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司は昨日までとは違うイラつきを抱えていた。

“ 喜んで離婚届を書きます ”

あんな庶民の女の一人や二人、どこに行こうが知ったこっちゃない。
なのに、まるで俺が棄てられるような気になるのはなんだ?
俺に好きな女ができて、つくしと別れて、その女と再婚して…
ハッピーエンドに…なるか?

俺と別れたつくしはどうするんだ?
高額の慰謝料を俺からふんだくるのか?
その金で他の男と幸せになるって?

・・・なんだこのイラつきは

待てよ

つまり、俺に好きな女が現れなきゃずっとつくしが俺の妻なんだよな?
あいつは俺から解放されたがってる。
そうはさせない。
お前の思惑通りになんてさせるか。
つくし、いくら待っても俺に好きな女なんて現れないぞ。
肚を括れ。
お前を一生、俺の妻に縛り付けてやる。


つくしに執着するその心の本当の意味に司はまだまだ気づかない。




***




つくしの障りが明け、再び渡りの日がやってきた。
つくしはまた朝から気が重かった。
結婚式から数えて1ヶ月近くが経過していたが、司に会ったのはまだ3回ほどで、話という話をしたのは先日の御招きの日だけだった。
結局は、司のことをまだ何も知らないに等しい。
こんな状態が夫婦だとはつくしには到底思えなかった。
なのに体だけは重ねなければならないのか。
早く司に本命が現れてくれ、と、つくしは願った。


司が帰宅したと連絡があり、つくしは支度をして待った。
初夜の装束はもう着なくていい。
じゃ、パジャマでいいじゃんと思ったつくしの前に用意されたのは淡いピンクのスリップドレスとレースのショーツだった。


「あの、島田さん、」

「はい。」

「御渡りは本当にするだけなんですか? この前の御招きみたいに座って会話をしたりとか、例えばいっしょにお酒を楽しんだりとかそういう…交渉以外のことはしないものなんですか?」

「旦那様がお望みになればそういうこともございますが、基本的には共に閨に籠ることでございます。」

「じゃ、妻の役割は夫の性処理ですか?」

「奥様、お言葉をお控えください。ご夫婦の営みは主に後継者を儲けるためでございますが、それだけではありません。ご夫婦の親愛を高めるという役目もございます。」


つくしはもうため息しか出なかった。
親愛?
会えばするだけ。
するためだけに会う。
こんな関係に親愛など育まれるはずはない。
そしてそれはつくしが思い描いた夫婦像ではない。


つくしがため息をついているうちに寝室のドアがノックされ、司の渡りが伝えられた。
今夜からはもう森川は寝室には踏み入らない。
司だけを残して下がっていった。

つくしは初夜と同じように三方にカーテンのかかったベッドの上で頭を下げて待っていた。
耳にかけた艶のある長い黒髪がシーツに落ちた。

そこに初夜と同じ出で立ちの司が現れ、ベッドに乗り上げるのが沈みでわかった。
島田が天蓋からカーテンを下げ、寝室を出ていった。


「つくし、顔を上げろ。」


命じられたままつくしはベッドから顔を上げたが、司を見上げることはなく、視線はシーツを見ていた。


「それ、似合うじゃん。」

「えっ?」


司に言われてつくしは自分を見下ろした。
胸元にレースをあしらったスリップドレスの下はノーブラでツンと澄ましたつくしの胸の形が露わになっている。


「キャッ」


慌てて胸を隠すと、先程まで腕で隠れていた大胆に開いたスリットからは白い腿が見える。
こうなるともう堪らない。
司はつくしに近づき、スリットから手を入れて腿を撫でると、顎を上げさせ被さった。


「ひゃっ…ン…」


2週間ぶりに味わうつくしのキスはやっぱり甘くて美味しい。
背に腕を回し、そのまま横たえた。
深いキスの音が耳に届き、その音が脳天に響くようにこだまして興奮を呼び覚ます。


「つくし、」


唇を離してつくしの目を覗き込むと早くも潤み始めていて、司の中で今夜のスターターピストルが鳴り響いた。
腿を撫でさすり、シルクの上から乳房をなぞり、首筋の香りを楽しみながら、つくしの反応も観察した。
つくしは目を閉じ、顔を背け、身体を強張らせている。


「つくし、俺に抱かれるのは嫌か。」


つくしは目を開けて司に振り向いた。
鼻先が触れるほど近づき、思わず赤面する。


「旦那様がどうというわけではありません。慣れないだけです。」

「…つくし、ベッドでは名前で呼べ。これからずっとだ。」

「……司…さん?」

「呼び捨てでいい。呼んでみろ。」


つくしの瞳に司が映った。


「…………司…」

「そうだ。いい子だ。」


その大きな手でつくしの頭を撫でると、またキスが始まった。






「ハァ…ハァ…っ……あっ」


終わったと思えばまた始まる。
今夜はこれで3度目だ。
腕を掴まれ、今度は背後から突かれていた。


「あッ…ンッ…」

「つくしっ…俺を呼べ」

「ンァッ…ツッ…司…つかさっ」


司と呼ばれるたびに血が流れ込み、司と呼ぶたびに潤みが滴った。
肌がぶつかる音を響かせながら昇り詰めていき、細くしなる身体に根も精も何もかも呑み込まれていく。
そしてそのたびに、つくしに対する執着が司の中に募った。

最後は背後からつくしを抱き込み、強く押し付けて果てた。
司の体にすっぽりと収まるつくしの体に欲望の限りを注ぎ込む。
司が吐き出し終えてやっとつくしはベッドにドサリと落ちた。


「ハァッ…ハァッ…もう…今夜は無理です…」

「ハァ…ハァ…ハァ…ああ、俺も今夜はこれで満足だ。」


司はベッドの上に散乱した服を着ると、つくしにシーツを被せ、カーテンをかき分けてベッドを降りた。


「また明日来る。」


その言葉に驚いて、つくしは上体を起こして司を見た。


「明日!? そんな…毎日…?」

「ああ。俺の気が済むまで毎日だ。」

「早く気が済んでいただきたいです。」

「フッ、じゃ、おやすみ。」


また横たわり、司に背を向けて答えた。


「…おやすみなさい。」


目を閉じながら、『御渡り』というシキタリをつくしは好ましいと思った。
なぜなら事が済めば夫は自分の部屋に戻ってくれるからだ。
夫がいなくなれば心が休まってよく眠れる。

司のことを嫌いというわけじゃない。
というか嫌うほどまだ関わっていない。
同じ理由でまだ好きでもない。
ただ結婚したから、自分は妻だから、務めを果たしているに過ぎない。
こうしていればいつかは愛情が芽生えるのだろうか。
いや、そのためには会っている時間が短すぎる。
それに、いずれは別れる人だ。
好きになったら辛くなる。

もう考えないようにしようと、目を開けたつくしも緩慢に起き上がりバスルームへ入った。










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2020.03.02
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| 2020.03.02(Mon) 17:52:55 | | EDIT

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| 2020.03.03(Tue) 11:54:07 | | EDIT

Re: タイトルなし

ふじ 様

コメント、ありがとうございます!
そうなんですよねぇ。
そこがスーパーお坊ちゃんの功罪かもしれません。
相手の気持ちを慮る必要がこれまでないままに生きてきましたから。
なんせ対等な相手なんていなかったですもんね。
カラダから入った関係、果たして心の関係にまでなれるのか!?
坊っちゃん、今日もガンバレ!です^^

nona | 2020.03.03(Tue) 16:10:46 | URL | EDIT

Re: タイトルなし

チョコ鳴門 様

連日のコメント、ありがとうございます!
>中高年のハートは鷲掴みです❤
だって、書いてるのが中高年ですもん(笑)
ウケてくれて嬉しいです!

ほんと、あの衝撃はどこへ?ですよね。
書いてる私が坊っちゃんLOVEすぎて、時々、つくしの心情になれない時があります。
「坊っちゃんなんだからいいやん」って。
そういうところで読者様に違和感を与えている実感はあります。
というわけで、これからも私の独断と偏見の二次世界をお楽しみ下さい!

nona | 2020.03.03(Tue) 16:16:43 | URL | EDIT