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瞼の向こうに光を感じる。
今は何時?

眠ったのは明け方だった。
司の瞼が閉じるのを見て、彼を抱きしめてあたしも目を閉じた。
あれから何時間が経ったのだろう。


つくしは目を開ければそこはもう司のいない世界だとわかっていた。
司は決して自分に背中を見せないだろうと、つくしは直感していた。
なぜなら別れじゃないから。
これは新しい関係の始まり。
妻じゃなくなっても、夫じゃなくなっても、それでもあたしたちは繋がり続けてるから。

……だからまだ目を開けたくない。
司がいない世界を見たくない。
認めてしまいたくない。

つくしは肩にかけられていた布団を頭まで引き上げた。
いつもそばにあった温もりはもうない。
ただ匂いだけがそこには染み込んでいた。

泣かない。
泣きたくない。
だって泣いたら匂いがわからなくなる。
まだ司の匂いに包まれていたいから。


つくしがいつまでそうしていても、起きろと頭を撫でてくれる手は訪れなかった。




***




翌日、道明寺家からキヨをはじめとする使用人数人と荷物運びの運転手数人がやってきた。

司が持って行ったのは結婚指輪とバレンタインのカード、そして誕生日につくしから贈られた星命名証明書だけだった。
残された荷物は使用人によって梱包され、運転手によって運び出された。
部屋の中から司の痕跡が消えていく。


「つくし様、坊ちゃんを受け入れてくださってありがとうございました。ベッドはいかがなさいますか?」


つくしは振り返った。
シングルを2台くっつけて、キングサイズよりもさらに大きくなったベッドがそこにはあった。
手を繋いでいたことも、抱きしめられたことも、愛し合ったことも、思い出の全てを見てきたベッドだ。
広いベッドでの独り寝は寂しさが増すようだったが、かと言ってシングルでの独り寝はもっと寂しいに違いなかった。


「ベッドは、残しておいてください。いいですか?」

「もちろんです。つくし様がそれでよろしいのでしたら私共に異論はございません。」


ありがとうございますと力なく微笑んだつくしの顔は青白かった。


「つくし様、どうか…どうかお気を落とされませんよう。坊ちゃんのお心は常につくし様と共にあられますから。」

「キヨさん…ご心配をおかけしてすみません。」

「いえ、そのような。つくし様、お顔のお色が優れないようです。邸のシェフにお好きなものを作らせますので、なんなりとおっしゃってください。」

「いえいえ! そんなことしていただくわけにはいきません。あたしなら大丈夫です! 明日からは仕事にも復帰しますから、気も紛れます。」

「……左様でございますか。でしたら、どうかご自愛ください。」

「はい、ありがとうございます。キヨさんはじめ、お屋敷の皆さんにはお世話になりました。椿お姉さんにもよろしくお伝えください。」

「かりこまりました。またいつでも屋敷にいらしてください。椿様が喜ばれます。」

「…そうですね。でも、あたしはもうあそこへは…」


そう言って苦笑したつくしの顔はなんだか泣きそうで、キヨはそれ以上言葉を連ねることはできなかった。




***




その夜、つくしはベランダに出て空を見上げた。
快晴の今夜は少し膨らんだ半月が浮かんでいた。
月の光と街の光で司の星の光は目には見えない。
それでもつくしは南の空を眺め続けた。


「道明寺…」


そう呼ぶと、あの英徳の階段で出会った司が浮かんだ。
冷淡な瞳は闇の色をしていた。
その瞳に負けたくないと思った。


「あれが運命の出会い? フフッ 人生ってわかんないね。」


その闇が徐々に晴れていった。
そして守るように抱きしめてくれて、好きだと言ってくれた。
なのに1度目の別れが待っていた。
自分のせいで。


「司…」


それが6年の時を経て戻ってきてくれた。
生活を共にして、24時間一緒にいた。
どんなに時間が経っても愛してくれて、自分の気持ちに気付いた。
ひとつになりたいと初めて思った。
愛する喜びを知って、離れたくないと思った。


「司……司………つか……っ」


それ以上は声にならなかった。
つくしは涙で見えなくなった視界を手で拭い、無理やりに笑顔を作った。

あたしからは見えなくても、司の星はあたしを見てる。
だからあたしは笑顔でいなくちゃ。
次に会えるのがいつになろうとも、その間に何があっても、司の星にはいつも笑顔を見せていたい。

例え、もう2度と会えないのだとしても……

つくしは眠るまでそのまま夜空を見上げ続けた。








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2019.09.03
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| 2019.09.03(Tue) 18:05:52 | | EDIT

もうすぐ完結のような予感が私はしてます。
自分のことではないのに悲しかったり楽しくなったり毎日の更新時間が待ち遠しいです♪

「いえ、そのような。つくし様、お顔のお色が優れないようです。邸のシェフにお好きなものを作らせますので、なんなりとおっしゃってください。」
の部分を読んで、もしかして?と気になっています。
明日が待ち遠しいです( ´∀`) 
個人的にはR指定の話も嬉しいです( *´艸`)
これからも応援しています!

ファンです | 2019.09.03(Tue) 18:53:25 | URL | EDIT

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| 2019.09.03(Tue) 19:13:36 | | EDIT

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| 2019.09.03(Tue) 21:53:35 | | EDIT

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| 2019.09.04(Wed) 00:48:51 | | EDIT

Re: タイトルなし

つくしんぼ 様

コメント、ありがとうございます!
曲も聴いていただけてうれしいです。
ね、かなりリンクしてたでしょ?
もう書いてる本人が泣くっていう、ね。。。

共感していただけて書き手冥利に尽きます。
今日あたりからそろそろ・・・かな?

nona | 2019.09.04(Wed) 10:47:58 | URL | EDIT

Re: タイトルなし

ファンです 様

コメント、ありがとうございます!
そうなんです。
週末には完結します!そしてハピエンです!
しかし、どうやってハピエンに持ち込むか、悩みに悩みました。
自分で作った設定が自分の首を絞める結果に・・・

はい!今後も拙いRも織り交ぜながらお届けしていきたいと思います^^

nona | 2019.09.04(Wed) 10:51:52 | URL | EDIT

Re: タイトルなし

りりあ 様

コメント、ありがとうございます!
「事実愛」聴かせていただきました〜♪
ウルウル・・・「君はいた確かにここに」「愛してくれた誰より深く」
涙腺崩壊!!

私が終盤で書きながら聴いていたのは藤井フミヤの「Another Orion」です。
司の星はシリウスのあるおおいぬ座なんですけどね。
聴きながら書いて自分で泣くというカオスっ!
こちらもオススメです〜

nona | 2019.09.04(Wed) 10:56:03 | URL | EDIT

Re: タイトルなし

とお 様

いつもコメント、ありがとうございます!
私も書きながら泣きました(笑)
離れ方は、やっぱり原作でもそうでしたもんね。
一人で桟橋に立つつくし、でした。
司はどれだけ後ろ髪を引かれたでしょう。
愛する人を守るために、自分から身を引く。
坊っちゃんも、大人になりました!

あと少しで完結です。
最後までおつきあいをよろしくお願いします!

nona | 2019.09.04(Wed) 11:01:03 | URL | EDIT

Re: タイトルなし

ふぁいてぃ〜んママ 様

いつもコメント、ありがとうございます!
そしてその節は申し訳ありませんでした。
コメントとてもありがたいのに、わがまま発動でした。すみません><

どちらも自分の場所で頑張ろうと決めた二人。
でもやっぱり恋しいことに変わりないです。

あと少しで完結です。
必ずや二人を幸せにしますので、どうかお見守りください!!

nona | 2019.09.04(Wed) 11:04:57 | URL | EDIT

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| 2019.09.07(Sat) 14:21:16 | | EDIT