解するまでに数秒が経過した。


「………え?」


とぼけた反応を返す俺に、三条がもう一歩迫った。


「え? じゃありません! 先輩はもうすでに道明寺さんを……いえ、これは私の口から言うことじゃありませんね。……それと、先輩は怒ってますからね!」

「は? 何に?」

「だ〜か〜ら、そういうとこですって! わかんないとこが女の神経を逆撫でするんですよ! 先輩の怒りが解けるまでずっと先輩に尽くし続けてくださいね! 以上です! 桜子は帰ります!」


三条は自分のコートとバッグを手にすると、マスターに「また来ます!」と声をかけて店を出て行った。

酔っ払いの剣幕に呆気に取られていたが、三条の言葉がリフレインされて喜びと焦りという相反する感情がジワジワとこみ上げた。
顔をマスターに向けるとまた微笑まれた。


「な、お前、二人の話を聞いてたんだろ? 牧野はなんだって?」


マスターは微笑みを崩さないままに口を開いた。


「そのご質問に答えてしまったら、私は今夜で店を閉めなければいけませんね。」


フン、わかってる。
客同士の話が耳に届いても記憶には留めないのがバーテンダーって職業だ。
ましてやそれを第三者に漏らすなど、プロ失格だろう。


「わかってたが万が一にも聞いただけだ。」


俺の負け惜しみのような言葉にもマスターは微笑んだままで、きっと悪い話じゃなかったんだろうってことだけはわかった。


「牧野、牧野、起きろ。帰るぞ!」


三条の声にも目を覚さなかった牧野の眠りは深く、揺り動かしても一向に起きなかった。


「仕方ねぇな。」


俺は牧野を抱き上げた。
2月上旬。
立春は過ぎたが、外はまだ寒風が吹き荒んでいる。
カウンターを回ってきたマスターにコートを被せさせ、俺は牧野を横抱きしたまま店を出た。







結局、牧野はマンションに着いても目を覚さず、運転手に荷物を持たせて抱きかかえたままで部屋に入った。
そして俺のベッドに寝かせてジャケットを脱がせ、上掛けをかけて俺はベッドの端に腰掛けて牧野の頬を撫でている。

時刻は午前1時半。
今夜はこのまま寝ちまうか?
それなら、と、俺はシャワーを浴びようと立ち上がった。


「ん……道明寺…?」


背後から聞こえた声に、また寝言かと振り返れば牧野の双眸は俺を捕らえていた。
やや驚いて、俺はまたベッドに腰掛けた。


「起きたか?」

「ん…運んでくれたの? この部屋は…」

「俺の部屋だ。」

「はぁ…そっか。ごめん。」

「飲み過ぎだ。水飲むか?」


牧野はベッドに起き上がって髪を解いて頭を振った。
が、すでに二日酔いに襲われているらしく、額を押さえてその表情を歪めた。


「大丈夫か?」

「んー、ごめん。大丈夫。起きる。」


そう言ってベッドを出たが、足元をふらつかせて思わず俺にしがみついた。


「大丈夫じゃねぇだろ。水、持ってきてやるから寝てろ。」

「いいって。シャワーも浴びたいし、自分の部屋に戻る。」


牧野は俺から離れるとそのままフラフラと部屋を出て行った。

んだよ…
何も変わってねぇじゃん。

『もうすでに道明寺さんを…』

あれって「もうすでに俺のことが好き」ってことじゃないのか?
そうとしか解釈のしようがないけど、牧野のあの様子じゃ三条の勇み足か?


「ハァ…」


総二郎や三条との再会も期待した結果が得られず、俺は落胆したままバスルームに入った。









にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
にほんブログ村

2019.11.13




先輩の話を聞き終えた私は、拭えども拭ども流れ落ちる涙を止められずにいた。


「なんで桜子が泣いてんの?」

「だって…先輩…」


22時を過ぎたこんな時間にこんなに泣いたら明日は外に出られないじゃない。
わかってるのに、先輩が哀しいから…哀しすぎるから…可哀想だから…


「あんたも相当なお人好しだよね。あんたはあたしを罵っていいのよ? 殴ってもいい。同情なんてしなくていいの。」

「できませんよ! できるわけない。そんなに苦しんだ先輩を責められる人なんていません…」


泣き過ぎた私の前にお冷やが置かれた。
そうだ、もう飲んでなんていられない。
この哀しい先輩を幸せにしないと。


「先輩。先輩が愛してるのが18歳の道明寺さんだってことはよくわかりました。だったら、今の道明寺さんとは別れたらどうですか? それでオーストリアに来ませんか? 一緒に暮らしましょうよ! 先輩は日本から離れた方がいいです。道明寺さんから離れた方がいい。じゃないとあの人、絶対に先輩を諦めませんから。」


いえ、例え宇宙の彼方に先輩が引っ越そうとも諦めるなんて言葉はあの人の辞書には載ってないですけどね。


「………」

「道明寺さんだって、先輩が自分を愛してないってわかってるんですよ? 私に頼ってきたくらいですから。ならもうここでキッパリと断ち切った方がいいです。それが先輩の幸せのためです。」

「別れていいの? 別れないために呼ばれたんじゃないの?」

「確かに、別れたら道明寺さんはまた不幸になるでしょうけど、別れなきゃ先輩が不幸になります。今はもう、先輩の方が大事なんです。」

「あたしと別れたらあいつが不幸になる? 別れなかったらもっと不幸になるよね? だって…」

「先輩…道明寺さんは、どんな先輩でも愛せます。愛してくれてます。例え先輩が一生、今の道明寺さんを愛せなくても、それでもいいからそばにいて欲しいって思ってるに決まってます。私が愛した道明寺さんはそういう男だから。」

「桜子…」

「でも先輩はそうじゃないんでしょ? 生身の道明寺さんに愛されることが苦しんでしょ?…いいえ…違いますよね…生身の道明寺さんを、愛することが怖いんでしょ?」


私を見つめていた先輩の目が見開かれた。
私の瞳の奥の奥を探るように見つめている。
今が核心に迫る時だ。


「先輩は怖いんです。愛してまた奪われるのが。そして怒ってるんです。他の女を見た道明寺さんに。先輩はそんな盛大なヤキモチをもう15年も引きずってる最高に面倒臭い女なんですよ?」




***




バーを出て行った牧野を追おうとした俺の前に総二郎が立ちはだかった。


「どけ!」

「まぁまぁ、司。これってすげぇチャンスだと思わないか?」

「はぁ!?? お前マジでふざけんなっ! 殴られたくなかったらどけ!」




その後、三条が牧野を追いかけてバーを出て行った。


「まあ、座れ。」


俺の前から退いた総二郎はまた元の位置に腰掛けた。


「いいから座れ! ほら!」


総二郎は俺が座っていたソファをバシバシと叩き、さらに俺を促した。
俺は奥歯を噛みしめながらも、総二郎を信じて腰を下ろした。


「で? 何がチャンスだって?」


怒りが収まらない俺はグッと空けたグラスを振り下ろすようにテーブルに置き、右側の総二郎を睨みつけた。


「わかんねぇか?」

「だから何をだよっ!」

「嫉妬だよ。」

「嫉妬?」


総二郎は自信ありげに片側の口角を上げ、左脚に片腕を乗せ、俺の方に身を寄せて前屈みになった。


「あの反応、あれはどう見ても嫉妬だろ。出て行ったのだって、これ以上お前の女関係の話を聞きたくなかったからだ。」

「嫉妬……」


そう言われて嬉しくなる単純な俺。
牧野が嫉妬?
俺に?
“ 今の ” 俺に?


「あいつはわかってる。あいつ自身、昔も今もなくお前に惚れてるってことは。でも昔に固執するのはなんでか。肝はそこだ。」

「それを三条が聞き出そうってのか?」

「そうだ。あいつなら聞き出せる。お前の人選、さすがだな。」


総二郎は「ははっ」と笑ってグラスを空けた。
程なくしてモニターで空のグラスを確認したバーテンダーが次を持ってきた。
そのグラスを手にした総二郎はなおも俺をのぞき込んだ。


「んで? おばさんのほうは大丈夫なのか?」

「ああ、先手は打った。だが必ず報復してくるはずだ。」

「牧野にSPは?」

「付けてある。職場にも店長に言って潜入させてある。」

「そうか。ま、気を付けろよ。どんな手でくるかわかんねぇからな。」

「ああ。だが、今回は『牧野から離れて行く』って手札も使えねぇ。どんな理由だろうと、あいつが俺から離れた時点で俺は道明寺を終わらせるからな。」

「完全に牧野の意思だとしてもか?」

「ああ。」

「ひょ〜、怖いねぇ。江戸の仇を長崎で討つみてぇじゃん。」

「そもそもの元凶は15年前にある。正当な報復だ。」

「でもその手札はいつまで有効なんだ?」


総二郎の目は真剣だった。
こいつのこんな顔、見るのは珍しい。
だがその懸念も当然だ。
俺に握られたとわかった以上、あの女なら証拠隠滅を図るはずだ。
ロシアの会社が跡形もなく消滅すれば俺の切り札は効力を失う。
それまでになんとか牧野とのカタを付けなければ。


「手こずれば1年、早ければ半年ってとこだろ。」

「半年か。微妙だな。その間に結婚まで持ち込めればいいが。」

「…愛がなくても判は押せるさ。」

「最終手段だな。」


いざとなったらあいつの合意はいらない。
届けさえ出せればいい。

今日の総二郎はハイペースだ。
もう2杯目を空けようとしていた。


「おばさんを黙らせたこと、牧野には?」

「まだ言ってない。」

「早く言ってやれよ。それであいつの気持ちが軽くなってお前に向き合うかもしれないんだし。」


そうだな。
なぜ今まで牧野に話そうと思わなかったのか。

それはあの女の話をしたくなかったからだ。
俺と牧野の時間に、チラともあの女を割り込ませたくなかったからだ。


「だな。できるだけ早めに話しておく。」

「ああ、そうしろ。」


とは言え、やはり牧野にあの女の話をするのはためらわれた。
俺があんな女の息子だということを、できれば忘れて欲しい。再認識して欲しくない。
自分の母を恥じる思いが、この15年、俺のもう一つの苦しみだった。










にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
にほんブログ村

2019.11.12




皆様、こんばんは!

寝る前にコメントをチェックしたら今日は凄い数のコメントをいただいててビックリ!

皆様、ありがとうございます!!
拍手、拍手コメント、コメント、励まし、そして当ブログを訪れて読んでくださる全ての皆様に心からの感謝を申し上げます!!

それに、昨日の長期休載宣言にも多くの拍手をいただきまして、皆様の温かいお心が伝わってきました。
本当に、感謝です。

実は今年、転職しまして^^;
気ままなパートタイマーだったのですが、フルタイムになりました。
それで書く時間が減ったというわけです。
(今までどんだけユルい働き方してたんだ!)
でも二次は読むのも書くのも好きなので、細々とでも続けて参ります。

続けるんですが、私の信条『毎日更新』と『絶対完結』を達成するためには書き溜めないといけないわけでして、そのために長期に更新をお休みせずを得ないというわけです。
ご理解をいただいて心強いです。
頑張って新作、書きます。

というわけで、忙しくてコメントへの返信が遅くなるのでこのように一時しのぎで御礼の記事をアップしました。
決して落ち込んで返信がないとかじゃないのでご安心ください。
コメントを書くという手間をかけてくださるのも愛情だと捉えてますから、大丈夫です^^


さて、「18歳のキス」ですが、これ、かなり複雑で、いつもの司つく的面白さに欠ける作品だということは重々承知しております。
でも書きたかったんですよね〜

やっとつくしの心がわかったところで、これからつくしは、司はどうしていくのか。
そして楓は!?

実はまだ完結させてないんですが(汗)50数話になる見通しです。
最後はRかな? どうかな? 書いてないけど。。。

ともあれ、ハッピーエンドであることはお約束します!
なんせワタクシ、司命ですので。

では、取り急ぎ御礼まででした。
これからも当ブログをよろしくお願い致します!

                    nona










2019.11.12




__牧野つくしの独白【後半】



結局、それから1ヶ月後にあたしは彼と別れた。
何度か求められたけど、もう応えられなかったから。
彼が悪いんじゃない。
あたしがあたしの中の道明寺を愛しすぎてたの。

そして大学を卒業して就職して東京に異動になって。
その間も何度か男性とお付き合いしたけどキス以上には進めなかった。
でも20代も後半になってさすがにこのままじゃダメだと思った時に出会ったのが元夫の小椋雅也さん。
とてもいい人だった。
何度も告白されて根負けしたように付き合って。
優しくて面白くて楽しかった。
だから結婚したの。
まだ道明寺が心の中から消えてなかったけど、今度こそきっと大丈夫。
雅也さんを愛せるようになると確信してた。

…はずだったのに、夜になって触れられるとダメだった。
キスをして手が胸に触れる。
ゾワゾワとするのは快感じゃなく嫌悪感。
できない夜が続いて、雅也さんを徐々に追い詰めて行っているのがあたしにもわかった。
と同時に、あたしも自分に落胆してた。
添い遂げようと結婚までした夫を受け入れられない自分、いつまでも道明寺を忘れられない自分に。
それでも雅也さんは優しい人だったから無理強いされることはなく、そのこと以外は平和に過ぎていった。

だけど、彼を覆う影が日に日に色を濃くしていたことにあたしは気づかなかった。
そしてある日、詳細は割愛するけどついにあたしたちの関係に亀裂が入った。
あたしはこのまま結婚生活を続けることは彼を不幸にするだけだと思って家を出た。
その時のあたしの心にあったのはただ自己嫌悪だけ。
一人の男性の人生を巻き込んでもなお、道明寺を忘れられない自分への怒りと呆れ。
それと思い知らされたのは自分自身の甘さだった。
この時になってあたしはやっと、本当に本気で道明寺を忘れようと決意した。

そうして雅也さんと離婚後は、なんとか道明寺を過去のものにしようと努力した。
過ぎるたびに振り払い、思い出すたびに閉じ込めた。
そのうちに普通の男女のお付き合いもできるようになって、ああ、やっとあたしは道明寺を過去にできたんだと思った。




そして迎えた再会の日。
14年を経たあいつはあの頃より力強くなった体格で一分の綻びもないスーツを完璧に着こなして、少年の幼さなんて微塵も残ってない精悍な美貌を携えて、でもあの巻き毛だけは変わらない姿でそこに立っていた。

ねぇ、想像してみて。
18歳の少年が一足飛びに32歳になってたんだよ?
あたしの戸惑い、わかるでしょ?
バカだった野獣は女に慣れた紳士になってた。
ベッドへの誘い方は全然紳士じゃなかったけど。あはは。
でもあたしは香り立つようなそのオーラに一瞬で抱きこまれて、身動きが取れなくなってた。

再会したその日に関係を持った。
鈍感で潔癖だった14年前が嘘みたいに、あたしはあいつの手に溶かされて、熱くなって、到達したことのない世界に誘われた。
それまで自分は不感症だと思うほど苦痛を伴ってたから、本当に信じられなかった。
道明寺が経験豊富だから?
それとも昔、好きな人だったから?
とにかくあたしは女の快楽ってものに溺れていった。

でも身体は熱くなっても頭の芯は冷えていた。
この人にもう一度恋するなんてありえない。
やっと思い出にして葬った愛を掘り起こすなんて冗談じゃない。
だってこの人はあたしとは違う世界の人で、いつかまた離れなきゃいけないんだからって、頭の中で孤独にうずくまる自分が絶えず語りかけてきた。
だから過剰な期待なんてしないで、ただ夜を楽しむためだけにここに通ってきてた。
道明寺もきっとそのつもりなんだから、って。

そんな関係が半年も続いた頃、あいつが突然、あたしの職場に「好きな女ができた」って報告に来た。
あたしには何の感傷もなかった。
だって予定通りだもの。
また別れの時なんだ。やっぱりね、こうなるよね、でもなんでわざわざ職場に来て言うのよ。迷惑!って、それだけだった。

そしたらあいつ、好きな女はあたしだって言い出した。あたしがまだ好きで必要だって。
びっくりしたよ。
まさか、想像もしてなかったから。
でもあいつの真剣な眼差しがあの頃の道明寺を思い出させた。
その時に思った。
ああそっか、奪われた道明寺が還ってきてくれたんだ、あたしの手の中に戻ってきてくれたんだって。

そして付き合い始めて、楽しかった。
お互いに14年が過ぎてあの頃の熱情とは違うけど、あたしの中には今の道明寺に対する穏やかな愛情ってものがあって、今は今の愛し方があるんだって思えた。


そうやって1ヶ月が過ぎた頃、道明寺が同棲したいってワガママを言い出した。
あたしは同棲には反対だったけど、もう昔の意地っ張りでも頑固者でもない。
彼氏の頼みを聞き入れるだけの柔軟性を身につけてた。
だから承諾したら、その日のうちに引越し作業が行われた。

そして荷物の中からあの運命の日以来、開いてなかった土星のネックレスが入ったケースが出てきた。
過去を克服したはずのあたしは、およそ12年ぶりにそれを開けた。
そして手に取って光にかざすと、それはもらったときと何も変わらない輝きを放ってた。
道明寺が言った。


『変わらねぇな。まるで俺たちの想いみたいに。』


変わらない想い…
変わらない輝き…

そう思ったら、土星のネックレスに永遠の輝きを閉じ込めたあの日のことが蘇った。
それと同時にあらゆる苦しみが手の中から溢れ出た。

慟哭
寂寞
懊悩
後悔
嫉妬
憎悪
…そして痛みと決別

変わらないものなんてあるはずない。
あたしたちは変わった。
18歳の道明寺が愛してくれたあたしはもういない。
そしてあたしが愛した道明寺も、もういないんだ。

そう思ったら後から後から涙がこぼれた。
あたしは雨の中に置き去りにした道明寺の名を呼び、謝り続けた。
変わってしまってごめん。
もう戻れなくてごめん。
会いたい、会いたい。
でもあたしはもうあんたには会えないんだよ、ごめんねって。



次に目覚めた時、あの雨の中の彼が15年前そのままの姿であたしの中に蘇っていて、隣には大人になった道明寺が眠ってた。

この人、誰だっけ?
道明寺のお兄さんだっけ?
この人が道明寺?
ちがう、ちがう、この人じゃない。
あたしの道明寺はこの人じゃない。

あたしが愛してる道明寺は18歳の無垢なままの彼なんだから。
二度と会えないけど、でも失うことだってない。
心の中の彼を愛し続けるのを邪魔するものはない。

もう誰にも奪われない、あたしだけの永遠の彼を。









にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
にほんブログ村

2019.11.11




皆様、こんばんは!

「18歳のキス」お楽しみいただけているでしょうか?

今日と明日の更新でつくしの心情が明かされますが、それでもこじらせは終わりません。
イライラさせてしまって申し訳ありません。
なんとか11月中には完結の予定ですので、あと少しおつき合いください。


さて、少し早いのですが、私はせっかちなので告知をしようと思います。
「18歳」完結後、「Let's be a Family !」の新作を更新した後は、またしばらくお休みをいただきます。
と言いますのが、プライベートが忙しくなりまして、書く時間が6割も削減されてしまいました。
なので新作はこれまでになくお時間をいただく事になります。

早くても年明け・・・下手したら春?な、レベルです。
しかもオモテの作品じゃない可能性もあり、本当にどうなるのか自分でもわかりません。

しかし、これだけはお約束したいです。
以前に、「妄想が暴走中」という記事でお披露目した作品群は何年かかっても書きたいです。
それを書き終える(もしくは不測の事態が起きる)までは二次をやめません。


というわけで、引き続き「18歳のキス」をお楽しみください!


                    nona









2019.11.10