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ただ今、午前4時

区役所から帰って子供達は順と悠介が寝かしつけて、あたしたちもベッドに入った。
さすがに眠い。
今日は道明寺と順以外は休み。
あと3時間で起床時間。
さあ、寝よう!

って、思ってくれない男がひとり。
背中からあたしを抱きしめて、ずっと下腹部を撫でている。
・・・その気になりそうだからやめてほしい。


「ね、あと3時間で朝だよ? 寝よ?」

「眠れるか! もういい、起きてる。」

「あたしは寝るわよ。ちょっと、眠れないから離して。」

「離さない。」

「駄々っ子か! 怒るわよ! 妊婦を労わりなさいよ。」


ちょっと怯んで腕を緩めた。
でもどうやら興奮が収まらないらしい。


「な、つくし。」

「んー?」

「つくし」

「ん〜?」

「つかさって呼んで。」

「…zzzzz」

「寝たふりすんな!」

「あのさぁ、4時だよ? もうすぐ夜明け。仕事、キツイわよ。眠っときなさいよ。」

「なぁ、」

「ハァ、なに?」

「……どうして怒らなかったんだ?」

「…………」

「怒りもしなかったし、突き放しもしなかった。最初から受け入れてくれたよな。どうしてだ? 家族がいたからか?」

「不安?」

「………そうかもしれない。」


あたしは寝返りを打って道明寺に向き合った。
暗闇の中、迷子の犬みたいな顔になっちゃってる。


「なんで、怒られると思ったの? あたしが怒るポイントってどこだと思うの?」

「忘れたこと」

「それだけ?」

「追い返したこと」

「他には?」

「……………」


道明寺があたしから視線を外して言い淀んでる。
彼女のことに触れたくないからだ。


「海ちゃんのことでしょ?」

「……………」

「あたしが作ったお弁当を海ちゃんが作ったと思ったことでしょ?」


これは道明寺も突き付けられたくなかったことだろう。
一瞬、目をギュッとつぶったのがわかった。


「はは…聞けば聞くほどひでぇな。」


道明寺は仰向けになって、腕で目を隠した。
あたしはベッドに片肘をついて暗闇に浮かび上がるそんな道明寺を見つめてた。


「でもさ、どれもあんたのせいじゃないじゃん。」


道明寺が腕を上げてあたしを見た。


「あんたは悪くない。悪いのはあんたを刺した人。だから裁きを受けた。それで終わったんだよ。あんたが自分を責めるのは違うし、あたしがあんたを責めるのはもっと違うんだよ。」


あたしを見る瞳が見開かれたのがわかった。
あたしもゴロンと仰向けになって天井を見つめた。


「なーんて、カッコイイこと言ってるけど、最初の数年は恨んでたよ。口に出せない悪態も心の中でいっぱいついたし。フフ。」

「……………」

「でもさ、順にさ、あんたの話をした時に、言われたんだよ。あんたが可哀想だって。その時、順はもう悠介を好きだった。でも悠介をストレートだと思ってたから、悩んでた。ううん、悩むなんて生易しいもんじゃない。苦悩、慟哭、悲哀。人ってこんなに苦しむことができるんだって思った。」

「あの順が?」

「そう。今は幸せだから明るいとこしか見せないけど、当時は、ね。その順に、「お前より道明寺さんの方が可哀想だ」って言われた。心底愛した相手を忘れるなんて、俺だったら耐えられない。そのまま死にたい。思い出したくない。だけどいつか思い出すかもしれないなんて、それがいつになるのかわからないなんて、これ以上に残酷な話は聞いたことがないって。」


道明寺も暗い天井を見つめてた。
何も言わなかった。


「それから悠介と順のゴタゴタがあって、二人がパートナーとして生きていくって決めて、あたしが代理母になって、清佳と壮介が産まれて。幸せだった。ずっと笑ってた。」


夜明け前の暗闇。
はっきり顔が見えないからできる話もある。


「でもさ、忘れたことなかったよ。あんたのこと。」


道明寺がこっちを向いた。
手で押し返す。


「恥ずかしいからあっち向いてて。」

「暗くて見えねぇだろ。」

「いいから!」


もう一度、道明寺の視線を外させて続ける。


「幸せを感じるたびにあんたのこと思い出した。道明寺は幸せにしてるかな? って。幸せにしててほしいなって。だから、ずーっと幸せだったから、ずーっとあんたのこと想ってた。」

「その割に、駅で会った時は逃げようとしたよな。」

「逃げてないって。話が終わったから立ち去ろうとしただけ。」

「もっと感動するとかなかったのかよ。」

「あたしだって怖かったんだよ。本当の最後かもしれないって。」

「なんでだよ。」

「あたしを思い出して、ちゃんとケリつけようって現れるかもしれないじゃん。今が幸せだから、中途半端な状態をちゃんと終わらせようって言われるかもしれないじゃん。」

「ありえない。」

「フフ、17年ずっと想ってると、不純物がどんどん濾過されてく。悪い思い出は全部良い思い出に溶けていって、最後は楽しかったことしか思い出せなくなる。」

「赤札もか?」

「ここでそれ言う!? あはは」


道明寺があたしを引き寄せて、横から肩に顎を乗せてきた。
首に息がかかる。


「でもひとつだけ、後悔してることがある。きっとあんたもでしょ?」

「…………ああ、あんなカッコつけんじゃなかったって、記憶戻してからずっと後悔してる。」

「はは、あたしも。怖くても飛び込んでおけばよかったって何度も思った。」

「お前の、相手は………」

「やめよ。過去のことは。それ言い出したら絶対、離婚になる。」

「フッ、かもな。」

「でもさ、あの時してたら、今こうしてないかもよ?」

「どういうことだ。」

「あたしが代理母になったのって、処女のまま子供産めるからなんだよね。もし経験してたら、今頃、別の人と結婚して自分の子供産んでたかも。」

「我慢した甲斐があったってことか。」

「そ。」


首にかかる息が近づいて、首筋にキスされた。


「でも今日は我慢しない。」

「ゆっくりだよ。」

「わかってる。」

「出しちゃダメだからね。」

「は? なんでだよ。」

「子宮を収縮させる成分が含まれてんの。赤ちゃんが苦しくなる。」

「マジかよ。余計な機能持たせやがって。」


あちこちにキスが降ってくる。
逸る気持ちを抑えて、優しく触れてくれる。


愛してる…

愛してる…

愛してる…


伝えたい相手がキスできる距離にいる。
彼の過去も未来もすべてを包み込もう。



もうすぐ7人になるファミリー。
その内、パパが3人になる。
順が「つかっさんパパ」って呼びそうだな・・・ププッ





Let's be a Family! 〜 Recrystallization 〜 再結晶 【完】









*日本での代理母出産は日本産科婦人科学会によって原則禁止されています。(法的拘束力はなし)
また、実際の代理母は経産婦しかなれません。フィクションですのでご容赦ください。


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2019.04.12
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