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あけまして おめでとうございます
「マンハッタン・ラプソディ – 絆 –」連載開始です
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私は目覚めた。


——— 牧野つくしとして ———







世界が赤い。
瞼の向こうに光が射しているから。
病室?
忙しく立ち働く人の足音や、電子機器の音がそこかしこからしてる。
ここはEmergency Room?
私は吹雪の中に飛び出して、また遭難したんだ。
でも助かった。

目を開ける。

『エマ!』

道明寺!!

声は出せない。
管?
そっか、挿管されてるんだ。
あのよくドラマとかで見るヤツ。

そしてエマだっけ。今の私は。
でも、「あなたは誰か?」と問われたら、私のアイデンティティは、


牧野つくし


全ての記憶は戻った。
エマの記憶も失くしてない。
私の人生は完全に繋がった。

エマは私の一部になった。
道明寺が愛したエマはもういない。

私は2度、人生を失くした。
1度目は10年前、エマになった時。
2度目は今日。
エマがいなくなって牧野つくしに戻った。

私はまた目を閉じた。

医者が呼ばれる。
ライトが眩しい。

『ふーん、あと2時間後には目覚めるかな。ね?』

バレてる。
2時間後ね。了解。

「はぁぁ〜〜〜っ」

道明寺のため息が聞こえる。
心配かけてごめん。

『エマ、俺が悪かった。早く目を覚ましてくれ。』

もうちょっと待って。
どうするか考えるから。




*****




2時間後、考えはまとまらないけど、とりあえず私は目を覚ました。


『エマ、このペンの光を目で追って。』

英語がわかるのが変な感じ。

右、左、上、下

『オーケイ、次は反射を見よう。』

シーツが捲られ、スッとした空気が身体をなぞる。
足の裏に冷たい石の感覚

『オーケイ、反射も大丈夫!挿管を抜こう。』

看護師が来て、one ,two ,on three!で抜管。

「うえっ、ごほっごほっ」

『エマ』

道明寺が手をさすってる。
声はまだ出せない。
医師が言う。

『声が出せるようになるのは明日くらいかな。不便だけどすぐ慣れるよ。』
『Thanks』

これは道明寺の言葉。


ベットが電動で起こされて背中にクッションが差し込まれ、私は上体を起こして座る。

『エマ、俺が悪かった。生きててよかった。』

道明寺が本当に安堵した顔をしている。
直視できない。

牧野つくしが戻ったことがわかれば落胆するよね。
だってあんた、あたしの記憶、戻って欲しくなかったんでしょ?
エマのままでいてほしかったんでしょ?

いつ言おう。

チラ、と男を見る

道明寺、寝てないのかな?
疲れた顔をしてる。

紙とペンを要求する。

『ん?なんだ?ああ、紙とペンか』

"心配かけてごめん。あなたも休んで。"

英語で書く。

『ん? 大丈夫だ。この後お前は上の特別室に移るから。』

そう言った道明寺は私の頬を撫でた。

ゾクリと背筋が粟立つ。
私はスッと顔を反らせた。
道明寺がハッとして手を引いた。
なんでかわからないけど、罪悪感。

徐々にエマだった時の記憶が鮮明になってくる。

ジェフに助けられた。
何もわからない私を親身に世話してくれて、本当にジェフはクリスチャンの鑑だよ。
学校に入った。
15歳って言われたっけ。
学校ではフランス語。
そうだ、私はもうフランス語もできるんだ。
なんか、得した?
だって今なら3ヶ国語できるんだよ?
それから、あー、思い出したくない。
カレッジ課程1年生の時の彼氏と初体験。
おーい、エマ、そんな男に処女を捧げないでよ。
あたしだったら絶対にヤッてない。
それからNYに出て大学に入った。
ジェフと同じカメラマンになりたかったから。
ここでも彼氏ができたな。
そしてウィルと出会った。
考えてみれば一番マトモな人だったよね、ウィルって。
・・・いま、隣にいるこいつも含めた中で。

ハァ、あたし、どーすんだ?




*****




遭難した次の日に目覚めて、目覚めた日の午後に特別室に移され、精密検査を受け、その次の日、声が出るようになった。
ベッドに座って医師の診察を受けている。

『あなたの名前は?』

どっちを答えよう。
迷ってるうちはエマにする。

『エマ・ホワイト』

道明寺が何度目かの安堵。
それは何の安堵なの?
エマが記憶を失ってない安堵?
それとも、牧野つくしが戻ってない安堵?

『今日は何日かわかる?』
『えーと、12月27日?』
『正解! いい調子よ〜』 チラッ

特別室に移されて主治医は女医になった。
道明寺への色目を忘れない医師だから、道明寺がイラついてるのがわかる。

『じゃ、あなたの誕生日は?』
『12月2・・・、あ、えっと、30日』

危なーい!28日って言いそうになった。
エマの誕生日はジェフに助けられた30日なんだった。

『オーケイ、いいわ〜。精密検査の結果も良好だし、これならもう退院できそうね。彼氏さんに会えなくなるのは寂しいけど!』 チラッ

女医は言葉のセンテンスのたびに道明寺に視線を投げてる。

『おい!終わったんなら早く出て行け!』
『あん、じゃ、書類はナースセンターに預けておくから。お大事に〜。』

「フンッ」

道明寺がドアが閉まったのを見計らってベッドに腰かけた。

『本当にもう退院して大丈夫そうか?』
『あ、うん。そうだね。心配かけてごめん。もう大丈夫。』

何故だか目が見られない。
ベッドのシーツの皺を見つめながら話す。

『じゃ、帰るか。このままNYに戻るぞ。』
『別荘じゃなくて?』
『あんな縁起の悪い別荘にはもう寄りたくねぇ。このままペントハウスに帰る。』
『そっか。ごめん。』
『悪いのはオレだ。お前に本当のことを話さないでここまで来た。すまなかった。NYに戻ったら話をしよう。』
『あー、あの、そのことだけど、もういいから。』
『よくねぇだろ?知りたいんだろ?』
『・・・もういいよ。大丈夫。こんなに心配ばっかりかけたんだし、きっとあの時も私が悪かったんだよ。ごめん。』
『…おい、俺の目を見ろ。』

ギクッ

それは無理です。


私が顔を上げないでいると道明寺の手が伸びてきて顎を持って顔を上げさせられた。



至近距離まで道明寺の顔が近づく。

『本心じゃねぇだろ?』
『ち、近いよ!』

私は思わず手を振り払ってシーツに潜り込んだ。

ドクン ドクン ドクン…

『??お前、本当に大丈夫か?』

私もそう思う。
私、大丈夫か?
どうしたの?

『だ、大丈夫!大丈夫だから!』
『ふーん・・・』


それから3時間後、私は退院してバンクーバーの空港からNY行きのファーストクラスに乗っていた。








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2019.01.01
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【注釈】キャラの書き分け上、エマからつくしになって口調を変えていますが、つくしが話す英語はエマから変化していません。よって、実際は口調は変わっておりませんので(司が聞く英語に変化なし)、その前提でお読みください。
★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★







道明寺のペントハウスに帰ってきた。
ホッと、、、しない。

まずい。
今の私はエマ・ホワイトで、道明寺の恋人なんだっけ。

思い出したら急に暑くなってきた。
パタパタ 手で顔を扇ぐ。

あぁーー、どうしよう。

『はぁ、疲れたな。エマ、ちょっと休め。退院したばかりなんだから、バスにでも浸かって、』
『う、うん。そうする! じゃ、そういうわけで、おやすみっ』

私は逃げるように自分の部屋に駆け込んだ。
鍵をかける。

これでやっとホッとした。
雲の上のようなベッドにダイブする。
あー、疲れたぁ。
ってか、これもう10年分の疲れだよね。
記憶って不思議。
忘れてた時は私は確かにエマ・ホワイトだったのに、牧野つくしの記憶が戻った途端にもう私は牧野つくし以外の何者でもない。

そうだ、ジェフに連絡しなきゃ。
きっと心配してる。


RRRR. RRRR. RRRR. …


《エマ!》
『ジェフ、心配かけてごめんなさい。』
《もう大丈夫なのか?何があったんだ!?》
『・・・また遭難したの。』
《・・なんだって・・・?》
『10年前にジェフに助けてもらった時のように。』
《なんてことだ・・どうしてそんな・・・》
『ごめんなさい。』
《Mr.道明寺が原因か? 彼とは付き合ってるのか?》
『付き合ってるのは本当。でも彼のせいじゃない。』
《鉄の女の息子だぞ。5番街のアンドロイドだろ?》
『私のことは大切にしてくれてる。彼の愛に疑いはないわ。』
《エマ、心配なんだ。・・・記憶は? まさか、戻ったのか?》
『・・・・・・・・・・・ジェフ、これまでのこと、本当に心から感謝してる。助けられたのがジェフでよかった。きっと神が私に遣わしてくださった天使ね。』
《!!》
『私はこれからもジェフの娘でしょ? 』
《も、もちろんだ。僕の娘はエマだけだよ。永遠に。いつでも帰っておいで。》
『ありがとう。ジェフ、ひとつだけお願いがあるの。私の記憶のこと、Mr.道明寺には言わないで。彼が愛してるのはエマよ。』
《・・・・君が望むなら。》
『ありがとう。』
《ひとつだけ聞かせてくれないか? 》
『なに? 』
《君はMr.道明寺を愛しているのか? 》
『エマは確かに愛してたわ。でも私は・・・まだわからない。』
《そうか。いつでも神がそばにいてくださる。祈るんだよ。》
『わかったわ。』


ジェフとの通話を終えて、もう一度ベッドに寝転んで天井を見上げる。

高い天井。
道明寺、すごいとこに住んでるなぁ。
あいつ、こんな世界的な本物の金持ちだったんだ。
ここ数ヶ月いっしょに暮らして知ってるはずなのに、あの頃のことを思い出して、そのフィルターを通して見ると全然別人のように感じる。
エマが愛して、エマを愛した道明寺とは違う人。

私はあの3人に騙されたんだ。
優紀は無事だった。
ずっと別荘にいたんだね。
それはそれでよかったけど、そのせいで私がこんなことになってきっとすっごく辛かったよね。
優紀、ごめんね。

それにパパとママと進。
アパート、綺麗になってた。
まだあそこに住んでるんだ。
…もしかして私の帰りを待ってる?
進、大きくなってたな。大人になってた。
きっと立派になったんだね。


その時、つくしの目には涙が浮かんだ。
それは目尻から一本の筋となり、雲のようなベッドに落ちた。


失った10年。
私だけじゃない。
いろんな人がこの10年を失った。
得たものは、カメラマンという職業と3ヶ国語が操れるという能力。

そして道明寺。

道明寺がずっと私を好きだった?
あの時から?
信じられない。

エマは確かに道明寺を愛してた。
でもエマはもういない。
私の一部になった。
・・・じゃ、私は?
私は道明寺が好きなの?
あいつのせいで、こんな目にあってるのに?

わからない。
考えなきゃ。
そして答えを出さなきゃ。


つくしはそのまま目を閉じ、午睡に入った。




*****




コンコン!


ノックの音でつくしは目覚めた。

『はい?』
 『エマ、食事はどうする?何か食べられそうか?』
『あ、そうだね。お腹空いたかも。』
 『外に出るか?それともデリバリーさせるか?』
『疲れたから、デリバリーでお願いします。』
 『わかった。』

起きるか。

時刻は18時。外はもう真っ暗だった。

荷物はすでに運び込まれ、あの夜にエマが別荘のリビングに残したクラッチバッグはデスクに置かれていた。
婚約指輪もまだちゃんと入っている。

バスルームでシャワーを浴びる。

そう言えば、ピアスどうしたっけ?
ハリー・ウィンストンのダイヤのピアスだった。
失くしてないよね?

つくしは鏡でピアスがあったはずの耳を見た。

ゲッ!なにこれ!?

ピアスによって凍傷を負った耳たぶはまだ赤く腫れており、穴の周辺は特にただれていた。

そっか金属だから特に凍傷がひどかったんだ。

つくしは初めてシミジミと、よく2度も助かったと思った。
しかも指も耳たぶも失われてはいない。


いろんな人にいっぱい迷惑かけて、いっぱい心配かけて、私って何やってんの!?
道明寺に10年前のことも謝らないと。


バスルームから出てカットソーとデニムに着替えたつくしはデスクの上のクラッチバッグを眺めた。
その中から革張りのリングケースを取り出し開くと婚約指輪が顔を出した。
取り出してよく眺めてみた。

はぁぁ、すごいなぁ。
これ何カラットあるの?
5? 6?
その時、リングに刻印された文字を見つけた。
永遠の愛を誓う言葉と共に「 T to E 」と彫ってあった。
“ 司からエマへ ” 婚約指輪にはそう刻印してある。
サーっとつくしの中で何かが引いて行く。

私のものじゃない。
私がプロポーズされたんじゃない。

そう思ったら急激に現実に引き戻された。

私が道明寺をどう思っていようが関係ない。
道明寺が好きなのはエマだ。

そんな思いが湧き上がった。








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2019.01.02




つくしは部屋を出てリビングに入った。
そこでは同じくバスルームから出た司がボトルからミネラルウォーターを飲んでいた。

『あの、』
『エマ!休めたか?』
『あ、うん。ありがとう。』
『料理はもう届いてる。食うか?』
『うん。そうだね。』

エマは相変わらず目を合わせようとしない。
司はエマが病院で目覚めてから、様子が違うことが気になっていた。
試してみようと、司は立ち上がりエマのそばに行き、その手を引いて抱きしめた。



ふと、エマの耳が目に入る。
エマの命を救ったピアスのせいで、赤くただれていた。
司はその耳にそっと手を添えた。

『これ、痛くないか?』
『だ、大丈夫…』
『エマ、お前が無事で本当に良かった。2度も雪山で死にかけたんだぞ。もうこれ以上俺を心配させるのはやめてくれよ。心臓がもたねぇよ。』
『うん、ごめんなさい。もうしないよ。』
『なぁ、』
『ん?』
『キスしていいか?』
『え!?』

司は少し体を離して探るようにエマの目を覗き込んだ。
もしもつくしの記憶が戻っているなら嫌がるはずだと思った。

『ダメか?』

司に至近距離で覗き込まれ、つくしはなぜだか猛烈に恥ずかしくなり、顔を背けて目を泳がせた。

『あ、あの、えっと、、』
『・・・どうした?』

ひえぇぇ
ど、どうしよう。
エマだった頃は平気だったのに、つくしに戻ったら恥ずかしすぎる!
でもきっと道明寺は疑ってるんだよね?
私が戻ったんじゃないかって。
どうしよう、言う?言わない?

・・・・・言ったらどうなる・・?

「お前・・・もしかして、」
『い、いいよ!キスぐらいなら、大丈夫。それは体調とは関係ないし。』
『…本当にいいんだな?』
『いいよ。』

つくしは覚悟を決めた。
キスぐらいならきっと耐えられる。
そう思って目を閉じた。

その言葉を聞いて司はエマの顎に指を添え上を向かせると、エマの好きな唇を食むキスをした。
その瞬間、つくしは膝の力が抜け、ガクッと崩折れそうになり、咄嗟に司の腕にしがみついた。

『っおい!どうした!?』

この程度のキスでこんな反応をするなんて絶対におかしい、と司の勘は警告している。

『大丈夫か?』

改めて支え直し、エマの顔を覗き込んだ。
そこには顔を真っ赤にしているエマがいた。

なんだ?
猛烈に可愛いぞ。

司はもう一度試してみようとエマの頬を包み、今度は舌を差し込むキスをした。

!!

今までエマとしてしてきたことなのに、記憶が戻り心身が完全体となった今は、その刺激がこれまで以上にダイレクトに脳に伝わり、つくしは早くも立っていられない。
エマのフリをするなら、自分も今までのように応えなければいけないのに、司の舌に翻弄されて、まさかそれどころではなかった。

やっと離された時にはすでに息も絶え絶えだった。
これ以上はまずいとつくしは顔を上げて司に訴えた。

『も、もう、やめて・・』

司に支えられ、ほとんど潤んでしまった瞳で上目遣いに懇願した。


ドクンッ!


なぜか司の鼓動が高鳴る。

やべぇ、めっちゃソソる。
なんだこれ。
やめられねぇ。

エマの様子を探るために始めたキスだったのに、ハマってしまったのは司だった。
退院した当日で、休ませてやらなければいけないという理性を本能が追撃し始めた。

司はエマを抱き上げ、ソファに横たえた。
エマの横に座ると、被さってまた深いキスをした。

「んっ!」

つくしは司を押しのけようとしているがビクともしない。
キスをしながら司はカットソーの裾から手を入れ、その肌を撫でた。
その瞬間、

「んんーー!!」

と強い反応を示してエマがその背を反らせた。
エマはソファの背もたれに体を向け、真っ赤になった顔を腕で隠し、ハァハァと荒い息を繰り返している。

『・・・まさか、イったのか?』

信じられない。
今までこんなことは一度もなかった。
キスをして、肌に手が触れただけでイくなんて。

エマの様子を見て、司は大きな興奮を覚えていた。
理性は完全に撃墜された。


つくしも混乱していた。

な、何これ?何これ?
どうなってんの?
触れられただけで、ビリビリと電流が駆け上がった。
いままでと全然違う。
今と比べたら、エマだった時は一枚服を着ていたような感覚。
記憶が戻っただけで、感じ方ってこんなに違うの?


つくしの混乱をよそに、司はまだ息を整えているエマをまた抱き上げると、今度は自分の部屋に入っていった。




*****




司はエマをベッドに横たえた。

『なぁ、お前を抱きたい。いいか? ってかもう待てねぇ。』

司はエマの首筋に吸い付いた。
それがつくしだとも思わずに。

『ちょ、ちょっと待って!ダメ!やめて!』
『なんでだよ?お前だって俺が欲しいだろ?』
『だって、退院したばかりだよ?』
『わかってる。だからゆっくりやる。優しくやるから、頼む!』

今度は司が懇願する番だ。


つくしは迷っていた。
迷うこと自体に困惑していた。
なぜ即座に拒否することができないのか。

彼女の中にはエマがいた。
エマは司を恋しがっている。
つくしは自分の心を探った。

10年前の出会いから、カナダの別れ
NYでの再会
エマを愛した司

司との今日までのすべてを思い起こした。
その心は不思議と凪いでいた。


いま、私が求めるものは…


『…わかった。でもお願いがあるの。』
『なんだよ? 』
『灯りを消して。』
『全部か? 』
『そう、全部。』
『今まで消したことないだろ? 』
『今までは今まで! 今日は消して。じゃないとしない。』
『わかったよ! 』

司は灯りを消し、服を脱いだ。
月が雲に隠れているため、室内は目が慣れるまでは真っ暗闇だ。

『ちょっと、何やってんのよ!』

エマは目を手で覆っている。

『何って脱いだんだよ。暗くて見えねーだろ? 』
『見えなくても一言断ってよ。』
『今更なに言ってんだ? 変なやつ。お前も脱げよ。俺が脱がしてやる。』

司は慣れた手つきでエマの服を脱がせにかかった。

『ちょ、やめて! 自分で脱ぐから! 』

つくしは素早く脱ぐと、さっとシーツに潜った。

『明かりは消したんだ。出てこいよ。』

つくしはおずおずと顔を出し、身体を隠したままベッドに座ると、ゆっくりとシーツを下ろした。
その時、サーっと雲が晴れ、薄いカーテンを透かして月光が差し込んだ。
つくしの白い裸体が月光に照らされ、まるで発光しているように浮かび上がった。
そのあまりの美しさに、司は息を呑んだ。
何度も見てきたのに、今夜は何もかもが違っていた。
クリスマスのあの日のエマも美しかったが、今夜はあの時以上だった。

司は、恥ずかしさに頬を染めながら背けているつくしの顔に手を伸ばすと、自分に向けさせた。

『綺麗だ。今までで一番綺麗だ。』
『・・・・・ねぇ、もう一つお願いがあるの。』

つくしの瞳にも月光が映って、その漆黒の瞳は綺羅星のごとく輝いた。

『言ってみろ。』
『・・・初めてだと思って。』
『!?』
『今夜の私は初めてだと思って……抱いて…』

その瞳に吸い寄せられる。

『…わかった。』


つくしは気づいた。

エマだけじゃない。
自分も司を愛してしまっていることに。

エマだけじゃない。
自分も司を求めていることに。

いま私が求めるものは、この人の愛
愛されたい
エマじゃなく、つくしとして


月光に照らされた2人の身体は重なり合った。









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2019.01.03
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2019.01.04




つくしは少し眠り、髪を梳かれている感覚で目を開けた

『目が覚めたか?』
『ん、』
『今夜はどうしたんだ? 別人みたいだったぞ。』

ギクッ

『そう? やっぱりまだ完全じゃなかったからかな。』

言いながらつくしはシーツに隠れた。

つくしは気恥ずかしかった。
牧野つくしとしては初体験だったし、その相手がまさかの司だったから。
そしてその司への愛が、エマだけでなく自分の中にもあることを認めなければならなかった。

『なんで隠れるんだよ。』
『え、なんでかな。』

すると司もシーツに潜ってきた。
シーツの中で目が合う。
つくしは真っ赤だ。

『ちょ、ちょっと、見ないでよ!』
『マジでどうしたんだ? めちゃくちゃ可愛いぞ。』

司はたまらなくなってエマを抱き寄せた。

『なぁ、もう一回は無理か? 』
『あ、あんたは鬼か!今日、退院したんだって。死にかけてまだ2日だよ? お腹も空いたし。』
『そうか、そうだよな。無理だよな。』
『ちょっと、当たってる、なんか当たってるって。』
『このままちょっと入れていいか? 』
『バカ! ダメ、あ、んんん、はぁ、ああん、ダメェ… 』





結局、2回目も終わってシャワーを浴び、つくしがダイニングルームにたどり着けた時には23時を回っていた。
数時間前に運ばれてきたマンション専用ルームサービスのデリバリーを食べている。

『悪かったって。』
『絶対、本気じゃないでしょ。』
『本気だって。ちょっと理性が飛んじまった。』
『もともとそんなの持ち合わせてないじゃん。』
『んだよ。お前も悪いんだぞ。俺を誘うから。』
『あたしがいつ誘ったのよ! 』
『俺が触っただけでイッたくせに。』
『うるっさいわね! 早く食べなさいよ。』

エマとの会話が変化した。
エマはいつもどこか冷静で、斜に構えたようなところがあった。
でも今夜のエマは感情豊かで素直なのに意地っ張りで、そこがまた可愛い。

『今夜は自分の部屋で寝るから。』
『は? なんでだよ? 』
『わかるでしょ? あたしは疲れてんの。まだ病み上がりなの。ひとりでゆっくり眠りたいのよ。』
『俺がいたってぐっすり寝てんだろ。』

つくしはフォークを置いて司を正面に見た。

『疲れてるの。わかってよ。心配かけて悪かったと思ってる。今回も、10年前も。ごめんなさい。もう2度とこんなことは絶対にしないから。』
『・・・わかった。ゆっくり休め。』

司は立ち上がってエマの頭をクシャッと撫でると、ダイニングを出て行った。


「はぁぁぁ〜〜」

つくしは両手を組んで額に当て、テーブルに肘をついて精神的疲労のため息をついた。

これからどうしたらいいんだろう。
道明寺を好きだって自覚した。
したけど、道明寺が求めてるのはエマで、私じゃない。

とりあえず、この生活を続けてみよう。
言い出せるタイミングがあるかもしれない。
・・・エマを消したこと、許してもらえないかもしれないけど。



互いに求めるものは一つなのに、その思惑が重なり合うことはない。
つくしにとって苦しい時間の始まりだった。








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2019.01.05
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