FC2ブログ
★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★

「東京初夜物語」は「ハウスキーパー」の続きの物語です。
あのジレジレはなんだったのか!?ってくらい、とにかく初夜を迎えたい坊ちゃんのガルガル記になっております。
ご容赦ください。

未読の方は、先に「ハウスキーパー」をお読み下さい。

★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★








ここ数ヶ月、俺の部屋に通ってきていたハウスキーパーが牧野だとわかり、やっと再会できて俺はプロポーズをした。
俺にはやっぱりこいつしかいないから。

なんだかんだとグダグダ言っていた牧野を説き伏せて30分。
泣いていた牧野はやっと落ち着いた。


「大丈夫か?」

「ん。」

「じゃ、行くぞ。」

「え! 本気?」

「まだわからないのか? 本気だ。俺たちは結婚する。先にお前の両親に挨拶だ。」


立ち上がろうとしたらグッと引っ張られて俺はまたベッドに座わりこんだ。


「じゃ、ちゃんと言う。」

「何をだ?」


隣に座る牧野をじっと見つめていると、顔を赤くしたり青くしたり百面相している。


「どうした?」


すると牧野は俺を睨みつけた。
その瞳は8年前に俺に宣戦布告した時の決意のこもった瞳だった。


「あ、あたしも道明寺が好きだよ!」


!!!


「お、おまっ、喧嘩売るみたいに告白するな!」


なんて、つい俺もケンカ腰で答えちまったが、まさか言われると思わなかった。
じわじわと実感がこみ上げる。
8年越しの恋、2度同じ女に惚れた恋が実った瞬間だった。
俺は堪らず牧野をベッドに押し倒してまたキスをした。


「んんっ!ちょっと!んーー!!」

「俺もお前が大好きだ。役所行く前に、一回、愛を深めるか。」


俺は牧野のポロシャツの裾から手を入れて、その肌を撫でた。
極上の手触り。
高校時代、触りたくてたまらなかった牧野の身体に8年の時を超えて触れていると思うと、それだけでゾクゾクとした興奮が駆け上がってくる。
早くこいつを喰いたい。


「こらっ! 待て待て待て!!」

「待てない。お前が欲しい。愛してる。」

「無理無理無理!!! 無理だから!!」

「先に風呂入るか?」

「そういうことじゃない!! 無理なの!」

「なんだ? 女の日か?」

「じゃなくて、その、…初めてだから…

「あ? なんつった?」

「したことないからっ! 初めてなのっ! だからこんなのやだっ!!」


牧野は今日最高に真っ赤な顔でそう言い放つと、枕を引き寄せて顔を隠した。

したことない?
   なにを?
初めて?
   なにが?

・・・まさか

俺は牧野から飛び退いた。
それは自分が覆いかぶさっていた女が尊いと気づいたから。


「処女、か?」


枕から目だけを出した牧野は眉がハの字になっていた。


「ほら、呆れてる。25にもなって処女とか、面倒な女とか思ってる。」


呆れる?
面倒?
どっからそんな発想になるんだよ。
いま、俺が感じてる喜びはなんて表現したら伝わる?
いや、でも待て。


「お前、あの時、類と同じ部屋だったよな…」

「え? 何?」

「だから、滋の別荘で…」


あの時ほど人生で冷静だったことはない。
滋が、牧野が湯でのぼせてるって駆け込んで来て、考えるより先に体が動いて。
そしたら廊下の先から類が裸の牧野を抱きかかえて歩いて来て……
その手が牧野の素肌に触れてた。

それを見た俺の中に渦巻いた感情は嫉妬とかそんなもんじゃない。
滋を選んだ罰だと思った。
まだ牧野を好きなのに、忘れられないのに、忘れるために他の女に逃げた罰を受けてんだ。
類と牧野が同じ部屋だって聞いて、ああ、こういうことか、牧野を諦めるってのは牧野が他の男に触れられることを受け入れるってことなんだ。
そう思ったらもう無理だった。
居ても立っても居られない。
この場を離れたくて仕方ない。
牧野の傍に行きたくてじっとしていられなかった。

………そうだ、他の女を抱いたときと同じだ。
俺の居場所はここじゃない。
本当はあいつの横にいるはずだったのに。
あいつに触れるのは俺でありたかったのに。


「お前、あの時、類と……」

「!! バッ、バカッ!! 花沢類としてると思ってたわけ!? んなわきゃないでしょっ! しっ、してたのはあんたでしょ!滋さんと! 」

「バカ野郎!! してねーよ!!」


してなかった?
まだ誰もこいつに触れてない?


「お前はやっぱり、俺のために生まれてきた俺の運命の女だな。」

「は?」

「俺がいまどんなに嬉しいか、お前にはわかんねぇんだろうな。」

「嬉しいの?」

「そうと分かれば最高の初夜にしてやる。」

「しょしょしょ、初夜!?」

「清らかなお前に相応しい場所を探すから、やっぱ先に婚姻届だな。」

「き、清らか? 道明寺、頭、大丈夫??」

「さ、行くぞ!」


俺は牧野の手を取ってベッドから起こすとペントハウスを出て車に乗り込み、そのまま役所へ直行した。








にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
にほんブログ村
スポンサーサイト



2019.03.19




今、あたしは運転手さんが運転する車の後部座席に道明寺と共に座って、シートベルトをして車窓を眺めてる。
ハウスキーパーのユニフォームのままで、隣に座るオーダースーツ姿の道明寺とは著しい対比を見せている。
なんなら、刑事さんに連行される参考人、的な。
ただ、手錠じゃなくて直接に手を繋いでいるのが連行と違うところ。
いや、ある意味、手錠より強力な鎖かもしれない。

えーと、なんでこうなったんだっけ?
道明寺があたしに気づいて会いに来て、プロポーズされて結婚することになって・・・

いやいや、おかしいでしょ。
再会していきなり結婚て。
交際0日?

どの時点で結婚することになった??
あたしがイエスって口に出したから?
あまりの展開にぼーっとしてて、オウム返しに「イエス?」って疑問形で答えただけなのにそれが言質になっちゃって・・・

・・・でも、道明寺があたしを捕まえた時、不思議と「帰ってきた」って思った。
自分の居場所に戻れたって。
温かい胸に抱え込まれて、安心した。
顔を上げて見えた顔は、大人の男になっててドキドキした。
あたしの記憶の中のこの人は、まだまだ少年だったから。

あたし、本当にこのまま道明寺と結婚するの?
道明寺つくしになる?
あの魔女は?
大丈夫なの?
あたしにこの人を支えていく覚悟はある?


答えが出ないまま、あたしたちは婚姻届を受け取ってからあたしの家に到着した。



*******



パパとママには先に連絡をしておいた。
2人とも声も出ないくらいに驚いて、仕事を早退してあたしとママと進で住む家で待っててくれた。
2LDKの部屋に入り、狭いリビングのテーブルに4人で座った。

ママもパパもさっきから目が泳いで落ち着かないみたい。
そうだよね。久々の道明寺登場だもんね。


「あの、」


道明寺が口火を切った。


「突然の訪問をお許しください。本日はお2人にお許しをいただきたく参りました。」


大人になった道明寺は丁寧に挨拶をした。
あんた、成長したんだねぇ。


「な、なんでしょう?」


今にも卒倒しそうなパパがやっとのことで尋ねた。


「お義父さん、お義母さん、つくしさんを私にください!」


道明寺は座ったまま頭を下げた。


「「え!えええ〜〜〜!!!」」


無理もない。
英徳から転校して8年。
道明寺のことは影も形もなかったんだから。
あたしだって今日再会したばかりなのに。


「あの、つくしとは、以前からおつきあいを?」

「いえ、今日、8年ぶりに会いました。」

「今日!?」

「でも、私はずっとつくしさんが好きでした。これも運命でしょう。結婚のお許しをいただきたい。」


道明寺の、お願いしてるくせに身長差から見下ろしてる視線がどんなに謙っても消せないオーラを放ってて、うちの両親を威圧してる。
パパとママの目があたしに助けを求めてる。
こっち見ないで!


「つ、つくし、あんたはどうなの?」

「あたし?」

「道明寺さんと結婚したいの?」

「あたしは……」


ママ、それは聞かないでっ
したくないわけじゃないけど、積極的にしたいわけでもない。
そもそも今日、会って、今日、結婚するかどうか決めるって、頭のオカシイ破天荒単身者の王様でしょ!


「あの、どっちでもって言うか…」

「どっちでも? 結婚してもしなくてもどっちでもいいの?」

「えっと、」


ひえぇぇ〜〜
隣から氷点下の空気が漂って来てる〜〜
この感じ久しぶり〜〜


「じゃ、つくし、もし道明寺さんに婚約者がいたらその人に譲ってもいいの?」

「えっ!?」


ママの意外な言葉に弾かれるように顔を上げた。

譲る? 道明寺を他の女性に?


「それは、、、嫌だ。」


あたしは恥ずかしくて俯いた。
そしたら隣の氷点下だった空気が、急に春がきたようなポカポカした空気に変わった。


「こういうわけで、私たちは深く愛し合ってますのでご心配には及びません。私が責任を持ってつくしさんを幸せにします!」


道明寺の堂々とした宣言に、うちの両親はそれ以上、何も言えなかった。


「わかりました。つくしをよろしくお願いします。」


パパとママが頭を下げた。








にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
にほんブログ村
2019.03.20




それからが大変だった。

道明寺がパパに婚姻届の証人欄にサインをお願いしたんだけど、パパはそれだけは道明寺家の後にしてくれと固辞した。
牧野家は許したが、道明寺家の許しが出ないと勝手はできないとかなんとか。

パパ、その気持ち、わかるよ!
あの魔女が同意してくれないと、あたしだって結婚なんて無理!
勝手にそんなことしちゃったら、地の底まで追いかけられて、消されかねないわよ。

そのことを道明寺に話したら驚くべき発言が!


「あ? ババアの承認なんていらねーだろ。俺はもう大人だし、俺の人生なんだから。」


生まれながらの財閥の後継者がよく言うわ。
でもあたしもこれだけは引けない。
お母様のお許しがなければ結婚しないとゴネた。
そしたら道明寺は「わぁーったよ!」と言い捨てて、乗り込んだ車はある場所へ一直線にあたしたちを運んだ。




「ここ・・・」

「ババアの許しが欲しいんだろ? ほれ、乗れ!」

「乗れって、待ってよ! あたしまだハウスキーパーのユニフォームのままだし、それに大学がある。そんなすぐに行けないわよ。」


そしたらさっき合流した西田さんがズイッと出てきてそのメガネを光らせた。


「その件でしたらご心配には及びません。こちらで学長と話をつけまして、授業は出席扱い、また教授の講義の様子を納めたDVDが後日届きますのでご参考になさってください。」

「が、学長!? DVD!!?」

「はい。橘様におかれましては、常務との婚姻が最優先事項でございますので、僭越とは存じましたが手配させていただきました。」


忘れてた・・・
この人たち、通じないんだった。


「でもでも、じゃ、パスポートは?」

「プライベートジェットだからとりあえずはいらねぇ。あっちの大使館に仮のを用意させる。服は機内にあるし、NY着いてから買えばいい。ほら、さっさとしろ!」


こんのぉ、さっきまで「お前は宝だ」とか言ってたくせに、もうこの傲慢野郎復活だよ。


「早くしないと担ぐぞ!」

「ひっ、わかったから!」


こうして道明寺と再会した1日目は、怒涛のジェットコースターに再び乗り込んだ日となった。



*******



ここはNY、マンハッタンの道明寺本社、社長室。

あたしは道明寺に言われるがままプライベートジェットに乗り、NYにやってきた。
着くなり5番街のブティックを引きずられ、頭の先から足の先までびっしりとコーディネートされ、いまここにいる。
隣には道明寺、ドアの横には西田さんが控えている。
あたしたちはだだっ広い社長室の硬めのソファに腰掛けて、この部屋の主を待っている。

そう、あの魔女を。

最後に会ったのは道明寺と滋さんのお見合いの場だった。

「牧野さん、おわかりいただけたかしら?」とかなんとか言われたんだよね。
なのに、8年後にその息子と結婚しますって、どのツラ下げて言えばいいわけ?
あたし、どんな目に遭わされるかな。
地球の裏側に追放されたりして。


ガチャ


社長室のドアが開いた。
見なくてもわかる。
だって、部屋の温度が一気に5度は下がった。
あたしたちは立ち上がって魔女を迎えた。

道明寺楓が秘書を伴ってデスクに着いた。
道明寺とはまた違ういい香りが漂った。
魔女の合図でもう一度座る。


「社長、お時間をいただいてありがとうございます。」


道明寺が完全にビジネスライクに告げた。


「牧野さん、お久しぶりね。あら、今は橘さんでしたかしら。」


全部、わかってるわよ、っていう牽制。
道明寺が面談(謁見?)を申し入れてからこの時間までにあたしのことを調べたのかな?

あたしは立ち上がって挨拶をした。


「はい。ご無沙汰しております。」

「で、今日は?」


道明寺も立ち上がった。
あたしの肩を抱き寄せた。


「社長、私はこの橘つくしさんと結婚します。」

「ハァ、8年前の悪夢が蘇ったようだわ。私が許すとでも?」

「許可をいただきに来たわけじゃありません。」

「決定事項というわけ?」

「儲け話をしに来ました。社長、投資って言葉をご存知ですか?」


この場の道明寺以外の全員が「こいつは鉄の女に向かって何言ってんだ?」って顔になった。


「よく存じ上げてるわ。」

「こいつを俺の妻にすることは俺への投資だ。」


魔女の片眉がつり上がった。
この人が表情を変えるなんて珍しいんじゃない?
だって隣に立ってる秘書さんが冷や汗を拭ってる。


「寝言、かしら?」

「俺と牧野の結婚を認めれば、俺はこの先何十年も道明寺に莫大な利益を上げ続ける。それは投資だ。でももし認めなければ、」

「認めなければ…?」

「俺は暴落し、道明寺は地に堕ちる。」

「その方にそんな価値があるのかしら?」

「ある。こいつは俺の半分だ。俺は今、50%の動力で動いてる。でもこいつがいればそれが100%になる。下手な政略結婚なんて吹き飛ばすくらいの能力を発揮してやるよ。」

「大きく出たわね。」

「あんたは認めるしかねぇんだよ。あんたの何よりも大事な道明寺を守るためには、俺にこいつが欠かせないってことを。」


あたしは身の縮む思いだった。
この人は何を考えてこんなトンデモナイ理論を世界の鉄の女に向かってブチかましてんだろう。
でも、その道明寺のトンデモ理論に魔女は考え込んだ。


「わかりました。」


え!?


「では、契約のサインを」


道明寺は内ポケットから婚姻届を出し、証人欄を指差した。
鉄の女は万年筆を出し、流麗な字でサインした。


「つくしさん、」

「はいぃ!」


いきなりファーストネームを呼ばれ、あたしは直立不動で返事をした。


「あなたはいいの? そのままで。」

「え? はい?」

「司の隣に立つのに、そのままのご自分で満足ですか?」


やっぱりこの人はすごい人だ。
あたしの不安はお見通し?
それとも、このままのあたしじゃ道明寺の重荷になることがお見通し?


「いえ、満足してません。今のままじゃ彼の隣に立つことは難しいと思ってます。」

「牧野!」

「そう。その点については意見が一致したわね。」

「あの、それで社長にお願いがあります。」


あたしは今、この瞬間に思いついたことを魔女にぶつけることにした。
どうせ厚かましいと思われてるんだから、「毒を食らわば皿まで」でしょ。


「何かしら。」

「あた、私を、鍛えてください! お願いします!」


あたしは腰を折り曲げて、深く頭を下げた。


「お前! 何言ってんだ!」

「あなたは黙ってて。社長、私は100年経っても道明寺家に見合う嫁にはならないかもしれません。でも少しでも近づきたいんです。」

「…いま、この場にいる者、全員があなたの宣言を聞きました。後戻りは許さないわよ。」

「わかってます。」

「よろしい。励みなさい。」


あたしは、結婚を認められたことよりも、あたしの気持ちを汲んでもらえたことのほうが嬉しかった。
初めて魔女とまともな会話ができたと思った。








にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
にほんブログ村
2019.03.21




NYからトンボ返りの機内で通路を挟んで豪華な座席に座る道明寺は、上機嫌でたくさんのパンフレットを見比べてる。


「なにそれ?」

「これか? お前と迎える初夜をどこにするか考えてんだ。どこがいい?」

「初夜!? どこでって、普通はホテルとか家とかじゃないの??」

「言っただろ? 清らかなお前に最高の初夜を迎えさせるって。ここなんてどうだ? ギリシャのサントリーニ島。建物が全部白壁で統一されて、すっげぇ綺麗な島だぞ。夕暮れ時なんて最高だ。」

「ホントだ! 綺麗だね。」

「こっちはどうだ? 女ってあのなんとかランドが好きなんだろ? シンデレラ城のモデルになったドイツの古城だ。買い取るか?」

「えっ、いや、」

「それともここはどうだ? ペルーのマチュピチュだ。世界遺産で天空都市と呼ばれてる。天国に一番近い場所だ。ここに別荘建てるか。」

「ちょっと! 落ち着いて!」

「なんだよ。気に入らないか? どっか希望があるのか?」

「そういうことじゃなくて、そんな大袈裟にしなくていいから。」

「大袈裟なんかじゃねぇ。お前という最高の女を初めて抱くんだから、最高の場所じゃないと。」

「バッ、バカッ!」


はぁぁぁ〜〜、こいつ、こういう臆面もないとこ全然変わらないな。
ってか、バカがパワーアップしてない?
そもそも初夜とか清らかって発言の連発、この前から恥ずかしすぎだし。
あーあ、西田さんの眼鏡の奥の目が冷ややかだよ。


「海外なんて行けるわけないでしょ。大学があるし、仕事だって休めないし。」

「大学のことは解決済みです。DVDが届きます。」


西田さん、そういうことじゃないのよ!


「仕事は辞めろ。ってか、俺はもうあそこには住まない。帰国したらお前と邸に住むからな。」

「えっ! あそこには帰らないの? なんで?」

「なんでって…」


道明寺が顔を背けて言い淀んでる。
どした?


「お前だって嫌だろうが…」

「え? あたし?」

「つまり、その…」

「橘様が先程、社長に宣言なさいました。道明寺家の嫁として切磋琢磨なさる、と。これから橘様には様々なレッスンが待っております。そのためには邸に住む必要があります。それに邸の管理も奥様のお務めになってまいりますので、現在のお仕事は続けられなくなるかと存じます。」

「そういうことですか…」


確かに宣言した。
やるからには中途半端は嫌だ。
そっか仕事辞めなきゃいけないか。
結構好きだったんだけどね。


「わかりました。そういうことなら帰国したら手続きします。」


派遣先の家主と結婚するから辞めます。なんて、本当はダメだよね。
所長、なんて思うかな。

なんだかホッとしたような道明寺がまた畳み掛けてきた。


「そうとなったら海外でも大丈夫だろ? どこがいい? それとも初夜の記念にどっかのリゾートごと島でも買うか?」


初夜初夜うるさいっ!
こいつの脳内にはヤバい物質が流れ出てるに違いない。
これ以上、放っておいたら星でも買いかねないわ。


「あのさ、じゃあさ、あたしはそのサントリーニ島がいいな。その景色を実際に見てみたいし。」

「そうか! わかった! 西田、サントリーニだ。」

「かしこまりました。次にまとまったオフが取れるのは3ヶ月後ですので、楽しみにお待ちください。」


・・・青筋立ってるよ。


「3ヶ月後?」

「はい。サントリーニに一泊するための日数は最低でも4日は必要です。今回、NYの往復でオフを使いましたので、次にそれだけのオフが取れるのは3ヶ月後です。」


だーかーらぁ、普通に考えればわかるでしょ。


「そっか。じゃ、結婚も3ヶ月後ってことで。とりあえず、ハウスキーパー続ければいい?」


道明寺は立ち上がり、あたしの前に立ってとっても申し訳なさそうな顔をして肩を掴んだ。


「牧野、悪いな。お前の希望は叶えてやりたいが、サントリーニ島は遠すぎる。新婚旅行で行こう。な?」


つまり、初夜を先延ばししたくないわけね。


「はいはい。いいよ。」

「西田っ」

「はい。」

「明日はオフだよな?」

「はい。明日までなんとか確保いたしました。」

「よし! 婚姻届は明日の朝一番で提出するぞ!」


なぜかガッツポーズで目を輝かせる道明寺。

そんなにシたいのか・・・

はぁぁぁ〜〜、なんかもう、初夜の扱いが雑。
もっと秘めた感じで、恥じらって、初々しいものじゃないの?
てか、待って。
このままいけば明日、あたしは経験するわけ? こいつと!?
やばい、ちゃんと考えてなかった。
待て待て待て!
心の準備が全然できてない!
交際期間、もっとほしいんですけどっ


「あのさ、その、今更かもしれないけどさ、もっとちゃんと付き合わない?」

「付き合う?」

「普通の男女交際っていうか、恋人期間ていうか。」


自分で言ってて赤面してきた。
道明寺と恋人とか、うわぁ、マジか・・・


「いらねぇ。」

「なんでよ? ウキウキした楽しい期間でしょ? そういうのも必要なんじゃない?」


あたしには必要なのよ!


「いらねぇ。結婚してもウキウキしてりゃいいだろ。デートもすればいいし。結婚した方が自由に行動できる。」

「そりゃあんたはそうでしょうけど。」


もう一度あたしの肩を掴んだ道明寺が、ズイッと顔を近づけてきた。
あら、お綺麗なお顔ですこと。


「逃がさねぇ。お前はすぐに逃げようとするから、猶予はやらない。提出は明日の朝一だ。ババアにも啖呵切ったのはお前だ。観念しろ。」


反論できないあたしはただゴクリと喉を鳴らすしかなかった。









にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
にほんブログ村
2019.03.22




NYから日本に到着したのは夕方だった。
それから婚姻届の証人欄に記入してもらうためにもう一度、パパとママにうちで待っててもらって無事に署名捺印をもらった。
パパはお義母さんのサインが信じられなくてしばらく見入って固まってたけど、道明寺のビームのような視線に気付いて急いでサインした。
おいおい、仮にも義理の父親になる人間を脅すな。

そしてその後、あたしたちは道明寺邸に向かった。




「おやおや坊ちゃん、こちらにいらっしゃるなんて珍しい。」

「タマ、今日から俺はこっちに住む。それから改めて紹介する。俺の婚約者の橘つくしだ。ま、明日には妻になるけどな。」


道明寺の後ろに立つあたしを見てタマさんは驚いてた。
無理もない。
自分が仕えるお坊ちゃんが家政婦を連れて帰ったんだから。
あたしは久しぶりに会うタマさんに挨拶をした。


「ご無沙汰しています。橘です。」

「あんた、まぁ、こりゃまた綺麗になって。結婚してるんじゃなかったかい?」


あたしはNYで買い与えられた洋服を着て、タマさんを前に恐縮していた。


「すみませんでした。結婚はしてないんです。指輪は顧客とのトラブル防止に未婚のハウスキーパーは着用するように指導されてまして。」

「まあまあまあ! そうかい、そうなのかい! こりゃ嬉しい誤解だったねぇ。で、坊ちゃんと結婚してくれることになったってのかい?」

「あの、はぁ、まぁ、成り行きっていうか。」

「そうか! よかった、よかった。あんたなら安心して坊ちゃんを任せられるよ。よろしく頼みますよ。」


タマさんは手を叩いて喜んだ。
本当にあたしでいいのだろうか?


「タマ、橘も今日からここに住む。明日には夫婦になるんだ。今夜から俺の部屋でいいだろ。」

「かしこまりました。」

「かしこまらないでください!!」


あたしの抗議もこの二人には馬耳東風。
道明寺があたしの手を引いて歩き出した。


「ちょっと、一緒の部屋とかまだ勘弁してよ!」

「婚約者だ。誰にも遠慮はいらない。」

「してないわよっ!」


通されたのは明るい角部屋。
アイボリーで統一された壁面にはオフホワイトのシフォンカーテンが幾重にもひだを作って揺れている。

「わぁ〜〜〜! なにここ〜〜」

「俺の部屋だ。」

「ここが!? こんな上品な部屋が? あんたの部屋?」

「気に入ったか?」

「うん、素敵な部屋だねぇ〜」


あたしは天井が高くて最低限の設だけがされたその部屋を見回していて、近づく危険に気づかなかった。


グイッ


「キャッ」


気づけば手を引かれ、ジャケットを脱いでベッドに座る道明寺の膝に座らされてた。


「牧野…」

「なっ?…ん!」


どうしてこいつはいつも突然キスしてくるの?
一言、断るとか、雰囲気を作ってゆっくりとか、そういう情緒はないのか。

横抱きに座らされ、肩を引き寄せられ、唇が何度も重なってる。
男のくせに唇が柔らかいとか反則でしょ。


「ヤベェな。お前すごい……もっと欲しい…」


離れたかと思ったら耳元で囁かれてゾクッと身震いがした。


「ちょ…や、やめ…」


ボスンッ


なぜかあたしの背にはふかふかのベッド。
目の前にはネクタイを外しながら色気をダダ漏れさせている道明寺。
目が、目がおかしいよ…?

道明寺が降ってきた。
逃げられない・・・・


!!


ドンッ


「〜〜〜っっ!」

「っおい、なんだ?」


あたしは思わず道明寺を突きとばして押しのけて、唇に手の甲を当ててた。
きっと顔は真っ赤だ。
だ、だって、キ、キスが、なに!?


「いま…なんか…」

「………まさかお前、ディープキスもしたことないのか?」


ガバッ!


「あ、あたし、やっぱり別の部屋を用意してもらうからっ」


あたしはベッドから起き上がって部屋の出口に向かって駆け出した。
あのドアがあたしの唯一の救いみたいに見えた。
早く、早くここから出なきゃ!

でもすぐに捕まった。


「 悪かった、行くな。」


道明寺に抱きしめられて、あの香りに包まれる。
自分の心臓の音が耳の後ろで聞こえてる。


「お前、俺に会う前に最後にキスしたの、いつだ?」

「え…」

「もしかして、俺のバースデーを抜け出したクルーザーか?」


ギクッとした。
そうだ。あたしにはこの8年、彼氏がいたことはない。
つまり、彼氏いない歴=年齢。
欲しいとも思わなかったし、正直、そんな暇もなかった。
生きることで精一杯。
仕事と勉強と家族。
他のものが入り込む余地も願望もなかった。
彼氏がいないことを恥ずかしいとも思ってなかった。
……今、この瞬間まで。
やっぱり呆れてる?
どうしよう、顔が上げられない。


「お前って、もうずっと俺の女だったんだな。すげぇ嬉しい。そりゃ、俺としたことないんだから経験があるわけないよな。」


道明寺は一度強くあたしを抱きしめて、頭に頬ずりした。
そして抱き上げた。
そのまま、あたしをベッドに横たえてまた被さって見下ろしてる。
その大人で精悍になった顔を見上げる。


「俺と一緒に始めよう。」


その顔が見たことのない優しい顔で、思わずじっと見とれちゃって抵抗するのを忘れてた。
そしてまた降りてきた。

それは、初めてのキスから始まった。
最初のキスはクルーザーのパーティー。
暗闇の中で一瞬だけ触れたキス。
次のキスは放課後。
なぜか襲われそうになったけど、キスだけは優しかった。
そして3度目はこのお邸で。
告白されて唇を合わせた。
4度目は道明寺のバースデーパーティーを逃げ出した舟の中。
不意打ち・・・いや、全部不意打ちだったな。
でもあの時は子供みたいな笑顔をされて怒れなかったんだっけ。

そして今。
いつの間にか好きになってて、明日には結婚する。

重なった唇を濡れた舌がなぞってる。
ゆっくり左右になぞられて、下をなぞったら上を行き来してる。
初めての経験なのに、さっきの強張りはもうない。
口付けが深くなったと思ったら、開いた唇の間から濡れた舌があたしのそれを誘うように入ってきた。
イヤラシサが一気に増す。
侵入してきたものを確かめずにはいられない。
あたしもそっと触れた。
経験したことのない熱いキスで体の芯がゾワゾワしてきた。


「…ふ…ぁ…んん…」


やだ…気持ちいい…
…声が漏れる…
あたしって、いまどんな顔してんだろ…


「ど…みょ…じ…んぅ…」


ダメだ…キスが止まらない
もっと、もっとしてほしい…


「お前…スッゲ…もう誘う女の顔してる…」

「や…見ないで…よ…」


キスを止めずに、道明寺の手が動き始めた。
ニットの裾から侵入して肌を直接撫でた。


「ちょっやめっ…はぁ…」

「…ハァ…肌、スベスベ…触ってるだけで気持ちいいな…」


痛いくらいの甘い痺れが駆け上ってくる。
手が背中を撫でてたかと思ったら、フッと胸の拘束が緩んだ。
すると手は前にやってきて、緩んだブラの下に入り込んで、直接、胸を包み込んだ。


「ひゃっああ!」


あたしは思わず、これ以上蠢かないように服の上から道明寺の手を押さえた。


「…どうした?」


あたしの首筋をチュッチュッと吸いながら、甘い声で囁かれる。
その首に当たる吐息さえも体の芯を揺さぶる。


「す、するの? したいの?」

「……したい…限界…」

「初夜は明日、なんだよね…?」

「ハァァ…わかってる…胸触るだけ…もうちょっと…」

「途中でやめられる?」

「…やめるから…触りたい…」

「絶対だよ…」


なぜか拒むことができなかった。
道明寺の手が再び蠢き出した。
胸を包み、弄び、形を変える。
何かが背を這い上がってくる。
これが快感なの?


「あ…んん…や…」

「…やらけー…牧野…可愛いな…牧野…牧野…好きだ…」

「ん…」


胸を直接、触られながらのキスで頭の芯が痺れる。
その時、道明寺の手があたしの腿に伸びてきた。


「ダメッ!」


思わず道明寺を押しのけた。


「止まらないじゃない! もうダメッ!」

「ハァ…クッソーー!」


道明寺は仰向けになって両手で顔を覆ってたかと思ったら、跳ね起きてそのまま隣のドアに消えた。
何の部屋だろう??と思ってたらガチャッとドアが開いて、顔をのぞかせた。


「…シャワー浴びる。 お前は休んでろ。」


呟くとまたドアをバタンッと閉めた。
そっか、ここも部屋にバスルームがついてるんだ。

なんか、途中でやめるのってやっぱりかなり辛いのかな。
で、でもでも、あのままなんてやだよ。
だってハジメテだよ?
もっとちゃんと準備とかあるもんでしょ?
それに簡単にあげちゃったらこんなもんかって飽きられるのも早いんじゃない?

取り残されたあたしは、自分の唇をなぞった。
初めての深いキスの余韻で身体がカッと熱くなる。

最初、びっくりしたけど嫌じゃなかった。
もっと続いて欲しかった、なんて、あたしどうしちゃったの!?

でも…これが好きってことなのかな。
もっと触れて欲しいなんて、あたしらしくないのに。


それにしても、今夜から一緒の部屋とか言ってたけどあの様子じゃ危険かも。
やっぱりタマさんに言って別の部屋にしてもらおう。



*********



ヤベェ
ヤっちまうとこだった。
この8年、あいつに触れた男がいないことに有頂天になって、キスにも慣れてないとこがめちゃめちゃソソって、いつのまにか貪るように求めてた。
キスが気持ち良過ぎてあいつをガブガブと食っちまいたくなった。
ああ、あいつを腹一杯食えたらどんなだろうな。
美味いだろうな、気持ちいいだろうな。

初夜は明日だ。
だけどプランは何にも決まってない。
海外は諦めた。
3ヶ月後だとぉ!?
ふざけんなっ
待てるか!!

だから国内。
本当はどっかのリゾートを貸切にしたい。
でも、明日中に行ける距離にオープン前の物件はない。
今日の明日で客をキャンセルにはできない。
・・・俺も大人になったよな。

と、するとメープルか、邸か。
邸って家じゃんか!
あまりにも普通すぎる。
それはいくらなんでも情けなさ過ぎだよな。

よし、グランド・メープル・東京のインペリアルだ。

……これも十分に情けないと言えなくもないが、もうこれ以上耐えられない。


シャワーから出て牧野の様子を見ようとベッドに向かうが、いない。
部屋の中にもいない。
内線でタマを呼び出す。


「橘は?」

『別のお部屋をご用意しましたよ。坊ちゃんに食べられそうだって言うもんでね。坊ちゃん、あと一晩の辛抱ですよ。』


クッソー! 逃げられたか!
・・・しかし、逃げてくれてよかったかもな。
もう抑える自信ないからな。








にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
にほんブログ村
2019.03.23
 | HOME |  NEXT PAGE »