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今回のお話は「自転車」の2週間後くらいかな?
9月の下旬、司はまだ片想い中です。







今日も自転車に二人乗りしてやってきたのは地元の商店街だ。
商店街といってもアーケードがあるわけではないが、道の左右には八百屋、魚屋、肉屋、練り物屋などが軒を連ねていた。
それは庶民のもっとも庶民らしい生活感にあふれた光景で、そんな中に非現実的とも思える風貌の司が現れると、行き交う人々は足を止め司に見入り、次にはどこにこのモデルさんを撮影してるカメラマンがいるのかとその周囲を見回すのが常だった。
あたしは差し詰めマネージャーとでも思われているのかな、と自分にもチラチラと注がれる視線を感じてつくしは思った。

八百屋で野菜を買って、つくしが次に立ち寄ったのは魚屋だ。
どうしても肉の方が安いため肉料理が多くなってしまうが、最低でも週に一度は魚を食べようと心がけていた。


「いらっしゃい!」


魚屋の女将さんが声をかけてくれる。
親父さんはいつも奥で魚をさばいていた。
店先には親父さんと有名女性演歌歌手の記念写真が飾られて、その中では大柄でいかめしい親父さんもニヤケた表情を見せていた。


「つくしちゃん、久しぶりだねぇ。そっちの彼氏と順調なんだ。」


店は親父さんの目利きと、この女将さんの社交性で繁盛している。


「彼氏じゃないです!!」

「あれ、こんないい男が彼氏じゃないって、グズグズしてたらおばちゃんが取っちゃうよ? あはは!」

「もう! 勝手に言っててください!」

「で、今日はなんにする?」

「んー、」


この店でハズレはない。
いつも鮮度のいい旬の魚が入荷していて、何をして食べても美味しかった。


「お刺身もあるよ。彼氏と晩酌でもしながらどう?」

「だから彼氏じゃないって。」


そう答えながらも目は魚を品定めしている。


「お刺身なぁ、好きなんだけど高いよねぇ。」


つい呟いた言葉に司が反応した。


「刺身、好きなのか?」

「うん。お寿司も好きだけど、お刺身の方が好きなんだよね。でも高いから。」

「家で捌けばいいじゃん。」

「自分でお刺身に? 無理無理。あたし3枚にとかおろせない。」

「ふーん、俺がやってやるよ。…おい、そこのアジを2尾くれ。」

「わあ! 今日は彼氏が買ってくれるんだ。はいよ、アジ2尾ね。内臓は処理しとくよ。これ、お刺身でも食べられるから。」

「ちょっと道明寺、魚なんて捌けるの?」

「見くびんなよ。」

「見くびるっていうか、りんごの皮も剥けないのに・・・」


鯵を買って、また自転車で帰ってきた。
買ってきたものを冷蔵庫に片付けたが、司が買ったアジは早速、捌くと言う。


「本当に大丈夫なの? うち、出刃包丁とか刺身包丁とかないよ?」

「待ってろ。」


司はチェストを開けて何かを取り出した。


「そ、それ…」

「ナイフだ。」

「なんでそんなものを箪笥に隠し持ってんのよ! 銃刀法違反じゃないの!?」


司が取り出したそれは鞘に収められたナイフで刃渡りは15cmほどだ。


「別荘で釣りした時なんかに使うためのナイフだ。家に置いておくなら違反にはならない。」

「釣りできんの? じっと待ったりできんの? 道明寺が?」

「お前、俺をなんだと思ってんだよ。ほら、そこどけ。」


司はキッチンに立ち、先程買ってきたアジを一度洗うと、まな板に置いた。


「よく見とけよ。」


そう言うと、司はアジを捌き始めた。
頭を切り落とし、背からナイフを入れて骨と身を切り離した。
同じようにもう片面にもナイフを入れ、3枚におろしていく。
その様子をつくしは横に立って覗き込むように見ていた。


「ほんとにできるんだ…」

「まだ終わってねぇぞ。」


3枚おろしにした身から皮を剥ぎ、腹身に並ぶ骨も削ぎ落とし、刺身に引いていった。


「すっごぉ〜〜い!」

「だろ?」

「お刺身だ! じゃ、もう1尾もお願いします。」


こうして瞬く間に二人分のお造りができあがった。


「うっわー! 美味しそう!」

「俺の実力、よくわかったか。」

「いや〜、ちょっと、そんな特技あるならもっと早く教えてよ! あんた、ただのお坊ちゃんじゃなかったんだ。」

「気づくの遅せぇよ。」


つくしは待ちきれないといったキラキラとした目をして司を見上げた。
その輝く可愛い顔に赤面しながら、司はつくしの意図を読み取った。


「…食ってみるか?」

「いいの!? やったー!」


小皿に出した醤油にアジを軽く漬けるとつくしはそれを口に入れた。


「んー!! おいひい!」

「こうやって新鮮なの買ってきて家で捌けば安く食べられんだろ。」

「だね! マグロとかは無理だけど、でも他にも美味しい魚はいっぱいあるしね。」

「ああ」

「道明寺、ありがとう〜! 今日、初めてあんたのこと尊敬した。」

「初めてかよ! ったく、お前のその目は飾りかよ。」


なんて憎まれ口も、今日のつくしはニコニコと受け流している。
こんなことでつくしを喜ばせられるなら、本当にもっと早く披露しておけばよかったと司は思った。


「他にも何か特技があんの?」


箸を置きながらつくしが尋ねた。


「他に?……知りたいか?」

「あるの!? 知りたい!」

「いろいろあるけど……じゃ、目を閉じろ。」

「なになに? ジャジャーンとかって見せてくれるの?」


魚を捌くという意外すぎる特技を目の当たりにしたつくしは興奮して警戒心が薄れ、司に言われた通りに目を閉じた。

その数秒後、司の特技がつくしの唇で披露され、キッチンには司にのみ込まれたつくしの呻きが響いた。









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2019.08.11
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| 2019.08.11(Sun) 17:20:02 | | EDIT

Re: タイトルなし

つくしんぼ 様

コメント、ありがとうございます!
暑いお盆の最中、いかがお過ごしですか?

お食い初めの鯛、そのときのつくしんぼ様の固まり具合が目に浮かびました。
「やるしかないっ」って心境、わかりますっ(>人<;)
そのときに坊ちゃんがそばにいてくれたら・・・「俺がしてやるよ」って捌いてくれただろうなー。
様々な憂いも過ぎてしまえば「スベらないネタ」になりますが、そのときは必死ですよね。

nona | 2019.08.13(Tue) 14:53:16 | URL | EDIT