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それからが大変だった。

道明寺がパパに婚姻届の証人欄にサインをお願いしたんだけど、パパはそれだけは道明寺家の後にしてくれと固辞した。
牧野家は許したが、道明寺家の許しが出ないと勝手はできないとかなんとか。

パパ、その気持ち、わかるよ!
あの魔女が同意してくれないと、あたしだって結婚なんて無理!
勝手にそんなことしちゃったら、地の底まで追いかけられて、消されかねないわよ。

そのことを道明寺に話したら驚くべき発言が!


「あ? ババアの承認なんていらねーだろ。俺はもう大人だし、俺の人生なんだから。」


生まれながらの財閥の後継者がよく言うわ。
でもあたしもこれだけは引けない。
お母様のお許しがなければ結婚しないとゴネた。
そしたら道明寺は「わぁーったよ!」と言い捨てて、乗り込んだ車はある場所へ一直線にあたしたちを運んだ。




「ここ・・・」

「ババアの許しが欲しいんだろ? ほれ、乗れ!」

「乗れって、待ってよ! あたしまだハウスキーパーのユニフォームのままだし、それに大学がある。そんなすぐに行けないわよ。」


そしたらさっき合流した西田さんがズイッと出てきてそのメガネを光らせた。


「その件でしたらご心配には及びません。こちらで学長と話をつけまして、授業は出席扱い、また教授の講義の様子を納めたDVDが後日届きますのでご参考になさってください。」

「が、学長!? DVD!!?」

「はい。橘様におかれましては、常務との婚姻が最優先事項でございますので、僭越とは存じましたが手配させていただきました。」


忘れてた・・・
この人たち、通じないんだった。


「でもでも、じゃ、パスポートは?」

「プライベートジェットだからとりあえずはいらねぇ。あっちの大使館に仮のを用意させる。服は機内にあるし、NY着いてから買えばいい。ほら、さっさとしろ!」


こんのぉ、さっきまで「お前は宝だ」とか言ってたくせに、もうこの傲慢野郎復活だよ。


「早くしないと担ぐぞ!」

「ひっ、わかったから!」


こうして道明寺と再会した1日目は、怒涛のジェットコースターに再び乗り込んだ日となった。



*******



ここはNY、マンハッタンの道明寺本社、社長室。

あたしは道明寺に言われるがままプライベートジェットに乗り、NYにやってきた。
着くなり5番街のブティックを引きずられ、頭の先から足の先までびっしりとコーディネートされ、いまここにいる。
隣には道明寺、ドアの横には西田さんが控えている。
あたしたちはだだっ広い社長室の硬めのソファに腰掛けて、この部屋の主を待っている。

そう、あの魔女を。

最後に会ったのは道明寺と滋さんのお見合いの場だった。

「牧野さん、おわかりいただけたかしら?」とかなんとか言われたんだよね。
なのに、8年後にその息子と結婚しますって、どのツラ下げて言えばいいわけ?
あたし、どんな目に遭わされるかな。
地球の裏側に追放されたりして。


ガチャ


社長室のドアが開いた。
見なくてもわかる。
だって、部屋の温度が一気に5度は下がった。
あたしたちは立ち上がって魔女を迎えた。

道明寺楓が秘書を伴ってデスクに着いた。
道明寺とはまた違ういい香りが漂った。
魔女の合図でもう一度座る。


「社長、お時間をいただいてありがとうございます。」


道明寺が完全にビジネスライクに告げた。


「牧野さん、お久しぶりね。あら、今は橘さんでしたかしら。」


全部、わかってるわよ、っていう牽制。
道明寺が面談(謁見?)を申し入れてからこの時間までにあたしのことを調べたのかな?

あたしは立ち上がって挨拶をした。


「はい。ご無沙汰しております。」

「で、今日は?」


道明寺も立ち上がった。
あたしの肩を抱き寄せた。


「社長、私はこの橘つくしさんと結婚します。」

「ハァ、8年前の悪夢が蘇ったようだわ。私が許すとでも?」

「許可をいただきに来たわけじゃありません。」

「決定事項というわけ?」

「儲け話をしに来ました。社長、投資って言葉をご存知ですか?」


この場の道明寺以外の全員が「こいつは鉄の女に向かって何言ってんだ?」って顔になった。


「よく存じ上げてるわ。」

「こいつを俺の妻にすることは俺への投資だ。」


魔女の片眉がつり上がった。
この人が表情を変えるなんて珍しいんじゃない?
だって隣に立ってる秘書さんが冷や汗を拭ってる。


「寝言、かしら?」

「俺と牧野の結婚を認めれば、俺はこの先何十年も道明寺に莫大な利益を上げ続ける。それは投資だ。でももし認めなければ、」

「認めなければ…?」

「俺は暴落し、道明寺は地に堕ちる。」

「その方にそんな価値があるのかしら?」

「ある。こいつは俺の半分だ。俺は今、50%の動力で動いてる。でもこいつがいればそれが100%になる。下手な政略結婚なんて吹き飛ばすくらいの能力を発揮してやるよ。」

「大きく出たわね。」

「あんたは認めるしかねぇんだよ。あんたの何よりも大事な道明寺を守るためには、俺にこいつが欠かせないってことを。」


あたしは身の縮む思いだった。
この人は何を考えてこんなトンデモナイ理論を世界の鉄の女に向かってブチかましてんだろう。
でも、その道明寺のトンデモ理論に魔女は考え込んだ。


「わかりました。」


え!?


「では、契約のサインを」


道明寺は内ポケットから婚姻届を出し、証人欄を指差した。
鉄の女は万年筆を出し、流麗な字でサインした。


「つくしさん、」

「はいぃ!」


いきなりファーストネームを呼ばれ、あたしは直立不動で返事をした。


「あなたはいいの? そのままで。」

「え? はい?」

「司の隣に立つのに、そのままのご自分で満足ですか?」


やっぱりこの人はすごい人だ。
あたしの不安はお見通し?
それとも、このままのあたしじゃ道明寺の重荷になることがお見通し?


「いえ、満足してません。今のままじゃ彼の隣に立つことは難しいと思ってます。」

「牧野!」

「そう。その点については意見が一致したわね。」

「あの、それで社長にお願いがあります。」


あたしは今、この瞬間に思いついたことを魔女にぶつけることにした。
どうせ厚かましいと思われてるんだから、「毒を食らわば皿まで」でしょ。


「何かしら。」

「あた、私を、鍛えてください! お願いします!」


あたしは腰を折り曲げて、深く頭を下げた。


「お前! 何言ってんだ!」

「あなたは黙ってて。社長、私は100年経っても道明寺家に見合う嫁にはならないかもしれません。でも少しでも近づきたいんです。」

「…いま、この場にいる者、全員があなたの宣言を聞きました。後戻りは許さないわよ。」

「わかってます。」

「よろしい。励みなさい。」


あたしは、結婚を認められたことよりも、あたしの気持ちを汲んでもらえたことのほうが嬉しかった。
初めて魔女とまともな会話ができたと思った。








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2019.03.21
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