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皆さま、こんばんは!


お待たせいたしました!!
本日は「まえがき」でございます。

やっとやっと、皆さまに読んでいただけるようになりました。
新連載のタイトルは、


    「 夫婦恋愛 」


です!

職場恋愛、社内恋愛、遠距離恋愛など、〇〇恋愛と名のつく言葉は数あります。
でも「夫婦恋愛」って言葉は聞かないぁ、というところから妄想が始りました。

「お見合い結婚」という言葉はありますが、その結婚後の夫婦の愛情までは誰も語らない。
夫婦になってから始まる愛情。
そういうものを司つくで描いてみたらどうなるか?
それを私の独特の妄想世界で展開しております。


というわけで「夫婦恋愛」の概要です。

今作品は分岐ものではなく、完全オリジナルストーリーとなっております。
つまり漫画「花より男子」の設定をある程度踏襲していますが、話としては「花男」に依っておりません。
キャラクターとその背景を拝借した全く別のお話です。
でも先に伝えちゃいますが、ハッピーエンドになりますのでご安心を。

司とつくしは互いを知らない設定です。
実は密かに知ってましたーってこともないです。
それと、今作品のテイストとしては、江戸時代の大奥やイギリスのドラマ「ダウントン・アビー」の影響を受けています。
道明寺家には様々なシキタリ(仕来り/為来り)があり、そのシキタリに2人が振り回されるのもまた読みどころです。

それと、これが最大の特徴かもしれませんが、司がちょっと違います。
なんと品行方正、若い時に暴れたり闇を背負ったりしてない司です。
道明寺家の後継者として真面目にやってきたという設定になっています。
nona史上最高にピュアな司かもしれません。
ピュアなんですが、でも司は司でもあります(どっちやねん^^;)

それと今作品には偀(すぐる:やっぱり偀のままにします。)と楓も登場しますが、今回は「御クビ」とは違い良い人キャラでの登場です。
戸惑いもあろうかと存じますが、別物と思ってお付き合いください。




そして次にテーマ曲です。
私にはこれがとても重要なのですが、「夫婦恋愛」は「御クビ」を書いている最中の昨年6月半ば、続話が浮かばない停滞期に思いついて書き始めたもので、そのために当初はテーマ曲がありませんでした。

そのことが「夫婦恋愛」を正式に書き始めた11月当初に私を苦しめまして、なかなか筆が進みませんでした。
そんな中、記事でも書いたB’zにいい曲がありました!


OCEAN/B’z
*クリックするとYouTubeが開きます。


穏やかなバラードナンバーなんですが、歌詞がいい!
この物語が完結した時の二人の心情を的確に表しています。
「「夫婦恋愛」というドラマで毎回流れるエンディング曲」みたいな位置づけでお聴きいただくのがオススメです。

それとLady gagaがエルトン・ジョンをカバーしたこちら。


Your Song/Lady gaga カバー
*クリックするとYouTubeが開きます。


説明などいらないあまりにも有名な曲ですが、エルトン・ジョンの原曲よりLady gagaのカバーがグッときました。
これは男性目線の歌で、私の中で主に司の心情を表しています。
どちらも一途に相手を想う曲で、その純朴さが心地よく、今作品の二人の関係をよく表していると思います。

この2曲に象徴されるように、今作品はとても穏やかな雰囲気です。
ともすれば盛り上がりに欠けるかも。
しかし私の作品としては珍しく複数のオリジナルキャラクターが登場し、二人を温かく支えます。
それらのキャラも楽しんでいただけたら嬉しいです。


最後に、この作品の季節は主に夏です。
本当は公開する季節を選びたかったのですが、このあとに控える作品郡の性質上、楽・哀・楽・哀でお届けしたかったので真冬の公開になりました。
また、いつも通り一話の長短が極端です。
それは私の感覚でキリがいいところで区切っているためで、「まだあるの?」という長い日もあれば、「もう終わり!?」という短い日もありますことを先にお詫び致します。



それでは、明日から始めます。
またよろしくお願いします!(^^)v

              nona









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2020.01.31




いま、あたしはお風呂から上がり、体を拭いて髪を乾かし、純白の家紋入り羽二重の寝衣を着付けられ、寝化粧を施されている。
普段なら寝るだけなのに化粧?

あたしは今日、結婚した。
だから今夜は初夜だ。


「奥様、少しお顎をお上げください。」


床入りの支度を施してくれているのは私の侍女になった島田さん。
侍女ってのは私専属の使用人さん。
50歳を超えたばかりの痩せ型の女性で、ピチッと引っ詰めたお団子ヘアはキッチリとした人柄を物語っていて、表情豊かとは言い難い。
ってか、専属の使用人てそもそも必要なの?
化粧くらい自分でできるけどなぁ。

・・・いけない、いけない。
今までの常識は通じない世界なんだから、いちいち疑問に思ってたら身がもたないよ。

だってここは日本中にその名を轟かせている、大富豪のお邸なんだから。




->->->->->->->->->->->->->->
  



それは遡ること3ヶ月前のことだった。




「牧野くん、ちょっと。」


あたしが勤務するのは創業70年という奥田商事の秘書課だ。
奥田商事は元は羊毛を扱う貿易会社だったけど、1970年代になって手芸の材料全般を取り扱うようになり、今では全国に手芸専門の店舗を持つ商社になった。
とは言っても資本金一億はそう大企業という訳でもない。
秘書も社長と専務に各1人と、常務以下のその他の役員をまとめて仕切る2人の4人体制だし。


「失礼します。」


あたしの担当はその他の役員。
だけど、今、呼び出された先には社長以下の役員が勢ぞろいしていた。
役員フロアの会議室は異様な空気。
どしたの?


「牧野くん、まあ、座ってください。」


奥田社長は腰の低い柔和な人だ。
その社長に手招きされて、まるで面接でもされるみたいに空いたスペースにポツンと置かれた椅子に腰掛けた。
なに?
あたし、なんかやらかした?


「今日、呼び出したのは君に是非とも依頼したい案件があってね。」


本題に入ったのは専務。
社長の弟さんで、こちらは切れ味鋭いナイフのようなキツイ目をした男性だ。


「私でお役に立てることならば。」


弾劾裁判じゃなかったことに内心、安堵の息を吐きながら、あたしは軽く頭を下げた。


「まず最初に、結論から話そう。」


専務が話を続けた。


「君を、道明寺グループが今後100年の計と打ち出した大プロジェクトのチーム候補生として、我が社から推薦することにした。」


・・・・・・


「は?」


ごめん、何つった?


「フフ、驚くのも無理はない。我が社が2年前に道明寺の傘下に入ったことは知ってるね?」

「はい。そのおかげで頭打ちだった売り上げが格段に伸びました。」


奥田商事は2年前に買収により道明寺グループの傘下に入った。
現代の趣味の多様化に伴い、手芸の種類も多岐にわたり、材料も膨大になった。
大量の在庫を抱える中、それを実店舗販売と自社HPの細々としたネット販売だけで捌いていたため売り上げは伸び悩み、ついには赤字に転じていた。
その時、道明寺HDから買収の話が持ち上がったのだ。
道明寺ほどの大企業がなんでうちなんか…と社長は呟いたが、役員会議の満場一致でグループ会社として再生する道が決定した。

最初は不安ばかりだった社内も、いざ始まってみると現在の体制はそのままに、道明寺グループの各専門企業の力を借りて今では1分間の手芸動画アプリや今流行りの15秒動画サイトへの投稿、大々的なネット販売網を構築し、純利益が最盛期に迫る勢いまで回復した。

大学を卒業して入社1年目で迎えた一大変革に、あたしも昼夜を問わず役員たちと共に走り回ったっけ。
各分野の専門スタッフとの打ち合わせに同席させてもらって、彼らの有能さに舌を巻いて、すっごく勉強になって充実した時期だった。

でも、その道明寺グループが今後100年の計!?
どれだけすごいプロジェクトなんだろう。


「その道明寺グループの全グループ会社本社から各1名、候補生を推薦せよとのお達しなんだ。」


ほへー!
全グループ会社!
1名ずつでもすごい数だろうな。


「そうだったんですか。水面下でそんなことが。」

「ああ。そこで我が奥田商事からは牧野つくしくん、君を推薦することにした。」


あたしはそこでやっと事の次第が理解できて面食らった。


「あの…それはもう身に余る光栄なのですが、私は一介の秘書に過ぎません。そんな重要なプロジェクトの候補生ならば、もっと他の適任者がいらっしゃるんじゃないでしょうか。」


そうだよ。
営業成績1位の田辺さんとか、企画でヒットを飛ばし続けてる仁科さんとか。
あたしが選ばれたって何すんのよ!?


「それが、候補生には条件があってね。」

「条件ですか…」

「第一に女性であること。」


女性限定!?
じゃ、田辺さんはダメか。


「第二に25歳以下であること。」


25歳!?
若くない!?
だから仁科さんは外されたのか。
彼女、27だもんね。


「そして第三に、未婚であること。」


ちょっと、ちょっと!
さっきからなんなのよ、その条件は。
まるでセクハラじゃん。


「そうなると、我が社から推薦できる人間は限られてくる。」

「はぁ…」

「商品部の久保くん、システム保全課の町田くん、そして秘書課の牧野くんだ。」


で、その中で何であたし?
商品管理及び手配の知識ある人より、IT系の学部を卒業してシステムに精通してる人より、何であたしなの?


「その中で君に決定した決め手は…」

「ゴクリ…決め手は…?」


あたしはやや身を乗り出した。


「代わりの人間を用意しやすかったからだ。」


ガクーーッ!!

それは秘書なら代わりはいくらでもいるってことかいっ!
秘書って一言で言っても相性もあるんだから、そんな簡単には見つかんないんだからね!
しかも複数の役員にひとりの秘書なんていう激務をこなせるのは…


「そういうわけで、来週から君の代わりを務めてくれる人間ももう見つかった。」


見つかったんかいっ!
オッサン、仕事、早っ!


「…コホン、お言葉ですが、まだ候補生の段階で代わりの人間というのは気が早すぎるのではないでしょうか。」


もしも選ばれたらその時はってことでしょ?
なのにもう代わりの人間!?


「候補生の選定には最長1ヶ月かかるそうだからね。知っての通り秘書課は万年人手不足だ。例え1週間でも君が抜ける穴は大きい。悪く思わんでくれ。」


選定に1ヶ月!?
ど、どんな試験が待ってるの??


「左様でございましたか。それはお気遣いありがとうございます。」

「で、どうだね? この推薦、受けてくれるね? これこそ君にしかできない重要な仕事だよ。」

「・・・・・」


そんな唐突に職場を追い出される話をされて、「はーい」なんて二つ返事できるわけないでしょ。
それに、ただの候補生でしょ?
何人採用するのか知らないけど、グループの全社からっていうと、軽く見積もって1000人はいるんじゃない?
落ちるわよ。
もうほぼ落ちるの決定よ。
そのとき、あたしが帰る場所は確保されてんの?


「あの、メンバーの選から漏れた場合にはまたここへ戻って来られるんですよね?」

「ああ、そのことなら心配ない。もし戻ってきたら君にはそれ相応のポストを用意してある。」

「ポスト?」

「社長秘書をやってもらうから。」

「社長秘書!?」

「ああ、だから大船に乗った気持ちで挑んできてもらいたい。」


秘書の花形はやはりその企業のトップの秘書を張ること。
一人の役員に秘書が複数いる大企業ならさらに第一秘書が秘書の中のトップだわ。
うちみたいなマンツーマンなら社長秘書ってだけでかなりの箔がつく。
いつかはって狙ってたけど、こんなに早くそのチャンスが回ってくるなんて。
よしっ!


「わかりましたっ! 社長秘書を任せていただけるんでしたら不肖・牧野つくし、奥田商事の代表として精一杯戦ってまいります!」

「もしもプロジェクトメンバーに選ばれたらお祝い金を出すからね。」


奥田社長がおっとりとした口調で付け加えた。


「お祝い金ですか?」

「うん。名誉なことだから100万の特別ボーナスだ。」

「ひゃっひゃっひゃっ、100万!? わかりましたぁ!! 必ずやメンバーの座を勝ち取ります!」


あたしはさっき抱いた不快さなどすっかり忘れ、ただ目の前の人参に夢中になった。


翌週には中途採用された秘書さんに引き継ぎをして業務を切り上げ、面接から10日後、いよいよ候補生選定試験に臨むため、あたしは道明寺HD日本本社に乗り込んだ。









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2020.02.01




推薦告知から10日。
あたしは朝から腰が痛くなるくらいにのけぞり、雲に頭を突っ込んだビルを見上げていた。


「ほへー……何度来ても見慣れないビルよねぇ。」


2年前には何度も通った道明寺日本本社ビルに来るのは1年半ぶりだった。

候補者にはぞれぞれ番号が振られ、IDカードが事前に配られている。
1〜100番は9:00〜9:30まで、101〜200までは9:30〜10:00まで、と、100番ずつ受付時間が決まっている。

あたしの番号は253番。
受付時間は10:00〜10:30だ。
現在時刻は9:50。
よし、大丈夫。
きっともう戦いは始まってる。
ライバルがうようよいる道明寺本社ビルのエントランスをなるべく堂々と突っ切った。







受付を済ませ、200番代の候補者の控え室に入るとズラリと並べられた長机の端と端に番号が貼り付けてある。
自分の番号の席でじっと待っていると、静かな廊下から切羽詰まった声が聞こえてきた。


「あの、遅れたのはすみませんでした。でも途中で電車が遅延を起こしまして。あのっ、遅延証明書もあります! お願いします! 参加させてください!」


どうやら受付時間に間に合わなかった候補生が受付担当者に直訴しているようだ。


「申し訳ございません。200番代の受付は終了いたしました。例外は一切ありません。どうぞお気をつけてお帰りください。」


「そんな! 電車が止まったんですよ!? 不可抗力なんですよ!? 仕方なかったんです。」

「でも200番代の方であなた以外に遅れた方はいらっしゃいません。それに、運も実力です。実力のない方はお引き取りいただくのが選定です。」


30代と思しき受付男性の声が耳に残った。
その時、控室にいた一人の候補者が立ち上がって部屋を出て行ったかと思うと、その人のものと思われる声も聞こえてきた。


「あの、差し出がましいようですがちょっと厳しすぎるんじゃないでしょうか。この方のせいじゃないですし、イレギュラーな事態というものもあるのではないかと思うのですが。もう一度、チャンスを差し上げてくださいませんか?」

「あ…ありがとうございます……どうか、お願いします!」


遅刻した女性は庇ってくれた女性にお礼を言った後、最後にもう一度受付担当者に頭を下げたのだろう。
このまま救済されるかと思われたその時、受付担当者の冷淡な声が響いた。


「それでは、あなたもいっしょにお帰りください。」

「「えっ!?」」

「当方のルールに従えないなら帰っていただいて結構です。どうぞ、お二人揃ってお引取りを。」

「ちょっと、あのっ私もですか!?」


今度は庇った女性の切羽詰まった声が届いた。


「はい。もう結構です。ご足労いただいてありがとうございました。……すみません! この方達をエントラスにお送りしてください!」


受付担当者は最後は離れたところに声をかけた。
開け放たれたドアの前を通ったのは黒いスーツを着た体格のいい男性が二人。


「ちょっ、ちょっと!」

「離してください!」

「手荒な真似はいたしません。どうぞ我々の指示に従ってください。」


どうやら待機していた警備担当者?に強制的に促され、遅刻した女性とその女性を庇った女性はフロアを出て行った。

あ、危なかったぁ。
もう少しであたしが立ち上がるところだった。
だって、電車が遅れたんでしょ?
仕方ないじゃん。
どうしろっちゅうのよ。
……でもそれが「運も実力のうち」ってやつか。
ヒエェェーー・・道明寺HD恐るべし。
気が抜けないなぁ。





受付番号は900番代まであった。
受付終了予定は午後2時。
それまで朝から集められた候補者は昼食もとらずにずっと待機させられていた。
控室にはウォーターサーバーのみが置かれ、水分補給だけはいつでもできる。
お手洗いにも好きに行ける

だがつくしは、自分以外全員ライバルという特異な環境では神経がすり減っていくのを感じていた。

はぁ、お腹すいたな。
朝ごはん食べたのが7時。
今、午後1時過ぎ。
いつもならとっくにお昼を食べている。
食べられないときは給湯室で軽くクッキー1枚つまむだけでも神経が和らぐものなのに。

その時、部屋の中で悲鳴が上がった。
振り向くと、一人の女性が倒れていて、周囲にいた女性たちが駆け寄っていた。
つくしは立ち上がり、廊下に出た。


「すみません! 誰か来てください!お一人、倒れました!」


すぐに救護班が来た。
貧血とのことで、そのまま搬送された。

つくしは堪らず、近くにいた40代と思しきの女性担当者に尋ねた。


「あの、待ち時間が長時間になっていて皆さん、お疲れなのですが、受付終了後は昼食の時間がありますか?」

「ありません。14時からは説明会を行います。」

「えっ!? でもそれじゃ、朝一番からいらしている方は5時間も待機してるんですよ? それがまだ続くんですか?」

「253番さん、プロジェクトが始まれば日中は何も口にできないということもあり得ます。この程度で根を上げるのならば、今この場でお帰りください。」

「もしかして…先ほど倒れた方は…」

「失格です。」

「…マジですか……」


ギロリ、と女性担当者はつくしを睨んだ。


「253番さん、言葉遣いも選定対象ですよ。気を抜かないように。」


それだけ言うと持ち場に帰って行った。


「…マジか……」


つくしの呟きだけが残った。








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2020.02.02




やっと全員の受付が終わり、各控え室に備え付けられたテレビモニターを通じて説明会が始まった。
最初に画面に現れたのはプロジェクトリーダーを任されたという優しい顔をした50代半ばぐらいの男性だった。


『お集まりの皆様、本日はお忙しいところをありがとうございます。この度のプロジェクトリーダーを仰せつかりました遠山と申します。皆様のように優秀な方の中から我がプロジェクトにふさわしい方を選ばせていただけること、この上ない喜びです。』


遠山さんは深々と頭を下げた。
天下の道明寺HDの、一大プロジェクトを任されたにしては腰の低すぎるリーダーに一瞬、会場全体がざわついた。


『今回のプロジェクトは未来の道明寺の命運を左右する大変に重要なもので、これにはNYにおられるグループ総帥もにわかに御注目なさっておいでです。』


ここでざわつきは意味合いを変え、一層高まった。


『皆様におかれましては、どうか持てる力を存分に発揮いただきまして、背水の陣にて当たっていただきたいと存じます。何卒よろしくお願いいたします。』


最後にもう一度、腰より低く頭を下げると、遠山はフレームアウトした。

そんなにも重要なプロジェクトって一体、何をするんだろう??
そして1000人近いこの候補者の中から何人が選ばれるんだろう??
倍率はいかほど?
でも道明寺本社のメンバーが中心だろうからそう大人数が選ばれるとは思えない。
せいぜい4〜5人、もしかすると1〜2人かもしれない。

次にフレームインしたのは選定委員会委員長を名乗る女性だ。
それは先ほど、つくしが声をかけた女性だった。


『皆さま、長い時間お待ちいただいた方もいらっしゃるでしょう。この建物に入った瞬間から選定は始まっております。現時点で遅刻された方3名、ルールに異を唱えた方1名、そして先ほど体調を崩された方1名、計5名の方が落選されました。今後は本格的な選定試験の連続となります。緊張感を持って臨んでください。』

「「「はい! 」」」


若い女性の高らかな声がフロアに響いた。
つくしも背筋を伸ばしてその声に倣った。
正直、プロジェクト自体はどうでも良かったが100万もしくは社長秘書がかかっている。
採用は儚い夢だとしても、少しでも爪痕を残して奥田商事に戻りたかった。


『では早速、本日、第一次選考を行います。最初はペーパーテストです。』


ザワッ

そこここから囁きが聞こえた。


「よしっ! ペーパーは楽勝だわ!」

「えー、どうしよう〜、勉強苦手だったんだよねぇ」


候補者の条件は、

一、女性であること
二、25歳以下であること
三、未婚であること

であって学歴は条件には入っていない。
だから様々な職種から様々な経歴を持った女性が集められていた。

つくしは国立大学の英文学科を出ており、英語には自信があった。

就職試験みたいなのかな?
捻ったのや、トンチみたいな問題が出るの?
それとも小論文とか?
ひたすら計算だったりして。
英語の問題多めでありますように!

控室に試験監督がぞろぞろと入ってきて、室内の候補生に筆記具が配られた。


「携帯電話の電源はお切りください。5分後に問題を配ります。1時間でどれだけの問題をどれだけ正確に解けるかを問います。」


うわっ
やっぱり計算かもしれない。
ひたすら100マス計算とかだったら終わる・・・

5分後に配られたのはA4サイズのドリルのように閉じられた冊子だった。


「始め!」


バッと一斉に問題の表紙が開かれた。
その時、部屋中に息をのむ音が充満した。


「なに…これ…」


それは間違い探し問題だった。
100ページ、ひたすら2枚の絵が描かれて、片側は一部が違っている。
その間違いを探して丸で囲むというものだ。
ひとつの絵が何箇所違っているのかはわからない。
1個かもしれないし、5個かもしれなかった。

しめた!とつくしは思った。

これ、得意だ!
万年平社員のパパのおかげで休みはどこにも連れて行ってもらえなかった。
だからそういう日はクロスワードや間違い探しゲームをして遊んでた。
いつのまにか“ 間違い探しのプロ ” とママに言われてたんだっけ。
よっしゃー!

つくしは集中して次々とページを繰っていった。




->->->->->->->->->->->->->->




「奥様、あと10分ほどで御渡りでございます。」


島田さんの呼びかけにあたしはハッと意識を今に戻した。

“ 御渡り ” とは夫が妻の寝室を訪ねることを言うらしい。
この家では夫婦は別棟に住むことになっている。
夫は南棟、妻は北棟だ。
なんでも昔からの慣習だとか。
いやいや、何世紀前のことですか?
21世紀の現代において、こんな大奥みたいなことがまだ続けられていることに驚きを隠せなかった。

そういうわけで、夫が妻と過ごしたいときだけ “ 御渡り ” が行われる。
事前に知らされて、妻は準備をして待つらしい。
入浴で身を清め、身支度をして寝化粧をする。
部屋は洋風の作りなのに、寝衣は着物・・・
このチグハグ感。
ま、透け透け下着を着ろと言われるよりはいいか。


「奥様、くれぐれも粗相のないように。今夜を限りに二度と御渡りがないということもあり得ますからね。」


と、言われても今のところ相手の顔と名前しか知らないこの状況で、何が粗相になるのか見当もつかない。
ハァ、どうしてこうなったんだっけ?









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2020.02.03




第一次選考を無事に通過したつくしは今朝はある場所に向かっていた。

英徳大学付属病院
ここで第二次選考が行われる。

英徳といえば泣く子も黙る日本一のお金持ち学校。
幼稚舎から大学までのエスカレーター式で、外部入学者は高校からしか採用してない。
その医学部の付属病院だ。

都内の一等地にある敷地は広く、その建物は低層階の贅沢な作りになっていて、外観は赤煉瓦造りの瀟洒なものだ。
エントランスで受付を済ませると、5階のホールに案内された。
先日、第一次選考では900人以上いた候補者が、ここでは100名ほどになっている。

つくしはブルリと身震いがした。
早くも800名近い人間が振り落とされた。
自分が100人に残ったことが奇跡に思えた。
貧しかったことがこんなところで助けになるなんて、人生に無駄はないのだと改めて思った。

ホールに入り、自分の番号札の貼られた椅子に腰掛けた。
定刻になり、今日は医師や看護師がぞろぞろと入ってきて、一人、事務長らしき男性がマイクを持った。


「お集まりの候補生の皆様、この度は第一次選考通過おめでとうございます。本日は第二次選考でございます。第二次選考はメディカルチェックです。」


シーン…と、今回は誰も動揺を見せない。
今日の選考がメディカルチェックだということは事前に通告があり、昨夜から食事制限されているからだ。
その後、事務長は医師団と看護師団を紹介し、それぞれが挨拶をした。


「それでは今から10分間、お手元のタブレットで問診票の記入をお願いします。その後5名ずつ番号をお呼びしますので別室にお移りください。」


問診票は生活習慣についての項目やアレルギーについての項目の他に、月経の周期や性交渉の経験の有無などの項目もあった。


「あの、すみません!」


ひとりの候補生が挙手をして立ち上がった。
事務長がもう一度マイクを握った。


「はい、いかがなさいましたか?」
「この問診票、おかしくないですか? 月経の周期や性交渉の有無って婦人科くらいでしか見たことがありません。今日のメディカルチェックの意図はなんですか? ご返答によってはセクシャルハラスメントに該当すると考えています。」


随分とはっきりと物を言う女性だな、とつくしは思った。
事務長から交代してマイクの前に立ったのはホールの後方に控えていた選考委員会委員長の女性だった。


「失礼します。委員長の浅尾です。今回のメディカルチェックの意図、及び、メディカルチェックで第二次選考としている点についてでございますが、皆さんが候補生となっているプロジェクトは大変に重要なものであることは繰り返し述べてまいりました。重要度が高ければ高いほど激務が予想されます。しかし、コンプライアンス上、途中で交代や辞退は許されないメンバーとなるのです。何よりも健康が第一です。そのためには女性特有の疾病についてもしっかりと見つけ出す必要があり、今回のメディカルチェックには婦人科での超音波検査も含まれております。ご納得いただけないようならば、ご退室いただいて構いません。」


それだけ言うと委員長はマイクを置いた。
すると、数人の候補生が立ち上がり、ホールを出て行った。
中には「バカにしてるわ!」と捨て台詞を吐いていく者もいた。


「では、残った皆さんは同意していただけたと理解させていただきます。」


つくしはどうでもよかった。
誰に公表するわけでもない問診票。
見るのは医師と看護師だけだろう。
タダで詳しい婦人科検診を受けられるならラッキーだ。
性交渉の経験欄は『無』に丸をした。




->->->->->->->->->->->->->->




コンコン!


ノックの響きが聞こえたと同時に島田が宣言した。


「旦那様の御渡りです。」


つくしの寝室のドアが開いた。
が、つくしがそちらを見ることはできない。
四隅に天井まで伸びる柱付きの天蓋ベッド。
四方のうち三方はオフホワイトのシフォンカーテンが降ろされ、夫が現れる左側のカーテンのみが開いている。
つくしは島田に指導された通りにベッドの上で正座し、手をついて頭を下げて待っていた。

人が入ってきた気配がある。
絨毯を進む足音がベッドの横まで近づいて止まった。
つくしの心臓は胸の中で踊るように早鐘を打っていた。


「顔を上げろ。」


低い声が部屋に響き、つくしの肩がビクッと揺れた。

あの時、ちょっと見栄でも張って性交渉の経験は『有』に印をつけていれば、こんなことにはならなかったのだろうかと思いながらつくしは顔を上げた。
そうして視線も上げた先に立っていたのは道明寺財閥後継者、道明寺司その人だった。









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2020.02.04
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