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「先輩、たまには道明寺さんに「好き」とか「愛してる」とか「会いたい」とか伝えてるんですか?」

大学のカフェテリア。
F4用のスペースで桜子とランチ中。
唐突な話題にうろたえる。

「なによ?」

と睨んでみたところで、この子の前で取り繕えるわけもなく。

「先輩のその意地っ張りって、なんのメリットがあることなんですか?」
「メリット?」
「何か良いことがあるから意地を張り続けてるんでしょう?」

と、言われてもメリットとか考えたことはなかった。

「道明寺さんに素直に「好き」って伝えないメリットはなんですか?「会いたい」って言わないことが誰のどんなメリットになってるんですか?」

グイグイと迫ってくる桜子に私は答える言葉がなかった。

そう改めて言われたら、別にメリットなんてないわよ。
ただ、言えないだけ。
恥ずかしいし、照れるし、ガラじゃないし。

「ガラで恋愛されたんじゃ、道明寺さんも報われませんね。」
「先輩、一度ちゃんと考えたほうがいいですよ。好きな人に悲しい思いや寂しい思いをさせてまで、その意地ってのは貫かなきゃいけないものなのか。先輩はちょっと傲慢ですよ。」

そう言い捨てるように桜子はカフェテリアを出て行った。


傲慢とまで言われてしまった。
傲慢は道明寺の専売特許だと思ってたけど、私も!?

確かに、私の意地っ張りが往々にして道明寺を振り回してしまっていることは否定できない。
今だって東京ーNYというありえない距離と時差の遠距離恋愛をしてるっていうのに、私からはメール以外の連絡ができない。
でもこれは意地っ張りとは関係ないよ。
いつでも忙しい道明寺への配慮だよ、うん。

メールでも何を打てばいいのかわからなくて、3回に2回は途中で面倒になって下書きを削除してしまう。
本当の気持ちを打つことができないから時間がかかるんだってことは自覚してる。
でもさ、「会いたい」とか「寂しい」とか伝えてどうなるの?
同じ東京に住んでたら、「じゃあ、会うか」ってなるだろうけど相手はNY。
言われても困るでしょ。

そう、だからこれは意地っ張りじゃなくて配慮だって!

でも私の耳には桜子の最後の言葉がリフレインしていた。

『好きな人に悲しい思いや寂しい思いをさせてまで』

うん、そうだね。
それは本意じゃない。
道明寺を悲しませたり、寂しがらせたりしたいわけじゃない。
道明寺が私にくれる言葉たち。

『好きだ、愛してる、めちゃめちゃ惚れてる』
『いつでも会いたい』

私にとっては宝物だよ。
離れてるけど、離れてるから言われて嬉しい。

そうか、これだよね、私に足りないのは。
道明寺への「配慮」だと思ってたのは、私の自分への言い訳。
臆病な自分への慰め。

バカな女だと思われたくなかった。
頭の中に恋愛のことしかないなんて思われたくなかった。
世界を相手に仕事して戦ってる道明寺と対等であるには、私もツンと澄ました「オトナのオンナ」でなきゃいけないって思ってた。

でもそれは道明寺に求められたことじゃない。
あいつが欲しいのは、私があいつから貰ってるのと同じもの。
ただ素直な私の言葉だったんだ。


私は時計を見ないようにして携帯を手に取ると、すぐに着信履歴から道明寺のメモリを表示させて発信をタップした。

RRRRR RRRRR RRR…

『おう、こんな時間に珍しいな。どうした?』

道明寺の声が心なしか硬い。
後ろがざわついている。
そりゃそうか、仕事中に違いないもんね。もしかして会議中だった?
でも今日は心のストッパーを外す。

「あのね、あのさ、今、忙しいのは承知なんだけど、どうしても素直に伝えたいことがあって。。。」
『・・・伝えたいこと?』

道明寺の声が低くなった。悪い話だとでも思ったかな?

ゴクン。
決心してもやっぱりちょっとハードルが高い。
ええい!私らしく決める時は決める!

「あの、、、大好きだから!いつも離れてて寂しいし、会いたいと思ってるから。だから、早く帰って来てね。帰ってくるまでちゃんと待ってるから。」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ち、沈黙長いよ・・・

「あ、あの道明寺?聞こえた?」
『あ、ああ。聞こえた。』

電話の向こうで秘書さん?誰かが「専務、専務」と呼びかける声が聞こえる。
やっぱりこれ以上は無理!早く切らなきゃ迷惑がかかる。

「じゃあね。お仕事頑張ってね。また」
『あ!おい!牧野』
「え?」
『サンキューな。元気でた。すぐに帰るから、いい子でいろよ。』

携帯の向こうで笑ってる道明寺がいた。
もちろん、実際に見えたわけじゃない。
でも声のトーンや話し方で本当に喜んで優しい笑顔を浮かべてる道明寺の顔が目の前に確かに見えて、私の心が暖かいものでいっぱいになった。

意地っ張りにメリットなんてなかったね。
こんなに簡単に大切な人を幸せにできる方法があったのに、私は気づかなかった。
道明寺からもらうばかりで、傲慢だったよね。

道明寺、もう寂しい思いはさせないからね!


*********


と、思ったのに、2日後、なぜかアパートの前に立つ道明寺。

「ど、どうしたの!?」
「お前が可愛いこと言うから我慢できなくなった。すぐ帰るっつったろ?あと1時間でまた戻んなきゃなんねえけど。」

と満面の笑みで抱きつかれた。

ギャーーーーーーー

桜子、道明寺には意地っ張りにメリットがあったわよ!!

「早くNYに戻れーーーーー!」







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2018.09.16
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2018.09.17



結婚を3ヶ月後に控えた私たちは、久しぶりに休みを合わせて一泊旅行に来てる。
場所は道明寺家所有の南の島の別荘。
そう、ここはあの「事件」の舞台となった島だ。

当時、私はまだ道明寺への気持ちを自覚する前で、花沢類が好きで、らしくない行動を繰り返す花沢類から目を離せなかった。

あの時、私は道明寺を酷く傷つけた。
いや、酷いなんて言葉では表せないほどのことをした。
よく許してくれたと、今でも思う。

ううん、きっとまだ終わってない。
あのことが今でも道明寺を不安にさせているんだ。

だって、とにかく道明寺のヤキモチが酷い。
コンビニのレジも女性じゃないとダメとか言う。
私だよ?
道明寺の目にはどう見えてんの?
本気で目の検査を勧めたくなる。
ヤキモチってのは全くされないのも悲しいけど、現状では日常生活に支障が出るくらい過剰にされている。

束縛もすごい。
門限とかあるし。社会人だよ!?
邸に私が同居し始めてからは何時何分に帰宅したかタマさんに報告させたり、少しでも空白の時間があったら私がどこでなにをしてたのかしつこく追求してくる。
自分の仕事の合間に連絡してきて、すぐに応答しなかったら怒るし、仕事でも飲み会なんて以ての外。
大人なのにそこまで管理されたくないよ。

なんでこうなのかな?
なんでこうなった?

そう考えて、行き着いた答えがこの島だった。

だからここへ来たの。
あの時と同じ場所で、もう一度始めるために。


********


「うーーん!気持ちいいーー!」
私はあの時と同じ部屋のバルコニーに立ち、あの時と
同じ景色を前に、思いっきり潮風を吸い込んだ。

「おい、なんでここなんだ?」
道明寺は、ここに来ることをあまり快く思ってなかった。
当たり前だよね。
イヤな思い出の場所に好きで行きたい人はいない。

「泳ぐにはちょうどいい季節じゃない。来たくなかった?」
道明寺がイヤと言えないことを分かってる意地悪な質問。
「別に、お前といっしょならどこでもいいけど。」

本当は違うのもわかってる。
だって朝もなかなか起きなかったし、テンションもかなり低い。
本当にごめんね。
でもやめないよ。

「ねえ、ちょっとビーチを散歩しようよ。」

道明寺と手を繋いで波打ち際を歩く。
あの時、まさか将来こうなるなんて、1ミリも想像してなかった。
この人をこんなにも愛するようになるなんて、時間の流れってわからない。

サンダルを脱いで、砂に足が埋まる感覚を楽しむ。
乾いた砂は熱いけど、波打ち際では足の下の砂がひんやりとした海水にサラサラと流されてくすぐったい。

静かな海、静かな道明寺。
時々、海風になびく私の髪を梳いている温かくて大きな手。
何かを感じてる?
私がしようとしてること、わかっちゃった?
でもいいの。
それでも私はもう一度始めたいの。



夕食はルーフバルコニーで海に沈みゆく太陽を眺めながら。
都会では見られない水平線に、金色の太陽が消えてゆく。
光の帯が真っ直ぐに私たちに届いてる。
この光の中をずっと2人で歩いて行きたいね。

この後の計画があるから、私はアペリティフを一杯だけにした。
「酒はもういいのか?」
「うん、せっかくの夜だから、酔っちゃったらもったいないもん。」
「そうだな」
道明寺の表情がここに来て初めてニヤリと変化した。
いま、ヤラシイこと考えたでしょ?
今日は気づかないふりしてあげる。

食事を終え、部屋に戻る。
テラスは開け放たれていて、シフォンのカーテンがユラユラそよいでる。
こっちの暑さって東京みたいにジメジメしてなくてサイコーだね。
って、これあの時も言ったっけ?
あの時と違うのは、道明寺はソファベッドを使わないこと。
大きなキングサイズのベッドにいっしょに入る。

すぐに手が伸びて来て、引き寄せられる。
額をくっつけて私の瞳を覗き込む。
今日も道明寺だけを映してるか確かめるように。
でもそんなに近いと、道明寺の瞳しか映ってないよ?

キスして、キスされて、イって、イかされる。
今日は1回だけ。
今夜は寝落ちできないの。
「んだよ、今夜のために酔わないって言ってたのに。」
「いーの!こうして眠るだけでもいいでしょ!?」
私は自分から道明寺の腕の中に収まる。
「おやすみ」
胸元におやすみのキスをする。

さあ、こっからだ。
目を閉じるけど、寝ないように、寝ないように。

どのくらい経ったかな?
1時間?それともまだ10分?
私っていつも寝たらどうしてるのかな?
自然な寝てる演技って?
道明寺もきっとまだ眠れてない。
でも道明寺も寝たフリしてるよね?

その時、大きくふわりとカーテンが揺れて、一陣の風が私の頬を撫でた。

それを合図に私は道明寺の腕の中から抜け出し、ベッドも抜け出し、ナイトウエアを着て、ついでに部屋も抜け出した。




月光の反射するホワイトビーチを歩く。

あの夜の場所まで来ると、私は同じように砂浜に腰を下ろした。

あの夜と変わらない満点の星空
あの夜と変わらない波の音
あの夜と変わらない月の光





「何を、考えてる?」

振り向くと道明寺が立ってる。
あの夜のように。

「道明寺・・・」

道明寺は動けない。
だから私が迎えにいく。

「こっちに来て、いっしょに座ろう。」
手を引いて連れてくる。
「座って」

昼間は海と空を違う青で隔ててた太陽は、今は見えない。
夜の海の果ては完全に空とつながっていて、黒と黒は分かち難く混ざり合って、まるで2人で閉じ込められたみたい。

「道明寺のこと、考えてた。」
「俺のこと?」
「そう。道明寺はなんでそんなに不安なのかなって。」
「・・・」
「私のせいだよね。」
「この島で、ここで、あの夜あったこと。」
「!」
「それが今も道明寺を苦しめてるんじゃないかって。」

今こそ、すべてを打ち明けよう。
私は海と空の混じり合った漆黒を見つめながら記憶を手繰り寄せた。


「あの時、この島に来る前から、花沢類が変わってしまったことに戸惑ってて、心臓に小鳥を飼ってるみたいにざわざわしてた。」

今はもう『類』って呼んでるけど、あの頃の私にとって類は『花沢類』だった。

「最初の日、眠れなくて部屋を抜け出して、ビーチをひとりで歩いてたの。そしたら花沢類がここに座ってた。」

「花沢類が寒いって、5分でいいから抱きしめてって言ったから、抱きしめた。
フランスのこと、静さんとの間であったことを話してくれた。
その時にポケベルが鳴って、道明寺が探してくれてるってわかって。」

「次の日に道明寺にポケベルはどこにあるって言われたよね。
花沢類といっしょにいたって知られたくなくて、「部屋にある」って咄嗟に嘘をついた。」

「そのあと和也くんが来て、静さんが結婚するかもしれないって雑誌の記事を見せられて、ああ、だからだったんだって。だから花沢類は傷ついてパリの部屋をひとりで出てきたんだって思ったらすごく切なくなった。」

道明寺は身じろぎひとつせず、海の果てを見つめてる。

「その夜、今度は花沢類に会いたくて部屋を抜け出した。また傷ついてここでひとりで座ってるんじゃないかって思ったから。」

「あの時、フランスから帰って来てから、全然らしくなくて、心配で花沢類から目が離せなかった。花沢類が幸せじゃなかったから、放って置けなかった。」

「だから私は言ったの。「なんで幸せになってくれないの!」って。」

「・・・・・知ってる。」
初めて道明寺が口を開く。

「・・花沢類を幸せにしてくれる誰かが現れてほしいって、本気で願った。静さんだと思ってたけど、違うなら、その人に今すぐここに現れてほしかった。」

寄せて返す波の音が、私の背中を押してくれる。

「でも道明寺は違う。」

道明寺が振り向く。
私も真っ直ぐに道明寺を見る。

「道明寺は私が幸せにしたいの。誰かになんて譲らない。
道明寺を幸せにできるのは私だけ、私を幸せにできるのも道明寺だけだから。」

道明寺の目が見開かれて、その瞳に私が映るのが見えた。
深く美しい黒い瞳。
道明寺の瞳の黒と、私の瞳の黒が混ざり合うのがわかった。

「道明寺を愛してる」

私たちの黒い影も、分かち難く混ざり合った。








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2018.09.20

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《ご注意》 先に「過去を乗り越えて」をお読みください。

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結婚を3ヶ月後に控えて、牧野が旅行に行きたいと言い出した。
あちこちのリゾートを提案するが、旅行先は決めてあるらしい。

前夜、休みを取るためにやっと仕事を片付け、嬉々として邸に帰ると、牧野から聞かされた行き先は南の島の別荘。
・・・マジかよ。
どうしてそこなんだよ。
なんでそんなとこ行きたいんだよ。
俺が道明寺の当主になった暁には、一番に売却しようと思ってる物件だぞ。
苦々しい思い出が埋まってる場所だ。
いまさら掘り起こしたくはない。

しかしそんな女々しいことは言いたくないし、わざわざあの件にも触れたくない。
仕方なく俺は同意した。

牧野がいつものように起こしてきた。
あー、このまま諦めねぇかなぁ。
と、微かな期待を込めて寝たフリを決め込む。
なのに、こんな時ほど牧野は可愛く起こしてくれる。
おい、俺より俺のオスが先に起きたぞ。
これで寝たふりなんてできるわけねぇだろ。
俺たちを起こしてくれた牧野にお礼参りをしてやる。
今夜の前哨戦だ。
お返しに一発殴られた。

しぶしぶプライベートジェットに乗り込むと、あの時と同じ航路で過去へと飛んでいった。


********


「う——ん!気持ちいい——!」
あの時と同じ部屋の、あの時に俺が後ろから抱きしめたバルコニーで牧野が伸びをした。

俺がここに来たらこの部屋と決まってる。
一番眺めのいい部屋だからな。
それにしても変わらねぇな。
この景色も、この部屋も、この風さえも、何もかもが俺を過去に引きずり戻す。

「おい、なんでここなんだ?」
俺は不機嫌になって聞いた。

「泳ぐにはちょうどいい季節じゃない。来たくなかった?」
本当に単純にそれだけの理由か?
問いたいけど問えない。
「別に、お前といっしょならどこでもいいけど。」
これは俺の真実だけど、今日は本音じゃない。

「ねえ、ちょっとビーチを散歩しようよ。」

牧野と手を繋いで波打ち際を歩く。
あの時、こうなることを想像したけど、こんなに時間がかかる予定じゃなかった。
こいつを手に入れるのに、俺様がこんなにも苦労させられるなんて、牧野の考えることは本当にわからない。

裸足になって無邪気に波と戯れる牧野。
白くて小さな足が砂に埋まっては、サラサラと打ち寄せる透明な波にその足跡が消されていく。
時折、波を蹴り上げて子供のようにはしゃいでる。

弾ける水しぶきと弾ける牧野の笑顔。
お前の中ではあの事も波に消されたのか?
俺の中には鋭利なナイフで刻まれたように残るのに。

陽に照らされた黒髪を指で梳く。
この黒髪のように真っ直ぐなお前は、時に凶器になるのを知ってるか?
その凶器でまた俺に刻むつもりか?
今度は立ち上がれないほどに奥深く。


夕食はルーフバルコニーで海に沈みゆく太陽を眺めながら。
グラスに金色の太陽が反射して、牧野の横顔を照らしている。
お前は光の中を歩いていけ。
俺が影になってやるから。
そうして共に歩いていこう。

牧野は食前酒を1杯だけ。
「酒はもういいのか?」
「うん、せっかくの夜だから、酔っちゃったらもったいないもん。」
「そうだな」
俺はやっと思考を過去から取り戻し、今夜の牧野を想像してニヤリと目配せした。
牧野は珍しく何も言わないが、頬が赤く染まったのがキャンドルの灯りでもわかった。

食事を終え、部屋に戻る。
海を臨むジャグジーで埃と汗を洗い流す。
こっちの暑さって東京みたいにジメジメしてなくてサイコーだね。
って、その台詞いつかも聞いたぞ?
いつかとは違い、俺はソファベッドは使わない。
慣れたキングサイズのベッドに牧野といっしょに入る。

牧野の細い体を抱き寄せる。
額を合わせて大きな瞳を覗き込む。
そこにかつての誰かが映っていないことを確かめたくて。
お前に俺しか見えないように。

キスの雨を降らせる。
お前の細胞の全てが俺のものだと印をつける。
啼かせてイかせてイかされる。
なのに狂宴の終わりを告げられる。
「んだよ、今夜のために酔わないって言ってたのに。」
「いーの!こうして眠るだけでもいいでしょ!?」
かつての自分の言葉を取り消したい。
よくねーよ!

「おやすみ」
俺の腕の中に収まって、胸元におやすみのキスをすれば牧野は目を閉じた。

でも牧野は寝ていない。
この部屋では、牧野が寝ないと俺は眠れない。
それとも、この腕の中から飛び立つ気かよ。
どうかこのまま牧野の寝息が聴きたい。

声が漏れるのも構わず開け放たれたテラスから、季節外れのひんやりとした風が入り込んで、俺の背中を撫でた。

それを合図に牧野は俺の腕から抜け出し、ベッドからも抜け出し、ついに部屋から抜け出していった。

風ではない冷たいものが背筋を伝う。




月光に照らされた白い砂浜を牧野が歩いてる。

そしてあの夜の場所に着くと、牧野は腰を下ろした。

あの夜と変わらない満点の星空
あの夜と変わらない波の音
あの夜と変わらない月の光





俺もあの夜と同じ場所に立って牧野を見つめてる。
耐え難い時間が流れる。
お前、いま何を考えてる?
あいつのことを思い出してるのか?
あいつとの思い出の島に来たかったのか?
また俺を捨てるのか?

こらえきれず俺は声をかける。

「何を、考えてる?」

牧野は振り向き、俺の名を呼んだ。

「道明寺・・・」

俺は動けない。
そこには近づけない。

「こっちに来て、いっしょに座ろう。」
牧野が俺の手を引いてその場所に戻る。
「座って」

波打ち際ではしゃいだ昼は、すっかりその表情を変え、今は寒々しいほどの月が浮かんでいる。
月の光では照らせない闇が、海と空の果てから迫ってくる。
今この瞬間に、俺たちを呑み込んでくれ。

ふいに牧野が口を開いた。

「道明寺のこと、考えてた。」
予想外な言葉に、俺は牧野を見た。
「俺のこと?」
「そう。道明寺はなんでそんなに不安なのかなって。」

不安。俺に常につきまとう感情。
また牧野を失う日がくるかもしれない。
永遠を信じられない。

「私のせいだよね。」
「この島で、ここで、あの夜あったこと。」

一瞬、悪寒が走って肩が震えた。

「それが今も道明寺を苦しめてるんじゃないかって。」

あの時、生まれて初めて味わった。
傷つけられるということ。
俺は知らなかったんだ。
心につけられた傷は、決して癒ないってことを。

牧野、お前しか俺を救えないんだよ。

今こそ、真実を聞かせてくれ。
そのためにここに来たんだろ?
全てを聞き終えた時、俺たちはどうなってるんだろうな。

牧野が語り始めた。

「あの時、この島に来る前から、花沢類が変わってしまったことに戸惑ってて、心臓に小鳥を飼ってるみたいにざわざわしてた。」

牧野の口から初めて聞かされる類への想い。
牧野は類を昔の呼び名で呼んでいる。
牧野に聞こえないように、俺は密かにゴクリと喉を鳴らせた。


静が渡仏して類はその後を追っていったが、類の背中を押したのは牧野だった。
今ならわかる。
牧野は相手が好きな男でも、そいつの幸せを思ったら他の女の元に送り出して身を引いちまうヤツだ。

でもあの時の俺はまだ牧野をわかってなかった。
牧野は類を好きじゃなかったんだって、単純に考えちまった。
それが全ての間違いだった。

「最初の日、眠れなくて部屋を抜け出して、ビーチをひとりで歩いてたの。そしたら花沢類がここに座ってた。」

「花沢類が寒いって、5分でいいから抱きしめてって言ったから、抱きしめた。
フランスのこと、静さんとの間であったことを話してくれた。
その時にポケベルが鳴って、道明寺が探してくれてるってわかって。」

静を失って凍りついた心を、牧野に暖めてもらいたかったのか。
俺たちにも話さなかった静との顛末を牧野には打ち明けたことも、2人の関係の深さを表してるようで。
ここに来てからずっと燻っていた嫉妬の炎が、今の俺の体内に燃え上がった。

「次の日に道明寺にポケベルはどこにあるって言われたよね。
花沢類といっしょにいたって知られたくなくて、「部屋にある」って咄嗟に嘘をついた。」

ああ、そうだ。
類から、浜辺で忘れていったって渡されたけど、牧野を信じたくて聞いたんだ。
あの時に本当のことを話してくれてたらどうなっただろう。
俺は許したか?
本当のことを話してくれてよかったって思えたか?

「そのあと和也くんが来て、静さんが結婚するかもしれないって雑誌の記事を見せられて、ああ、だからだったんだって。だから花沢類は傷ついてパリの部屋をひとりで出てきたんだって思ったらすごく切なくなった。」

お前も傷ついたって顔してたもんな。
類を見るお前の目は優しかった。
その眼差しはいつも類にだけ注がれてた。

俺はまた過去に囚われていく。
俺の目にはもう夜の果ての常闇しか見えない。

「その夜、今度は花沢類に会いたくて部屋を抜け出した。また傷ついてここでひとりで座ってるんじゃないかって思った。」

「あの時、フランスから帰って来てから、全然らしくなくて、心配で花沢類から目が離せなかった。花沢類が幸せじゃなかったから、放って置けなかった。」

「だから私は言ったの。「なんで幸せになってくれないの!」って。」

「・・・・・知ってる。」
つぶやくほどの声しか出ない。

そこからは俺が知ってる光景だ。
俺は牧野の叫びを聞いた。
『なんで幸せになってくれないの!』
そして見たのは2人の重なる姿。
類が牧野を抱き寄せ、キスをする。
そのまま2人が強く抱き合う。
まるで一対のように。

俺は思わず瞼を閉じる。
そんなことをしても脳裏に焼きついた記憶からは目を反らせないのに。

「・・花沢類を幸せにしてくれる誰かが現れてほしいって、本気で願った。静さんだと思ってたけど、違うなら、その人に今すぐここに現れてほしかった。」

俺が認識していた以上の、牧野の類に対する愛情に身がすくんだ。

それがお前だよな。
大事な人が幸せになるなら、自分を犠牲にすることができる。
お前の愛はそういう愛なんだよな。
でも類はお前を選んだんじゃねぇのかよ。
お前に幸せにして欲しかったんじゃねぇのかよ。

俺は知ってる。
類は今でもそう思ってる。
だから行くのか?
お前が類を幸せにするために、もう一度、類を選ぶのか?

暗鬱な思考の淵に立った俺を、牧野の次の言葉が引き戻す。

「でも道明寺は違う。」

一瞬、何を言ってるのかわからなかった。
牧野を見る。
牧野も顔をこちらに向け、俺の目を真っ直ぐに見た。

「道明寺は私が幸せにしたいの。誰かになんて譲らない。
道明寺を幸せにできるのは私だけ、私を幸せにできるのも道明寺だけだから。」

不意打ちの大ドンデン返しに、俺は驚きで息ができない。
俺しか映らない、輝く大きな瞳が近づいて来る。

「道明寺を愛してる」

俺の影が、愛しい女のそれに呑み込まれた。








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2018.09.22


こんばんは!nonaです。

このサイトに来ていただいた方、読んでくださった方、拍手をくださった方、拍手コメントをくださった方、コメントをくださった方、皆様、本当に、本当に、ありがとうございます!!
開設からほどなくしてこのような歓迎を受けて感激です!

早々のリンクで多くの皆様を導いてくださった、Everything*Loveの蘭丸さまには心から感謝申し上げます。

ものを書くのが初めてなら、ブログを開設したのも初めてで、まだまだ勉強不足です。
おひとり、おひとりにお返事したいのですが、知識がついていってません。
(しかも、家族のリビングにパソコンがあるので、集中してかかりきれないんです(泣)しかも連休(;;))
スマホからの管理も全く慣れなくて。

申し訳ありません><!

ちょっと勉強して、平日のゆっくりできるときにじっくりお返事させていただきますね。
(コメントへの返信て、非表示にできないんですね。)


長編も準備中なので、また覗いてくださると幸いです。




                       nona






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2018.09.22


つかつく二次小説、Everything*Love様にリンクしていただきました!

つかつくの内省まで丁寧に描ききる筆致が圧巻な蘭丸様のサイトです。

当方でもリンクさせていただきます!


Everything*Love


蘭丸様、ありがとうございます!







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2018.09.24
えーと、真面目な長編の執筆が遅々として進まないので、息抜きに考えたお話をアップします。勢いで更新していくつもりです。
いろいろと問題作ですが、どうぞ。

*-*-*-*-*-*-*-*-*-* -*-*-*-*-*-*-*-*-*-* -*-*-*-*-*-*-*-*-*




執務室で書類の山と格闘中に、いきなりデスクの引き出しが勢いよく開き、俺はみぞおちを強打し椅子ごと後ろに吹っ飛ばされた。

「イッテーーーッ!!!なんだよ!!?」

何が起こった?
引き出しが勝手に開いた!?
んなまさか。

俺は自分の身に起きたことが全く理解できなかった。
その時、開いた引き出しから白くて丸いものが出てきた。
丸いものには青い棒がついていて、その先には今度は大きくて青い丸いものが見えた。

『やあ、こんにちは!僕、ドカえもん!』

・・・・・・・・は?

引き出しから出てきた物体は、俺の腰くらいの背丈の、どう見ても俺でも知ってるあのキャラクターだ。

「ドカえもん?お前、ドラえ・・・!!!」

白くて丸いものが俺の口を塞いだ。

「それ以上は言っちゃダメ!大人の事情ってヤツ。こんにちは!僕、ドカえもん。」

「はあ・・・」

あれか?ライセンス的なやつか?
それとも二次使用的なやつか?

「で、そのドカえもんが何の用だよ?」

「あれぇ?僕を見ても興奮とかしないの?あの「不思議なポッケでなんでも叶えて」的なリアクションはないの?」

「あ?あのな、確かに俺でさえお前の機能は知ってるが、俺様はそんなもんなくても何でも叶うんだよ!それより、いきなり引き出し開けやがって、お前のせいでこのザマだ。どうしてくれるんだよ!お前になんて用はねぇ!さっさと引き出しの中に帰れ!」

「えー、なんか拍子抜けだなぁ。僕は君の子孫に頼まれて来てあげたのに。」

「子孫?」

ちょっと待て、俺の子孫がこいつを寄越した?
子孫てことは俺の子供か孫ってことか。
俺が牧野と結婚してできた子供ってことだよな?
途端に顔がニヤける。

「あー、今なんか考えてるでしょ?」

その時、また引き出しから何かが現れた。

「よいしょっと。もう、ドカえもん!先に行くなら言ってよー」

現れたのは10歳くらいの子供だ。
髪はブラウンだがウェーブがかかっている。

「ごめん、ごめんツグムくん。」

「で、おじいちゃんには会えた?」

「うん、ほら、この人だよ。」

と、ドカえもんとやらはまだ床に座り込んでいる俺を指した。
おじいちゃんだとぉ!!

「おい!誰がジジィだ!」

「おじいちゃん!本当だ、資料館で見たご先祖様だ!」

ご先祖様?

「じゃあお前が俺の子孫なのか?」

「はじめまして、おじいちゃん!僕はツグム・ドウミョウジです。」

俺は呆気にとられた。

「お、おおう」

思いっきり動揺してしまった。
そのツグムという子供は、見慣れない服装をしているが、男の子だろう。
色白の肌に瞳の色はグリーン。
髪のウェーブに俺の子孫の片鱗が見えた。

「おじいちゃん、会えて光栄です。200年後の世界でもツカサ・ドウミョウジは中興の祖として有名なんですよ。」

いま何つった?
200年後の世界?

「おい、いま200年後っつったか?お前ら未来から来たんか?」

「はいそうです。おじいちゃんのこの机が僕たちの未来と4次元で繋がったんです。タイムマシンで来たんですよ。」

「タイムマシン〜〜!?」

俺は立ち上がって開いた引き出しを見た。
さっきまで俺の私物が入っていた引き出しの中には、底なしの空間になんだか乗り物が浮かんでいた。
ってか、ここに仕舞っておいた牧野の隠し撮りはどこに行ったんだ!!

「おい、牧野の写真を返せ。」

おれはツグムに凄んだ。


「マキノ?マキノ、マキノ・・・誰ですか?それは。」

「は?俺を知ってる子孫なら牧野のことも知ってるだろ。ああそうか、旧姓だからわかんないのか。つくしだよ、つくし!俺の妻になる女だ。」

「ん?おかしいな。僕が読んだ資料によると、確かツカサ・ドウミョウジの妻はジュリア・ドウミョウジです。」

「じゅりあ〜〜???おい!誰だ、それ!」

「誰だっけ、ブラジルの大統領の娘だったと思うけど。」

「ブラジルの大統領の娘だとう!?」

俺は額に青筋が立つのがわかった。
どういうことだ?
俺は牧野と結婚しないのか?
ブラジル大統領の娘と政略結婚か?
牧野はどうした?
別れた??
ありえねぇ!そんなことあってたまるか!!

「おい!!タイムマシンで来たって言ったな?俺を乗せろ!今すぐ見に行くぞ!」

返事を待たずに、俺は自分のデスクの引き出しに片足を突っ込んだ。








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2018.09.24




「もう、勝手だなぁ、おじいちゃんは。」

3人は狭いタイムマシンに乗り込んだ。

「おい、おじいちゃんはやめろ。司様だろ。」

「えーだって実際に僕のひいひいひいひい、おじいちゃんだし。」

無視

「司様が嫌ならお兄様と呼べ。」

「あー、お兄ちゃん、でいい?」

「・・・いいだろう。で?タヌキ、10年後の俺に会いに行け。」

「もぅーう、タヌキじゃないよ!ドカえもん!!10年後ね。しゅっぱーつ!」

タイムマシンは4次元空間をワープし、
201X年から一気に202X年へ駆け抜けた。


シュタッ!!

3人は10年後のNY道明寺邸へと降り立った。

「10年後も俺はまだNYにいんのか?」

その時だった。
エントランスポーチの方からから子供の声が聞こえてきた。

『リサ様、お待ちください。』

子供の声を使用人が追いかけている。

3人が窓から様子を窺うと、綺麗な顔立ちをした巻き毛の女の子が見える。
4、5歳だろうか。
子供は、今からリムジンに乗り込もうとする長身の男に駆け寄った。

『パパ!』

男が振り向く。

「お!おい!」
「お兄ちゃん、しーーーーー!!!」

振り向いた男は司だった。

『パパ、抱っこして!』

女の子は男に両手を伸ばすが、男は表情を変えず、冷たい視線を投げただけだった。

『おい、こいつの母親はどうした?』

男は使用人に向かって言った。

『あ、はい。お買い物にお出かけになられました。』

『ふん、買い物ね。どうせまたどっかのホテルに男とシケこんでるんだろう。子供はこっちに押し付けて、か。』

使用人は困ったような恐縮した顔をしている。

『俺は子供は嫌いなんだ。部屋から出すな。暇なら家庭教師を増やせ。来週にはまたブラジルに帰るんだろ?俺と接触するようなことは許すな。』

そう冷然と言い放つと、男は車に乗り込んだ。

『さあ、リサ様、お邸に入りましょう。美味しいおやつをご用意いたしますよ。』

『う、うん。』

女の子はさっきの勢いが嘘のように意気消沈して、使用人に手を引かれていった。



司は愕然として見ていた。
あれが俺の未来か。
冷たい表情。
妻にはもとより、子供に対する愛情もなく、幸せが微塵も感じられない。

どうやら妻がブラジル人だというのは本当のようだ。

「おい、ツグム、お前の読んだ資料では俺の子供の名前はなんてんだ?」

「確か、リサ・ドウミョウジだよ。」

「・・・マジか・・」

ではやっぱりあの子が。

牧野はどうしたんだ?
なんで結婚しなかったんだ?
まさか、類と?
ふざけんな!!

「おい!!この時代の牧野に会いに行くぞ!タヌキ、道具出せ!!」

「んもう、だからドカえもんだって!」

「どっちでも同じだろ!早くしろ!確かどこでも行けるドアがあるだろ!」


意外と詳しい司であった。








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2018.09.25



「ドカえもん」いかがでしょうか。

第二話にしてザワつかせてすみません。


司=のびたくん

つくし=しずかちゃん


の設定で書いてるので、元ネタをご存知の方は安心していただけると思います。

しずかちゃんは出来過ぎくんと結婚してましたよね。

さて、出来過ぎくんを誰にするかな〜〜(▽∀▽)ニヤリッ


引き続きお楽しみに!







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2018.09.25




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2018.09.26
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