FC2ブログ




翌日、俺は秘書の西田を呼びつけた。


「西田」

「はい」

「俺は天草清之介に会ったことがあったか?」

「・・・・。天草清之介様と申されますと、代議士、天草虎之介氏のご長男ですね?」

「ああ、そうだろうな。」

「はい、おありです。」

「! いつだ!?」


俺は思わず西田に振り向いた。


「確か、8年ほど前に天草代議士が催されたパーティです。」

「8年前? ってことは俺が英徳の3年か?」

「はい。総帥の代理で出席なさいました。」

「・・・・」

「それがいかがなさいましたか?」

「いや、いい。」


つまり、俺は記憶をなくす前に天草清之介に会ったことがあったのか。

その時俺は初めて、失った記憶の一端が夢に現れていることを知った。
だが、天草清之介が重要な記憶!?
なにか政治的な密約に関係することか?

いや待て、おかしいだろ。
清之介は家を出て寿司職人になってるんだ。
天草家の長男は家業を毛嫌いしてると聞いたことがある。
そんな男が、父親のために密約の手助けなどに関わることがあるだろうか。

鍵は次の夢の中にある。
俺の直感はそう告げていた。
いいさ、今夜を待てばいいだけだ。

俺はそろそろ夢に翻弄される日常にうんざりしていた。
夢の謎を解いて、早く解放されたかった。




***




ペントハウスに帰って早々、俺は夢に挑むような気持ちで横たわった。
夢の正体が知りたい
そんな不思議な感覚に囚われていた。








パーティーだ。
ああ、このことか。
西田が言ってたのは。
代議士・天草虎之介が長男を披露目するために開いたパーティーだな。



あの女がいる!
なぜだ!?
そうか、天草に招待されたんだな。
こんなところにノコノコ現れやがって。

天草が壇上に立つ。
後継の放棄を宣言する。
そして結婚したい女を紹介すると告げると、ステージを降りてこちらに近づいてくる。
まさか・・・

・・・俺は、俺からこの女を奪うヤツは誰であろうと許さねぇ。
心の奥底から湧き上がる獰猛な怒りが拳となって、天草に襲いかかった。
こいつをぶっ殺してやる・・・


政治家のパーティーで乱闘を演じたのが、政界のジュニアと財界のジュニアだったから、翌日には大騒動になっていた。

おいおい、あの女はビンボーなのかよ。
なんだ?あの小屋は。
あれが家か?
流石に俺とは釣り合わないだろ。

そう言えばあいつには家柄も財産も何もないんだな。
だから天草なんかに付け込まれるんだよ。
あいつには何か肩書きが必要だ。
俺に相応しいと誰もが納得する肩書きが。

あるじゃねーか!
今年はあれの年だ。
3年に一度、日本一の女子高生を決める大会だ。
前回の優勝者は静、前々回は俺の姉ちゃんだった『あれ』だ。

俺は密かにあいつをエントリーした。
で、どうやって説得するかなーと思っていたら、あいつの方から飛び込んできた。

100万を貸して欲しい?
100万なんて、そんな小遣い程度の金でお前の家庭は崩壊するのかよ?
でも俺を頼ってくれてうれしかった。
女は交換条件をのんだ。
日本一の女子高生を決める大会、ティーン・オブ・ジャパンへの出場だ。

よし、出ると決まったからにはお前が狙うのは優勝だけだ。
姉ちゃんがいてくれて助かったぜ。
あと2週間、みっちりエイセイ教育で鍛えてもらえ。

順調に頑張っていると報告を受けていたのに、今夜は様子がおかしい。
レッスンをボイコット?
何があった?

様子を見ようと部屋に近づくと、女が出てきた。
手には荷物を持っている。
ははん、逃げ出す気だな。
どうせ身の程知らずだなんだと陰口を言われたんだろう。

お前はそんな尺度で測れる女じゃねえんだ。
お前がお前らしくしてれば、それだけで勝てるはずだ。
なんせ俺が惚れたほどの女なんだからよ。

ひとりにしたら折れそうな脆さを感じて、そばにいてやりたくて、俺の部屋に誘った。
誓って何にもするつもりはねーぞ。
ただ息抜きをさせてやりたいだけだ。
とりあえずトランプでもするか。

自信を失くしてる女を励ましてやりたい。
へえ、間近で見ると本当に可愛くなってやがる。
「自信持てっ」
俺が女にこんなことを言う日が来ようとはな。
でもこいつは本当にもっと自信持っていいぜ。


大会が始まった。
「美」も「知性」もあの女らしさが人の心を打つ。
やっぱり俺が見込んだ女だ。
最後の審査は「良妻賢母」。
ガキが出てきてどっちの女がいいか選ばせるらしい。
こすいことさせやがるな。

女は審査だってことを忘れて、大きな瞳を輝かせて天真爛漫に遊んでいる。
やっぱりあいつは不思議と人の心を動かすんだよな。
ガキどもはどっちも選べなくなって、結論は審査員に委ねられた。

結果は準優勝。
よく頑張った。









にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
にほんブログ村

スポンサーサイト



2020.10.18
コメント記入欄