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NYから日本に到着したのは夕方だった。
それから婚姻届の証人欄に記入してもらうためにもう一度、パパとママにうちで待っててもらって無事に署名捺印をもらった。
パパはお義母さんのサインが信じられなくてしばらく見入って固まってたけど、道明寺のビームのような視線に気付いて急いでサインした。
おいおい、仮にも義理の父親になる人間を脅すな。

そしてその後、あたしたちは道明寺邸に向かった。




「おやおや坊ちゃん、こちらにいらっしゃるなんて珍しい。」

「タマ、今日から俺はこっちに住む。それから改めて紹介する。俺の婚約者の橘つくしだ。ま、明日には妻になるけどな。」


道明寺の後ろに立つあたしを見てタマさんは驚いてた。
無理もない。
自分が仕えるお坊ちゃんが家政婦を連れて帰ったんだから。
あたしは久しぶりに会うタマさんに挨拶をした。


「ご無沙汰しています。橘です。」

「あんた、まぁ、こりゃまた綺麗になって。結婚してるんじゃなかったかい?」


あたしはNYで買い与えられた洋服を着て、タマさんを前に恐縮していた。


「すみませんでした。結婚はしてないんです。指輪は顧客とのトラブル防止に未婚のハウスキーパーは着用するように指導されてまして。」

「まあまあまあ! そうかい、そうなのかい! こりゃ嬉しい誤解だったねぇ。で、坊ちゃんと結婚してくれることになったってのかい?」

「あの、はぁ、まぁ、成り行きっていうか。」

「そうか! よかった、よかった。あんたなら安心して坊ちゃんを任せられるよ。よろしく頼みますよ。」


タマさんは手を叩いて喜んだ。
本当にあたしでいいのだろうか?


「タマ、橘も今日からここに住む。明日には夫婦になるんだ。今夜から俺の部屋でいいだろ。」

「かしこまりました。」

「かしこまらないでください!!」


あたしの抗議もこの二人には馬耳東風。
道明寺があたしの手を引いて歩き出した。


「ちょっと、一緒の部屋とかまだ勘弁してよ!」

「婚約者だ。誰にも遠慮はいらない。」

「してないわよっ!」


通されたのは明るい角部屋。
アイボリーで統一された壁面にはオフホワイトのシフォンカーテンが幾重にもひだを作って揺れている。

「わぁ〜〜〜! なにここ〜〜」

「俺の部屋だ。」

「ここが!? こんな上品な部屋が? あんたの部屋?」

「気に入ったか?」

「うん、素敵な部屋だねぇ〜」


あたしは天井が高くて最低限の設だけがされたその部屋を見回していて、近づく危険に気づかなかった。


グイッ


「キャッ」


気づけば手を引かれ、ジャケットを脱いでベッドに座る道明寺の膝に座らされてた。


「牧野…」

「なっ?…ん!」


どうしてこいつはいつも突然キスしてくるの?
一言、断るとか、雰囲気を作ってゆっくりとか、そういう情緒はないのか。

横抱きに座らされ、肩を引き寄せられ、唇が何度も重なってる。
男のくせに唇が柔らかいとか反則でしょ。


「ヤベェな。お前すごい……もっと欲しい…」


離れたかと思ったら耳元で囁かれてゾクッと身震いがした。


「ちょ…や、やめ…」


ボスンッ


なぜかあたしの背にはふかふかのベッド。
目の前にはネクタイを外しながら色気をダダ漏れさせている道明寺。
目が、目がおかしいよ…?

道明寺が降ってきた。
逃げられない・・・・


!!


ドンッ


「〜〜〜っっ!」

「っおい、なんだ?」


あたしは思わず道明寺を突きとばして押しのけて、唇に手の甲を当ててた。
きっと顔は真っ赤だ。
だ、だって、キ、キスが、なに!?


「いま…なんか…」

「………まさかお前、ディープキスもしたことないのか?」


ガバッ!


「あ、あたし、やっぱり別の部屋を用意してもらうからっ」


あたしはベッドから起き上がって部屋の出口に向かって駆け出した。
あのドアがあたしの唯一の救いみたいに見えた。
早く、早くここから出なきゃ!

でもすぐに捕まった。


「 悪かった、行くな。」


道明寺に抱きしめられて、あの香りに包まれる。
自分の心臓の音が耳の後ろで聞こえてる。


「お前、俺に会う前に最後にキスしたの、いつだ?」

「え…」

「もしかして、俺のバースデーを抜け出したクルーザーか?」


ギクッとした。
そうだ。あたしにはこの8年、彼氏がいたことはない。
つまり、彼氏いない歴=年齢。
欲しいとも思わなかったし、正直、そんな暇もなかった。
生きることで精一杯。
仕事と勉強と家族。
他のものが入り込む余地も願望もなかった。
彼氏がいないことを恥ずかしいとも思ってなかった。
……今、この瞬間まで。
やっぱり呆れてる?
どうしよう、顔が上げられない。


「お前って、もうずっと俺の女だったんだな。すげぇ嬉しい。そりゃ、俺としたことないんだから経験があるわけないよな。」


道明寺は一度強くあたしを抱きしめて、頭に頬ずりした。
そして抱き上げた。
そのまま、あたしをベッドに横たえてまた被さって見下ろしてる。
その大人で精悍になった顔を見上げる。


「俺と一緒に始めよう。」


その顔が見たことのない優しい顔で、思わずじっと見とれちゃって抵抗するのを忘れてた。
そしてまた降りてきた。

それは、初めてのキスから始まった。
最初のキスはクルーザーのパーティー。
暗闇の中で一瞬だけ触れたキス。
次のキスは放課後。
なぜか襲われそうになったけど、キスだけは優しかった。
そして3度目はこのお邸で。
告白されて唇を合わせた。
4度目は道明寺のバースデーパーティーを逃げ出した舟の中。
不意打ち・・・いや、全部不意打ちだったな。
でもあの時は子供みたいな笑顔をされて怒れなかったんだっけ。

そして今。
いつの間にか好きになってて、明日には結婚する。

重なった唇を濡れた舌がなぞってる。
ゆっくり左右になぞられて、下をなぞったら上を行き来してる。
初めての経験なのに、さっきの強張りはもうない。
口付けが深くなったと思ったら、開いた唇の間から濡れた舌があたしのそれを誘うように入ってきた。
イヤラシサが一気に増す。
侵入してきたものを確かめずにはいられない。
あたしもそっと触れた。
経験したことのない熱いキスで体の芯がゾワゾワしてきた。


「…ふ…ぁ…んん…」


やだ…気持ちいい…
…声が漏れる…
あたしって、いまどんな顔してんだろ…


「ど…みょ…じ…んぅ…」


ダメだ…キスが止まらない
もっと、もっとしてほしい…


「お前…スッゲ…もう誘う女の顔してる…」

「や…見ないで…よ…」


キスを止めずに、道明寺の手が動き始めた。
ニットの裾から侵入して肌を直接撫でた。


「ちょっやめっ…はぁ…」

「…ハァ…肌、スベスベ…触ってるだけで気持ちいいな…」


痛いくらいの甘い痺れが駆け上ってくる。
手が背中を撫でてたかと思ったら、フッと胸の拘束が緩んだ。
すると手は前にやってきて、緩んだブラの下に入り込んで、直接、胸を包み込んだ。


「ひゃっああ!」


あたしは思わず、これ以上蠢かないように服の上から道明寺の手を押さえた。


「…どうした?」


あたしの首筋をチュッチュッと吸いながら、甘い声で囁かれる。
その首に当たる吐息さえも体の芯を揺さぶる。


「す、するの? したいの?」

「……したい…限界…」

「初夜は明日、なんだよね…?」

「ハァァ…わかってる…胸触るだけ…もうちょっと…」

「途中でやめられる?」

「…やめるから…触りたい…」

「絶対だよ…」


なぜか拒むことができなかった。
道明寺の手が再び蠢き出した。
胸を包み、弄び、形を変える。
何かが背を這い上がってくる。
これが快感なの?


「あ…んん…や…」

「…やらけー…牧野…可愛いな…牧野…牧野…好きだ…」

「ん…」


胸を直接、触られながらのキスで頭の芯が痺れる。
その時、道明寺の手があたしの腿に伸びてきた。


「ダメッ!」


思わず道明寺を押しのけた。


「止まらないじゃない! もうダメッ!」

「ハァ…クッソーー!」


道明寺は仰向けになって両手で顔を覆ってたかと思ったら、跳ね起きてそのまま隣のドアに消えた。
何の部屋だろう??と思ってたらガチャッとドアが開いて、顔をのぞかせた。


「…シャワー浴びる。 お前は休んでろ。」


呟くとまたドアをバタンッと閉めた。
そっか、ここも部屋にバスルームがついてるんだ。

なんか、途中でやめるのってやっぱりかなり辛いのかな。
で、でもでも、あのままなんてやだよ。
だってハジメテだよ?
もっとちゃんと準備とかあるもんでしょ?
それに簡単にあげちゃったらこんなもんかって飽きられるのも早いんじゃない?

取り残されたあたしは、自分の唇をなぞった。
初めての深いキスの余韻で身体がカッと熱くなる。

最初、びっくりしたけど嫌じゃなかった。
もっと続いて欲しかった、なんて、あたしどうしちゃったの!?

でも…これが好きってことなのかな。
もっと触れて欲しいなんて、あたしらしくないのに。


それにしても、今夜から一緒の部屋とか言ってたけどあの様子じゃ危険かも。
やっぱりタマさんに言って別の部屋にしてもらおう。



*********



ヤベェ
ヤっちまうとこだった。
この8年、あいつに触れた男がいないことに有頂天になって、キスにも慣れてないとこがめちゃめちゃソソって、いつのまにか貪るように求めてた。
キスが気持ち良過ぎてあいつをガブガブと食っちまいたくなった。
ああ、あいつを腹一杯食えたらどんなだろうな。
美味いだろうな、気持ちいいだろうな。

初夜は明日だ。
だけどプランは何にも決まってない。
海外は諦めた。
3ヶ月後だとぉ!?
ふざけんなっ
待てるか!!

だから国内。
本当はどっかのリゾートを貸切にしたい。
でも、明日中に行ける距離にオープン前の物件はない。
今日の明日で客をキャンセルにはできない。
・・・俺も大人になったよな。

と、するとメープルか、邸か。
邸って家じゃんか!
あまりにも普通すぎる。
それはいくらなんでも情けなさ過ぎだよな。

よし、グランド・メープル・東京のインペリアルだ。

……これも十分に情けないと言えなくもないが、もうこれ以上耐えられない。


シャワーから出て牧野の様子を見ようとベッドに向かうが、いない。
部屋の中にもいない。
内線でタマを呼び出す。


「橘は?」

『別のお部屋をご用意しましたよ。坊ちゃんに食べられそうだって言うもんでね。坊ちゃん、あと一晩の辛抱ですよ。』


クッソー! 逃げられたか!
・・・しかし、逃げてくれてよかったかもな。
もう抑える自信ないからな。








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2019.03.23
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