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道明寺があたしの誕生日にタキシードを着て駆け込んできたのは2年前のこと。
あの時、あたしは自分の誕生日じゃなくて、道明寺の誕生日にNYに何を送るかってことで悩んでた。
そしたら桜子に「NYに飛んで、自分をラッピングして「はい、プレゼント!」って言えばいいんですよ。」って言われて「ありえない〜」なんて笑ってたんだけどね。
まさかそれを道明寺にされるとは、驚くなんてもんじゃなかった。

あの日は結局、できなかったんだよね。
あたしが女の子の日だったから。
だから朝にはNYに戻る道明寺と寝ないでデートをした。
深夜のデート。
手を繋いで代々木公園を歩いて、24時間営業のファミレスで冬なのにパフェを食べて、そしてキスを重ねた。
次に会う時は必ずって約束をして空港で別れた。

あれから2年。
あたしは22歳になり、道明寺は明日で23歳になる。
あの深夜デートをした日から今日まで、一度も会ってない。


「お疲れ様でした。お先に失礼します。」

「お疲れ〜。」

「お疲れ様〜。気をつけてね〜。」

「はーい。」


夕方6時、ここ数年、1月30日はバイトを早上がりさせてもらってる。
その足で道明寺邸へ。


「今年も坊ちゃんからは帰ってくるって連絡はないねぇ。」

「いいんです。いつか会えますよ。さ、始めましょ?」


タマさんが迎えてくれて、二人でディナーだ。


「坊ちゃん、」「道明寺、」

「お誕生日、おめでとう!!」


食前酒のグラスを献杯し、1日早いお祝いの言葉を一緒に唱えた。


「つくし、そうやってフランス料理を食べる姿が板についてきたね。」

「えっ、えへへ…ありがとうございます。」

「そこで「えへへ」って言うのが玉に瑕だけどね。」


大学生になって以来、ずっと続けてるマナーのレッスンも大詰め。
春には就職だから、講師の先生たちからは卒業試験をするって言われてるんだ。
でも魚のコースだってこんなに綺麗に食べられるようになった。
頑張ったんだもん、大丈夫だよね。

タマさんと道明寺の話をしながら、デザートまで美味しく楽しく過ごした。


「この後はまた今年もアレかい?」

「そうですねぇ、あいつ、サプライズが好きなんで、帰ってくるかもしれないですし。」

「健闘を祈るよ。いろんな意味でね。」

「あはは…祈らなくていいです。」


タマさんに挨拶をしてあたしは道明寺邸で与えられている自分の部屋に向かう。
そこは使用人をしていた時の部屋。
土星のネックレスをもらった思い出の部屋だ。

そこであたしはシャワーを浴びて、着替えて、身支度を整える。


「よし!」


最後にアレンジでまとめた髪にリボンを結んだら仕上がる。

今年は赤いドレス。
去年はドリームブルーだった。
ドレスは椿お姉さんが帰国した時によく買ってくださるんだけど、この日のためのドレスだけは自分で買ってる。
ランクは落ちるけど、でも自分の力で準備しなきゃ意味がないから。

準備ができたあたしは東の角部屋に向かう。
そこは道明寺がいた時のまま、何一つ変わってなくて、あたしの一番大切な場所の一つになってる。

真っ暗な部屋に灯りをつける。
主人がいなくなって5年近くなるけど、いつでも手入れされていて、塵ひとつ落ちてない。
あたしはここで道明寺を待つ。
帰ってくる約束も確証もない。
でも毎年の今夜だけは一番乗りに先回りする。

広い部屋のソファに座って、大型テレビでチャンネルを繰る。
時々、興味を引く内容に指を止める。
それも飽きてテレビを消し、部屋に道明寺が残していった5年前の雑誌のページを1年ぶりにめくる。
それも飽きればテラスのカーテンの間から夜の庭を見渡す。
遠くに飛行機の音が聴こえないかと耳をすませて。

そうやって時間を潰して、時刻は23時58分。
あたしはもう一度ソファに座り直して手にしたスマホに道明寺の番号を表示した。
それはアメリカの国番号に道明寺があっちで使ってる携帯の番号を合わせたもの。

59分、発信ボタンをタップする。
あっちに繋がって、コール音が鳴って、運良く出てくれたらちょうど日本時間で31日の0時になる。
でもあっちは30日の午前10時だけどね。
いいの。
地球上で先に31日になる日本の暦が優先なんだから。
…じゃないと、一番乗りを逃すから。


『よう!』


いつもより長いコール音の後、明るい声が耳に飛び込んできた。
この日だけはあたしから電話があるってわかってるから一度で出てくれる。


「誕生日、おめでとう。一番乗り?」

『ああ、サンキューな。』


この5年、不安がなかったなんて強がるつもりはない。

生まれた世界の違う男。
生きてく世界の違う男。

信じても信じても疑心は湧いてくる。
あれは確か古いドラマのセリフだったかな。


“「信じてる」って言ってる時点で、もう疑ってんだよな。 ”


ストンって落ちた。
疑ってなかったら信じるも何にもないもんね。
信じたいのは疑ってるから。
それはあいつの一途を? 情熱を? 愛情を?
でも彼の何を疑っても、ひとつだけは疑えないものがある。
それはあたしのあいつが好きだっていう気持ち。
それだけは疑いようのない真実だから…
だからあたしは今年もこうして彼を待っていた。


「そっちは晴れてる?」

『ああ、快晴みたいだな。』

「みたいだってなによ。」

『見えねぇから。』

「また徹夜? まさか会社にカンヅメじゃないよね?」

『ンな働き方してねぇよ。お前は何してた?』

「んー、アメトーク観てた。」

『部屋か?』

「当たり前じゃん。」


あたしは待ち人帰らずで、赤いリボンを解き、見せる人のいない髪を解きながらギリギリの嘘をつく。
今夜はこのあと、さっきの自分の部屋に泊めてもらって、明日からまたいつもの生活に戻るんだ。
道明寺が心の中にしかいない生活に。
なのにそれは不意だった。


『へー、赤いドレス着てか?』

「…えっ……?」

『リボンを解くは俺の役目じゃねぇのか?』


カチャッ…と背後で音がした。
あたしは耳にスマホを押し当てたまま、振り返った。
部屋着姿のあいつが書斎の入り口にもたれ、ニヤリと笑って立っていた。
その耳にやっぱりスマホを押し当てながら。


「どうして…いつ…?」

「今日の午後。タマから、お前が毎年待っててくれてるって聞いてな。驚かせたくて書斎で仕事して時間潰してた。」


カッと熱を持ったのは頬だったか脳天だったか。
恥ずかしさと怒りが入り混じって顔を見たくない。
あたしは立ち上がってバッグを引っ掴み、部屋の出口に向かった。


「おいおいおい、どこ行くんだよ!」

「帰るのよ。ついでに別れる。さよなら。」


あたしがどんな思いで待ってたか。
そんな自分の何もかもが滑稽に思えて涙が出そうになってる。
こんな顔を見られたくない。
掴まれた腕を振り払おうとするけど、もう少年じゃない男にすぐに抱き込まれた。
途端に2年ぶりの香りに包まれる。


「離して!」

「…別れるってことは、お前はまだ俺の女なんだな?」

「っはぁ!!? 当たり前でしょ!? そんなことも忘れたんならもういいでしょ!」


離して欲しいのに、腕の力はどんどん増してあたしを締め付けた。


「く、くるしっ…」

「不安で……何も言わずに悪かった。」


逃れようと突っ張っていたあたしの腕から力が抜けた。


「不安て、何が?」

「………お前がまだ俺の女でいてくれてるのか。」

「そんな…あんたこそ、まだあたしの男なわけ?」


あたしを胸に抱いていた男は腕を緩めてあたしと額を合わせてきた。


「当たり前だ。こんなイイ女を逃すわけねぇだろ。お前は一生、俺のもんだ。」











ねぇ、桜子?
あの時は笑い飛ばしちゃってごめんね。
あたしのプレゼント、受け取ってもらえたよ。
ついでに2年越しの道明寺からのプレゼントも無事に受け取りました。
ちょっと痛かったけどね。

来年は何にしようかな。
また相談に乗ってね。






Present for Tsukasa 〜2020.1.31〜【完】








‥…━━━☆‥…━━━☆‥…━━━☆‥…━━━☆
坊っちゃん、お誕生日おめでとうございます!
今年も容赦のないnonaですが、よろしくお願い致します。
‥…━━━☆‥…━━━☆‥…━━━☆‥…━━━☆


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2020.01.31
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| 2020.01.31(Fri) 02:49:17 | | EDIT

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| 2020.01.31(Fri) 07:33:56 | | EDIT

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| 2020.01.31(Fri) 18:29:18 | | EDIT

Re: タイトルなし

くるみぼたん 様

コメント、ありがとうございます!
いえいえ、お気になさらず。

本当に、今日はいい日です。
たくさんのつかつくが読めて、私の方こそ坊っちゃんにプレゼントをもらってる気分です。
新連載、今、8割まで書いて停滞期です(苦笑)ってか、飽きてきました。
また長い連載になりそうなので、お時間のある時に覗いていただけたら嬉しいです。

nona | 2020.01.31(Fri) 23:16:14 | URL | EDIT

おめでとう、坊っちゃん。
よございましたね〜つくしちゃんも。
ノナさんの容赦ない試練に負けずに、真っ直ぐな愛に精進してください。応援しております。

カオカオ | 2020.01.31(Fri) 23:20:19 | URL | EDIT

Re: タイトルなし

スリーシスターズ 様

コメント、ありがとうございます!
そうなんですよ、つくしも大人になったって事ですね。
でも待ってることを伝えないところがつくしらしいですけどね。

つくしが怒ったのは本気だし、別れようと思ったのも本気でした。
つくしって司に負けないくらいにプライドも気位も高い女なんですよ。
そういう意味では本当にお似合いな二人です。

桜子には・・・・見破られるんじゃないかな(笑)

nona | 2020.01.31(Fri) 23:21:30 | URL | EDIT

Re: タイトルなし

カオカオ 様

コメント、ありがとうございます!
今年は幸せと試練を交互に与えようと思っております(笑)
もちろん幸せの中にはウラのあの作品も含まれております。
試練はまたハンパない試練ですけどね。
新連載もよろしくお願い致します!

nona | 2020.01.31(Fri) 23:24:28 | URL | EDIT

Re: おお、心願成就!

ふじ 様

いつもコメント、ありがとうございます!
反響というのは本当に栄養剤みたいなものです。
コメントいただけて感謝しかありません。

短編は苦手です。
短くしなければと思うと書くべきことが漏れるからです。
つくしは本気で怒って本気で別れようと思いました。
ま、そこは書き手の思考回路が投影されるからでしょうね。私ならこうだな、という行動になってしまったのですね、すみません。
甘え上手な弟気質・司、つい許してしまう姉御肌・つくし。この凸凹カップルは最強です!

短編苦手なんで、司視点を書こうかな・・・・・・・・・・

nona | 2020.01.31(Fri) 23:29:35 | URL | EDIT