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スピンオフでは本編とは直接関係のない2人の日常をお届けしようと思います。
でもたまーに本編に入れられなかった重要シーンもあるかも!?
不定期でのお届けであることをご了承ください。







朝食の準備ができ、食事の前に着替えた司が脱衣所から出てきた。
と、途端に司の香水の香りが広がった。

そう言えば、昨夜もこの香りがしてた。
でもあの時はもっと仄かで、こんなに強くなかった。
ってか待って。
匂いがきつすぎ。
そっか、付けたてだからだ。
それに部屋も狭いし。


「道明寺、」

「あ?」


居間に入ろうとする司を呼び止めた。


「あのさ、香水、ちょっと抑えてくれないかな?」


つくしの言葉に、司は自分の匂いをクンクンと嗅いだ。


「キツイか?」

「うーん…付けたてだからだと思うけど、うち狭いから、香りが充満しちゃうんだよね。」

「この香り、嫌いか?」


不安げにかけられた問いに、つくしは慌てて答えた。


「え!? 好きだよ! いい香りだと思うよ。あんたによく似合ってる。」


その言葉を聞いて司の顔がカーッと赤くなった。


「道明寺、顔、赤いけど…」

「う、うるせぇ! 好きならいいじゃねぇか!」

「でもこの狭い部屋にはちょっと強いよ。落としてきて。」


つくしの言葉に憮然とした表情を浮かべた司は一歩つくしに近づいた。


「な、なによ。」


そしてつくしの両手をつかみ引き寄せた。


「なにするのよ!?」


司はつくしの手首で自分の胸元を撫でた。


「離して!」


つくしは掴まれた手を振りほどいた。


「これでちょっとは落ちたんじゃね?」

「なっ!? 落ちたんじゃなくて、あたしに移したんでしょ!」


つくしは自分の手首の香りを嗅いだ。


「今日はお前も同じ香りな。」

「っだーっ! もう!」


酔いそうになる司の香りがつくしに移った。
それはつくし自身の香りと混ざり合い、この日一日、つくしを包み込んだ。









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2019.06.05




服を脱ぎ、風呂場に足を踏み入れた司は浴槽に目を留め固まった。


「…ゴミが浮いてる…」


風呂場を出てもう一度服を着ると、脱衣所を出た。






「おい、」


居間でスマホを見ていたつくしは、司の呼びかけに顔を上げた。


「なに?」

「風呂場がおかしいぞ。」

「お風呂場が?」


つくしも立ち上がり、司と共に風呂場に入った。


「どこが?」

「どこが? おかしいだろうが。ゴミが浮いてんだぞ。」


つくしの目に入ったのは、湯船に浮いている2本のペットボトルだ。


「ああ、あれはゴミじゃないわよ。」

「お前、目がおかしいんじゃないのか? どう見てもゴミだろ。」


つくしは裸足のまま浴室に入り、湯船に浮いているペットボトルを手に取った。


「これは、節水のためにこうして浮かべてんの。」

「節水?」

「2ℓの空のペットボトルに少しだけ水を入れて、こうして湯船に沈むように入れておけば水面が上がるのよ。それだけお湯の節約になるの。」


ハァァ〜、と、司は溜め息をついて額を抱えた。


「つまり、俺にこのゴミと一緒に風呂に入れって?」

「そうそう。」

「・・・・もういい。シャワーで済ます。」

「そうやってあんたが一日に何度もシャワーを浴びるのも節水しなきゃなんない原因なんだからね! ちょっとは控えてよ。」

「シャワーぐらい自由に浴びさせろ! じゃないと困るのはお前だぞ!」

「はぁ?? なんであたしが困るのよ!」

「それは!・・・・とにかくもういい。入るから出て行け。」

「あんたが呼んだんでしょ! ったく。お湯に浸からないなら蓋しといてね。」

「は? 蓋?」

「あー、お風呂に蓋があることも初めてか。」


ブツブツ言いながら、つくしは蓋の説明を始めた。


「こうしておけば冷めないから。」

「庶民の知恵、いろいろ深けぇな。」

「でしょ? じゃ、ごゆっくり。でも節水!! よろしく〜。」


つくしは司を残して居間に戻っていった。


「・・・誰のせいでシャワーの回数が増えてると思ってんだよ・・」


司はショートパンツ姿のつくしの後ろ姿に呟いた。









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2019.06.08




司がつくしを迎えに行って、いっしょに帰ってきた。


「はぁ〜、疲れたぁ」

「飯、炊いといたぞ。」

「あっそうだ! どれどれ。」


つくしは炊飯器の蓋を開けた。
そこには数時間前に炊き上がっただろうご飯が平坦に沈み込んでいた。
しかし粒の様子や立ち昇る香りが司のミッションの成功を告げていた。


「すごいっ! 本当に炊けてる。」

「フン! 当たり前だろ。その程度のこと楽勝だっつの。」


隣に立って一緒に炊飯器を覗き込んでいた司は得意げだ。


「かもしれないけど感動。さ、おかず作らなきゃ。」


司もつくしの背後に立って、つくしが料理をする様子を眺めた。


「疲れたでしょ? 座ってていいよ。」

「座ってたってすることねぇし。料理も覚えなきゃいつまでも皿洗いだろ。」

「ま、そっか。」


本当はつくしのそばに纏わりついていたかった。
そうしているうちに料理ができた。
ご飯もよそって居間に運ぶ。


「いただきます。」


つくしがご飯を食べる様子をチラリと伺った。
まずは汁物に箸をつけ、次にお茶碗を持ち上げ、司が炊いたご飯に手をつけた。


「美味しい!」


つくしが向かい側に座る司に顔を上げた。


「初めてひとりで炊いたのに完璧じゃん! さっすがー!」

「だから当たり前だっつったろ。黙って食え。」

「うん…でも、ご飯炊いといてもらえるだけですっごい助かる。ありがと!」


つくしは司にニッコリと笑って見せた。
ふいっと司は顔を背ける。

「ありがとう」なんて言われたことがあったか?
しかもあんな素直な笑顔付きで。
初めてかもしんねぇな。


「これからお前が仕事の日は炊いといてやるよ。」

「ありがとー。」


つくしに褒められて感謝されて、庶民の暮らしもいいもんだなと司は思った。






…そんな司がつくしの笑顔に照れている頃、つくしは昼間、聞かされたある話を思い出していた。

つくしのいる総務は課長を含め4人で稼働している。
その中の柴山課長と塩田さんの会話だ。
柴山課長は50代の男性で万年総務課長。
塩田さんは40代で、つくしに手取り足取り仕事を教えてくれた面倒見のいい女性だった。


「課長、今日はため息ばかりですよ。」

「ハァ…そうかな。」

「ほらまた! どうしたんですか?」

「妻とちょっとね。」

「喧嘩ですか?」

「喧嘩になんてならないよ。僕が一方的に叱られただけ。」

「課長が? 何したんですか? 若い子とLINEですか?」


柴山はブルブルとかぶりを振った。


「ちがうよ! ただ洗い物が下手って叱られたんだ。」

「家事を手伝ったんですか?」

「妻がね “ もういい加減に主婦業は嫌だ。分担にしよう ” って言うからやり始めたんだけど…ハァ」

「あらあら。頑張ったのにダメ出しされて凹んでるんだ。」

「僕なりに頑張ってるんだけどね。やはり妻には及ばないっていうか。当たり前なんだけど。ハァ…もう嫌になってきた。」


柴山に横目で同情を示してから塩田はつくしにキャスター付きの椅子ごと身を寄せた。


「牧野さん、聞いてた?」


課員の机は一箇所にまとめて隣り合わせている。
聞こえないという方が不自然だ。


「あ…はい、聞こえちゃってます。はは」

「男なんてねぇ、褒めとけば育つから。」

「褒めとけば?」

「そうそう。ちょっとくらいダメなとこがあっても、褒めとけばやる気になってそのうち何でもできるようになるから。牧野さんも結婚したら上手く旦那さんを育てなよ。」

「旦那って育てるものなんですか?」

「当ったり前じゃなぁい。アメとムチの使いようでこっちに都合よく育てるのよ。」

「はぁ…参考にしておきます。」




なるほど、塩田が言っていたのはこのことか、とつくしはチラリと向かいに座る司を見上げながら思った。
これからも「褒めて育てる」方式で司を一人前にしていこうとつくしは密かに心に誓った。








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2019.06.12




いつものように手を繋ぐ。

ん?
んん?
道明寺の手、なんかガサついてない?
もしかして荒れてる?
そっか。今まで家事なんてしたことなかったんだもんね。
洗剤とか水とか、23年の人生で初めてこんなに労働してんだ。
手荒れも初体験か。




お風呂から上がった司の髪を拭きながら、つくしが話しかけた。


「ねぇ、手、荒れてるじゃん。ハンドクリーム塗ったら?」

「あ? 別に荒れてねぇよ。」

「荒れてるって。ガサガサじゃん。労働したことない手だったのに、苦労してるねぇ。」

「……バカにしてんのか。いらねぇよ。」


ハァ、とつくしはため息をつくと髪を拭き終えて立ち上がり、ドレッサーから何やら出してきた。


「じゃさ、手、出して。」

「は? 手? …ん。」


司がテーブルに差し出した手にドレッサーから出してきたハンドクリームを落とした。


「おい! いらねぇつったろ!」

「いいから! 放っておくと酷くなるよ。」


つくしは司の手にクリームを塗り込んでいった。
手の甲、掌、指の先から根元にかけて。


ゴクン…


司はなんだか、すごくイヤらしい気分になり始めた。
つくしの手が自分の手を撫でさすっている。


「はい、じゃそっちの手も。」

「………」


司は黙って差し出した。
同じようにつくしがクリームを塗ってくれる。
それは掌をマッサージをするように塗り込まれていく。
柔らかいつくしの手が司の指の一本一本を包み込み、上下に行き来する様子を司はじっと見ていた。


…ヤベェ…めちゃくちゃエロい……


「もういい。…サンキュ」


そう言うと、司は立ち上がった。


「どこ行くの?」

「シャワー浴びる。」

「はぁぁ?? お風呂からあがったとこだよ!?」

「また入りたくなった。」

「だって、今、クリームも塗ったとこなのに。」


司は返事をせず、そのまままた浴室に入っていった。
たかが手でもマッサージはヤベェな、と思いながら……








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2019.06.15




今夜も司の濡れた髪をタオルドライしながら、つくしは問いかけた。


「髪、伸びたよね? 切らないの?」

「ああ、そういえばそうだな。そろそろか。」

「不思議だったんだけど、この髪はどうやって切るの? 濡らして? 乾いたまま?」

「トップは濡れた状態で大まかに切って乾かして仕上げ。サイドは乾いた状態で、かな。」

「カットされてるとこ見たい。」

「あ? 何のために?」

「てるてる坊主の道明寺が見たい。」


伸びていることに気づいた時から抱いていた野望だった。


「バカか? 見せ物じゃねぇよ。」

「あ、じゃあさ、あたしも切るからお互い様ってことで。」

「…ふーん。じゃ、予約しとくわ。」





1週間後、共に美容室に向かった。


「え、青山にあんの?」

「ああ、俺の髪に触れることを許してる美容師はこいつだけだからな。」

「へー。」


つくしは、司が通うような美容室なら青山の中心にどデカイ店舗を構える派手なサロンだろうと予想したが、訪れたそこは5階建てのマンションの最上階の一室で、看板などは出ていない。


「うわー、なにここ!?」


中に入ると廊下の先に30畳はある真っ白なリビングが現れた。
正面は全面窓で、青山の街並みが一望できる。
窓に向かって2席だけスタイリングチェアと鏡が置かれていた。
シンプルな設えにつくしが周囲を見回していると、1組の男女が入ってきた。

ひとりはスリムな体型に着慣れた風合いのTシャツとカラーパンツ、スニーカーを履き、短髪に不精気味に整えられたヒゲをたくわえた40代くらいの男性だ。
女性の方はハニーブラウンのセミロングの髪をゆったりとフィッシュボーンに編み、華奢な体型にゆったりした麻素材の抜け感のあるシャツとスカンツを着こなし、柔和な表情をした30代くらいの美人だった。


「こんにちは。司さん、ここは久しぶりですよね。…こちらが一緒にご予約いただいた? もしかして彼女?」

「ちっ違います! はじめまして。同僚の牧野つくしです。今日はよろしくお願いします。」


つくしは頭を下げて挨拶をした。


「ふーん、なるほどね…。はじめまして。真田です。牧野さんは妻が担当させてもらいますね。」

「はじめまして。香苗です。じゃ、牧野さんはまずはカウンセリングからいいですか?」

「はい。」


つくしは別室に案内された。
真田はつくしの姿を目で追う司に声をかけた。


「NYに呼ばれないと思ったら、帰国されていたんですね。」

「やっとな。」


真田は司をシャンプーブースに案内した。


「6年ぶりに日本でご予約いただいて、昔、5時間かけてストレートパーマをかけたのを思い出しました。」

「フッ、そんなこともあったか。ガキだったな。」

「いえいえ、可愛いところもおありなんだな、と嬉しくなったのを覚えてますよ。彼女のためでしょ?」

「…だったか」


シャンプーを終えて濡れた髪のままリビングに戻り、スタイリングチェアに腰掛けてケープを掛けられた。


「あー!」


背後からつくしの声が響いた。


「本当に道明寺でもケープ掛けるんだ! てるてる坊主になってる! ウケる〜〜! 写真、撮っていい?」


つくしが司の横に来てスマホを構えた。


「バーカ。見せもんじゃねぇつっただろ。」


司はそうはさせまいと手を開いてつくしのスマホにかざした。
その手をつくしが何も考えずに指を絡ませて握ってスマホの画面から排除し、司が一瞬、動揺した隙にカシャッとその姿を収めた。


「テメェ…」

「ほら、せっかくなんだからピースでもして。」

「するか!」

「あはは!」


真田は、こりゃ太陽みたいな娘さんだな、と笑顔のつくしを眺めた。
6年前、この道明寺司をその気にさせたのはどんな美人なのかと思っていたが、そこらの美人よりも光輝いている。
司のカリスマ的なオーラもすごいが、つくしから泉のように湧き出る生命力溢れるオーラも司に負けず劣らず他を圧倒していた。
ヘアメイクアップアーティストとして世界のコレクションに参加した経験がある真田でもここまで明るいオーラを持つ女性にはお目にかかったことがなかった。

その女性が司に媚びるでもなく、へつらうでもなく、ただの男として対峙している。
司の立場で彼女がどれだけ心安らげる相手なのか真田にはよくわかった。
と同時に、この道明寺司をもってしても未だモノにできていない現状に、ある意味でつくしに賛辞を送り、そして司には密かにエールを送った。




その後、司のスタイリングの様子を散々チャチャを入れながら観察したつくしに司からのお返しが待っていた。


「前髪、あと2ミリカットしろ。サイドはレイヤーで仕上げたら後ろは長さを変えないで透くだけにしてくれ。」

「あたしの髪だっての! 道明寺、うるさいっ!」


司からの細かい注文がつき、通常1時間もあれば終わるカットが2時間もかかった。









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2019.06.19
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