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類にはこの17年、支えてもらいっぱなしだった。
道明寺が記憶をなくした直後からあたしが立っていられたのは、100%この人のおかげだと言っていい。

10年待つ決意を伝えた時も、順と悠介の代理母になると話した時も、10年が過ぎて初めて彼氏ができた時も、いつもあたしの決断を支持してくれた。
お互いが魂の一部だと思ってる。
あたしはこの人のことも、道明寺とは違う種類で愛してる。
一生大切な人。


類の運転で夜の首都高を疾走する。
この時間が好き。
通り過ぎるビルの窓窓に人生がある。
灯りが点いてるオフィスビルで働く人は、今夜、どんな気持ちで仕事してる?
家族が待ってるんじゃないのかな?
灯りが消えてる窓では昼間、どんな人々の営みがあるんだろう。
そこにいた人は、今はどこにいるの?

自分には関係のない人生の一瞬に、あたしが掠って消えていく。

いつもはスピードを出し過ぎる類を嗜めるけど、今夜はあたしも駆け抜けたい。
車窓に向けてた顔を隣でハンドルを操る類に向けた。
チラリとあたしに視線を流して、また前を見る。
そのまま薄い唇が下弦を描いた。


「司が戻ってきたんだろ?」

「もう知ってるんだね。」

「支社長就任披露があったからね。記憶が戻ったことはすぐにわかったよ。顔つきが全然違ってた。」

「日本に戻って、すぐに会いにきてくれて、今は一緒に暮らしてる。」

「クククッ、やっぱりあいつは変わってないね。」

「順も悠介もウェルカムって感じで、自分でコーヒーサーブして飲んでるよ。」

「牧野の側ならそのうち料理もし始めるんじゃないの?」

「あはは、そうかも。」

「で、清算できたの?」

「ん、だね。ただの飲み仲間って人もいたし。」

「向こうは期待してただろ。」

「なにを? 結婚とか?」

「でしょ。」

「だとしたら無駄な時間使わせて申し訳無かったな。」

「で? 俺とも今日で最後?」

「んー、夜会うのはね。今度からは昼間にカフェで、だね。」

「スケジュール、調整しないと。」

「お願いします。」




首都高が終わった先には、夜の海が見える場所。

海の向こう岸には工場の夜景。
類と手を繋いで観光客用に設置された柵に近づいて並んで立った。
工場の人工の光も海に反射すると星のきらめきみたい。


「類、17年、ありがとう。」

「楽しかったよ。」

「これからもよろしく。」

「2人いっぺんに面倒みるかな。」

「そうだね。」

「最後だから俺も正直になるよ。」

「ん?」

「司が記憶をなくさなきゃ、牧野とのこの時間はなかった。きっと司はすぐにあんたをさらってただろうから。」

「フフ、かもね。」

「ずっと罪悪感があった。司にも、あんたにも。この状況を喜んでる自分がいたから。」

「そんなもの、いらないよ。「もし」はない。あたしたちの歴史はこれしかなかったから。だから類とあたしがこうしてるのも歴史に織り込み済みなの。」


類があたしに振り向く。
どちらからともなく向き合って、ギュッと抱きしめられる。
あたしも出会ってからのすべての感情を込めて抱きしめた。


「俺こそ17年ありがとう。」


類のビー玉みたいな瞳に夜景の光が反射してる。
その瞳の奥にある感情をあたしは知ってる。
でもね、類、あなたもわかってるでしょ?
これはまた新しい関係の始まりだって。
その証拠に類は優しく微笑んだ。


「これで儀式は終わり。そろそろ真夜中だ。野獣の遠吠えが聞こえないうちにあんたを返さないと。」


類があたしを腕の中から解放して視線を上げた。
視線の先に振り向く。


「道明寺…」


類があたしの手を取り、差し出した。


「司、返すよ。」


道明寺が類からあたしを受け取った。


「…17年、世話んなったな。」

「これからはお前もまとめて面倒見てやるよ。」

「クッ、ぬかせ。」


2人は目配せして、同時に背を向けた。
あたしは道明寺に手を引かれ車に乗り込んだ。



********



「どこから見てたの?」


後部座席に並んで座り、その美貌とも形容される横顔を見つめた。


「新宿御苑」

「プッ、最初からじゃん。」

「これで綺麗さっぱりか?」

「ん。もういない。」

「ゴネたやつ、いなかったのか?」

「ゴネてもらえるほど、愛せた人はいなかった。」


不意に大きな手が、あたしの後頭部を引き寄せた。


「…ん……」


体の芯まで蕩けさせるキス
蕩けて、痺れて、火がつく
唇が離れて、額を合わせた。


「こんな顔を見せてたのか?」

「見せてないよ。」

「俺には見せてる。」

「あたしに火をつけるキスができるのは、一人しかいないから。」


美しい顔を両手で引き寄せる。

あんたに火をつけられるのも、あたしだけでしょ?




そのままメープルになだれ込み、互いの火を合わせた。
小さかった炎は二人合わさって火柱となり、17年の隔たりを焼き尽くした。





********





今夜も俺の帰宅は日付けを超えている。
シャワーを浴び、ベッドに入る。
牧野を引き寄せ抱き込む。
そしてそのすべらかな肌を撫でる。
牧野がこちらを向く。


「おかえり。」

「ただいま。」


牧野が俺の肌を撫でる。
お前も趣味だったか。
俺たちは気が合うな。

やっと互いが互いだけのものになった。
そう、あの時のように。

ここからもう一度、始めよう。






Let's be a Family! 〜 Recurrence 〜 再燃【完】










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2019.04.09
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