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はじめまして
当ブログの主、ノナと申します。

花より男子の二次小説を書いてます。
CPは司×つくしです。

基本的にハッピーエンドを目指してますが、キャラのイメージを崩したくない方や、原作以外のストーリーに抵抗がある方は閲覧をお控えください。

また、作中に登場する人物、団体等については、実在の人物・団体等とは一切関係ありません。

原作者さま、および出版社さまとは無関係です。
あくまでも個人的趣味で書いておりますので、登場人物や組織・社会設定などの詳細は適当です。ご容赦ください。
また、内容の無断転載、複製、二次使用等はご遠慮ください。






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2025.01.01




「マンハッタン・ラプソディ」拍手コメントへの御礼です。

R様、S様、T様、H様、H様、M様

まとめての御礼で失礼いたします。
いつも拍手コメント、ありがとうございます!!
とても励みになります。

先はまだまだ長いですが、これからも読んでくださると嬉しいです!


                     nona






2018.11.17




『それじゃ、行ってくるね。』

翌週、火曜日の朝。
今日からエマはLAでガブリエラのツアーファイナルの同行撮影だ。

『今日の分。』

司が身をかがめた。

『月曜日に帰る。』

そう言って司に軽いキスをした。

『ああ。待ってる』



エマが出て行くと、司はLAの椿をコールした。

「いま出た。ああ、よろしく頼む。くれぐれも男は近づけないでくれよ。」
〈わかってるわよ。あー、私も楽しみ〜。つくしちゃんと久しぶりに呑めるわ〉
「おい、つくしじゃねえからな!エマだぞ!」
〈わかってるってぇ。しつこい男は嫌われるわよ〉



*****



NY 司のオフィス


コンコン

『入れ』
「副社長、社長がお呼びです。」
「今か?」
「はい。」
「チッ」

社長室は司のオフィスの上のフロアだった。
秘書・真島を伴い、ジャケットを着て急ぐ。

コンコン

『どうぞ』
「社長、お呼びでしょうか。」
「司さん、お座りになって。」

司のオフィスよりさらに広い楓のオフィス。
ソファに座り、楓の言葉を待つ。
楓は立ち上がり、司に近づいた。

「司さん、あなたも来年には28、30も近いわね。」

歳の話か。何が言いたい?

「はい。」
「結婚。考えていらっしゃるの?」

来たか

「いえ、まだ。」

楓が司の向かい側に座り、脚を組む。

「お付き合いしている方はいないのかしら?」
「いません。」
「・・・来年、28歳の誕生日までに見つけなさい。」
「は?」
「あなたの28歳の誕生日に婚約を発表し、30歳までに結婚してもらいます。」
「人の人生設計を勝手に描くわけですか。」
「キリスト教社会は婚姻にシビアよ。30にもなって初婚もまだ、恋人もいないなんて企業イメージにはマイナスです。その後、離婚することになっても構わないわ。30歳までに初婚を済ませなさい。」
「相手は?」
「それは自分で見つけなさい。」
「あなたにしては寛容ですね。」
「王族でもバツイチ子持ちと結婚する時代よ。娼婦でなければいいわ。」
「わかりました。必ず見つけます。」
「・・・幸運を祈るわ。」

母親の最後の言葉に困惑しながら、司は楓のオフィスを出た。



「社長はどうしたんだ?頭のネジが緩んでんじゃねーのか?」

後ろを歩く真島に呟いた。

「社長なりのエールですよ。司様、お好きな方がいらっしゃるんですよね?例のエマ・ホワイトさんですか?私もできることはご協力させていただきますので、なんなりとおっしゃってください。」

真島は顔が綻んでいた。

「なんでそう思う?」
「わかりますよぉ。お仕事は快調ですし、急にお優しくなられましたし、目の光って言うんですかね、違いますし。社長は司様を変化させた女性に興味を持たれてるんですよ。」
「なに?」

振り向いた司は真島のよく知る眼光が鋭く、冷たさを感じさせる男だった。

「えー、コホン。失礼しました。今日はこの後、報道協会主催のフォトコンテスト入賞者レセプションです。うちがスポンサーになっていたコンテストで、ウィリアム・ターナーを入賞させました。副社長のご出席をお願いします。」

「ああ、あの件か。わかった。」



ニューヨーク州は2011年に同性婚を合法化した。
全米で6番目の早さだ。
そのためマンハッタンで行われるパーティーでは「パートナー同伴」をわざわざ規定することは既にほとんどなかったし、あったとしてもパートナー=異性という暗黙の了解もなかった。

司は交際女性がいた時でも同伴はせず、男性秘書を伴なうか単独で出席するのが常だった。



*****



報道写真センターで行われる全米報道協会フォトジャーナリストコンテストの入賞者レセプション。
司はスポンサーの一社として真島とともに出席した。
司は道明寺の後継者という立場でも、その容姿でもNY社交界の華だ。
どんなパーティーでも挨拶の波は途切れない。
それは報道に携わる人間も例外ではなかった。

通過儀礼がひと通り終わったころ、1人の男が近づいてきた。
ウィリアム・ターナー
どこかつくしの初恋の男を思わせる、茶色のサラ髪。
司は真島に待機を指示して会場の外のホールに出た。


『Mr.道明寺、その節はどうも』
『ああ。新しい生活はどうだ。』
『ふ、エマのいない生活なんて楽しいわけないでしょう。』
『未練がましいな。こうして成果が出たんだ。前を向いたらどうだ。』
『あなたはエマを得た。いま、一番楽しいでしょう?』
『ただの友人だ。』
『ふはは、それが落とし穴なんですよ。』
『なに?』
『彼女のそばにいて、友人で終われるはずはない。必ず本気になる。』

フン、言われなくても俺は9年前から本気だ。年季が違うんだよ。

『でも、楽しいのは今のうちですよ。』
『負け惜しみか?』

ウィリアム・ターナーはホールの大窓から見える空に目を向けた。
午後の会なので、まだ青々とした夏の空が広がっている。

『彼女は蜜だ。あらゆる男を誘う花だ。彼女と知り合う男は必ず彼女に本気になる。容姿なんてどこにでもいそうなのに、あの瞳にみつめられ、あの無垢さに包まれ、あの無防備さを晒されれば、どんな男もあのすべらかな肌に触れたくなるんだ。あなたに待っているのは嫉妬の蟻地獄ですよ。次にいつ誰が奪いにくるか、それを待つだけの身になるんですから。』
『今更だな。彼女が本気で愛した男ならそんな心配はしなくていいんじゃないのか?』
『確かに彼女はまだ愛を知らない。その愛を受けるのがあなただと?』
『そうなる。』
『さすが!“ 氷の貴公子 ”と呼ばれるだけある。でもどうかな。』
『まだ何か言いたいのか。』
『彼女は記憶の奥底ですでに愛してる男がいる。だから誰も愛せないんだ。その記憶が甦ったら、もしくはその男と再会したら・・・彼女の愛は解き放たれるでしょうね。では、私はこれで。タイトルをありがとうございました。』

そう言って持っていたトロフィーを掲げるとウィリアム・ターナーは去っていった。


司はその後ろ姿を睨みながら、シャンパングラスを持つ手に思わず力が入った。

パキッ

グラスに亀裂が入り、液体が司の手首を伝った。


“ 彼女は記憶の奥底ですでに愛してる男がいる ”


「くそっ!!」

バリンッ!

司の手の中でグラスは割れ、手首を伝う液体に血が混じった。


絶対に記憶は取り戻させない。
そしで出逢わせない。


司の中の嫉妬の炎が、我が身を焦がさんばかりに燃え上がった。








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2018.11.16




ツカサがあんなことを言うから、結局やっぱり全部捨てた。
だから着るものがない。
今は夏だからいいけど、冬になったらどうすんだ?
今日は独立記念日、祝日だ。
街中がお祭り状態。
でもカナダ人の私にはイマイチ乗れない。

こんな日はせっかくセントラルパークが目の前にあるんだから、活用しなきゃ。


『ツカサー?』

朝の7時。
リビングを覗くけどいない。
ツカサはまだ寝てる?
それとも祝日なのに出勤したのかな?
いや、独立記念日は特別なはず。
さすがにツカサの部屋をノックするのは憚られる。
休んでるかもしれないのに、叩き起こすのもね。
友達っていっても線引きは大事よね。


ダイニングテーブルにメモを残そう。

“ セントラルパークを散策してくる ”

これでよし。
サングラスをかけてカメラを持って、軽い散歩でもしてこよう。



*****



起きたら7時を回ったところだ。
今日は独立記念日だからさすがにオフだ。
エマはあれからどうした?

『エマ?』

昨日の今日で部屋は覗けない。
あー、俺またやっちまったな。
あれほど今回は慎重に、大切にって思ってたのに、嫉妬には勝てない
あいつの体を他の男が包んでいるのが耐えられなかった。


「ん?」

ダイニングテーブルに紙片を発見。

“ セントラルパークを散策してくる ”

「マジかよ…」

あいつ、着るものあったか?
結局、全部袋に詰めてあったからな。

追いかけたとしても広大なセントラルパークで出会える確率は低い。
でも、追いかけずにはいられない。

着替えて、財布、ケータイ、サングラス。よし。

「牧野、待ってろよ。」



*****



パークに入って道なりに進む。
ベセスダ・テラスの先の噴水を目指そう。
朝が早いけど夏だから、ランニングしてる人や早速ピクニックに来た人がそこかしこにいる。
夏の朝日を浴びた木々とビル。この対比がNYだよね。

カシャッ カシャッ

このシャッター音が好き。
何を撮っても誰を撮っても同じ音。
真っ直ぐに、正直に、そのままが写る。

楽しくなってきた。
あっ!ベセスダ・テラスだ。
もう演奏してる人がいる。
ここはいろんな楽器の演奏が聴ける。
みんなストリートミュージシャンとして自分の自慢の楽器で思い思いの演奏を楽しんでる。

よし、私はあのチェロが気に入った。
25セントコインを投げ入れた。
朝からステキな演奏、ありがとう。

噴水まで来た。
水に反射する光が眩しい!
サングラスかけてきてよかった。
噴水の縁に座って水を捉える。

そのとき、最近、聞き慣れた声がした。



*****



どこに向かった?
あいつのことだ深く考えずに道なりに進んでるはずだ。
だとしたらマンションからすぐの入り口からたどり着けるベセスダ・テラスの先の噴水だな。

夏の日差しが照りつける。
朝からパークを歩くなんて初めてかもしれねぇ。
ってか、パークに入るのももしかして初めてか?
俺にとってここはただ眺めるところだから。

追いつきたくて早足になる。
ま、長さが違うから追いつけるよな。

ベセスダ・テラスが見えてきた。
ウダツの上がらねぇ演奏家の卵が朝からストリートで腕試しか。
チェロの野郎、色目使ってきやがった。
ここNYじゃウゼェのは女ばかりじゃない。
同じ数だけ男もウゼェ。

ベセスダ・テラスを抜けた先には、欲しくてたまらない女が座ってた



******************



『エマ!』

サングラスを外して近づくと、振り向いたエマを見て司は絶句した。

『おまっ、なんだよその格好!』

エマは、デニムのショートパンツにブラトップのキャミソール姿。足元は素足にクロックスだ。
胸にはカメラがぶら下がってる。
髪はクリップでアップにして、白い縁のサングラスをしていた。



『ツカサ!よくわかったねー』

サングラスを頭に掛け直して、エマはニコッとして手招きした。

『こっち、こっち』

自分の横を指し示して座れの合図を送る。

『エマ、だから露出の多い格好はやめろ。』
『あのさぁ、ツカサ。ここはNYなんだよ?日本じゃないの。この程度はもう慣れようよ。誰も気にしないって。』

俺がするんだよ!

『それにさ、昨日ほとんど服を捨てちゃったから着るものないんだよね。今日はこの後買い物に行かなくちゃ。来週の火曜日からの同行もあるし。』

ジロリと司を睨んだ。
うっ。司が一瞬たじろぐ。

『じゃあ、俺も行く。いっしょに選んだる。』
『メゾンじゃないからね。ショップに行くからね。それもモールだよ。人だらけだよ?貸切にはできないよ?それでも?』
『ああ、それでも、だ。SPつきだけどな。』
『・・・・はぁ、わかった。あーあ、ツカサと知り合ってから何回ため息ついてるかな〜』
『それは俺のセリフだ!』
『なんでよ?なんでツカサがため息つくのよ?』
『お前が鈍感で無防備だからだよ。』
『私の鈍感がなんでツカサに関係あるのよ。』

それが鈍感だっつーんだよ!

『わからなきゃいい。さ、帰るぞ。』
『やだよー!まだここにいたい。』
『あ?何がしたくていたいんだ?』
『あそこの家族を観察してる。』

円形の噴水を囲んでいる人々のなかの一組の家族。
パパとママとティーンエイジャーの子供たち。

『家族って憧れる。私のママってどんな人かな。』

ギクッ。司の体が揺れる。エマは気づかない。

『時々、無性にママが恋しい。本当の家族に会ってみたい。でも、いるかわかんないわよね。もう死んじゃってるかもしれないわよね。』

えへへ、とエマは笑顔を司に向けた。

『ツカサのママってどんな人?』
『ママ?鉄の女だ。』
『アイアン・ウーマン?正義の味方?』
『そっちじゃねぇ。冷徹で冷酷で、非情。そこからついたアダ名だ。』
『冷徹で冷酷な女性?ツカサのママが!?』
『ああ。』
『想像つかないわ。だってツカサは優しいじゃない。』

まだ家族を見つめているエマの横顔を司は信じられない思いで見つめた。

『誰にでもだと思うなよ。お前にだけだ。』
『え?私にだけ?』
『友達、だろ?』
『フフッ、そうだね。』

俺はお前にも優しくなんてない。
お前の正体を知りながら、自分のエゴでお前をエマ・ホワイトに縛り付けてる。
本当は牧野つくしなのに。
日本ではお前が死んだと思って家族が過ごしてるのに。
お前の母ちゃん、生きてるぞ。


エマはポツポツと話し始めた。

『家族が欲しかったんだと思う。だから「この人かもしれない」って、私を愛してくれるならこの人と家族になれるかもしれないって思ったのかも、ね。』
『それは友達と寝たことか?』

エマは司を見てフッと目を細めた。

『そう。でも自分も同じだけ愛さなきゃ家族は成立しないってことに気づいてなかった。私が本気で愛する人と出会えたらその時に初めて、その人と家族になれるかどうか考えなきゃいけなかったんだよね。』

司は言葉が出てこなかった。

記憶のない牧野。
苦しんでる。
俺はまたこいつに酷いことをしてるのかもしれない。
何も成長してないのかもしれない。
あの時と同じなのか?

『ねえ、ツカサはさ、一回だけ本気になったことがあるんでしょ?どんな人?ってか、待って、なんで結婚してないの?』
『あ?そこ不思議か?』
『だって、本気になった女性がいるってことは、結婚も考えたんだよね?え?え?ちょっと待って、フラれたの?』
『……フラれたし、裏切られたし、いなくなったし。』
『ひえー、ツカサでもそんな経験するのね。神はやっぱり公平だったんだねぇ。』
『なんだ、そりゃ』

司はクスッと笑った。
その時、エマの心がトクンと跳ねた。

『あ、いや。そっか。ごめん。なんか変なこと聞いちゃって。』

司から目を逸らして噴水の水面を見た。

やだ、なにこれ。
顔が熱い。夏のせいだ。うん、そうだ。

水面を見ているエマの横顔を、司が見ていた。

『別に、昔の話だし。ってか、じゃあお前だったらどうなんだ?俺がお前を好きだって言ったら、即座にYesか?』
『えっ?』

エマは弾かれたように司を見上げた。
探るような目で自分を見ている司に出会う。

『どうなんだよ?』
『ツカサが私を?私がツカサを?・・・考えたことなかった。』
『ほらな。俺が何をどれだけ持っていようと、恋ってのは条件でするものじゃねぇんだよ。心が心を選ぶんだ。だから俺はフラれたんだろうよ。』
『その女性の心がツカサの心を選ばなかったってこと?』
『・・・そう、なんだろうな。その時は。』

そう、あの時はそうだった。
でも今は、いまはあの時と違うはずだ。
例え記憶から遠ざけていても、俺はあの時とは違う。
今度こそ、牧野に俺を選ばせる。

『ふーん。難しいね。』
『さ、今度こそ帰るぞ。遅い朝飯食って、買い物だ。』

歩き出した司をエマが呼び止めた。

『ツカサーー!!』
『あ?』

振り返った司にエマがカメラを構える。

『笑ってよ!』
『おい、やめろ。こんなとこで笑えるか!』
『NY一のハンサムが、笑えば世界一になるから!』
『は?何言ってんだ。俺はすでに世界一だ!』

笑った司にエマは夢中でシャッターを切った。








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2018.11.15




シャワーで火照りを鎮め、司はリビングに戻った。
エマは長袖カットソーとカプリパンツに着替えていた。

『大丈夫?疲れてるなら話は次の機会でもいいけど。』

コーヒーを差し出しながらエマは司の顔色を見つめた。

『いや、もう大丈夫だ。で、パリがキャンセルだって?』

途端にエマの大きな黒い瞳はキラキラと輝いて、すべらかな頬が高揚してバラ色に染まる。

『そうなの!ツカサんとこの仕事で、ガブリエラのツアーファイナルに同行することになって、LAに行くのよ!来週の火曜日から。リリーにはわかってもらったわ。「飛躍のチャンスだから頑張って」って言ってくれた。コレクションはNYでもあるし。ま、もちろんパリも行きたかったんだけどね。いやー、私、ファンなんだよね、ガブリエラの。ファイナルなんてチケット取れないのに、内側から同行できるなんて夢みたい。ツカサのお陰よ。ありがとう!』

エマは余程うれしいらしく、ニコニコしながら話している。

『ふーん、そりゃよかったじゃんか。LAなら俺の姉貴が住んでるから、そこに滞在しろよ。姉ちゃんには会ったことあったよな?』
『うん、ツバキさんだっけ?すっごい美人のお姉さん。でもそれは悪いよ。ホテル取ってくれるらしいから大丈夫だよ。』
『いや、お前は知らないだろうけど、姉貴はお前のファンだ。LA行くのに姉ちゃんとこを素通りなんて許さねーと思う。』
『ファン?私の作品を見てくれたの?』
『ん、ああ、そんなとこだ。連絡しておくから絶対に姉ちゃんとこにしろ。いいな。』
『ツカサって、強引だよね。流されないようにしないと、危険だわ。』
『フン』

お前の方がよっぽどキケンだよ。


パリのキャンセルはもちろん司の指示だった。
なんとしても類との邂逅を避けなければならない。
類と出会えば、エマはきっと類に惚れる。

エマが未だに恋をしたことがないのは、類との出逢いを待っているのではないかと、司には思えた。





『そういえば、処分したか?』
『え?何を?』
『昔の男からの貢ぎ物だよ。』
『あー、あれね。まだ。』

司の額に青筋が立った。

『んだと?わかった。今からするぞ。全部出してこい。』
『えー、いいよ。私、日本人じゃないし。』

日本人なんだよっ!

『いや、ダメだ。出さないなら俺が部屋に入るぞ。』

司は立ち上がった。

『わかった、わかったから。はぁ、待ってて。』

エマは部屋から自分の持つアクセサリーを持ち出してきた。

『ロクなもんねぇな。で、この中で自分で買ったもんとジェフに買ってもらったもんだけ避けろ。』

そう言われてエマが避けたのは全体の2割程度だった。

『これだけ。あとは全部貰い物。』
『・・・貰い物じゃなくて、貢ぎ物な。』
『私としては、押し付け物なのもたくさんあるけど?』

司の頬がピクピクと引き攣った。

『その押し付け物の見返りは何を差し出したんだ?』
『さあね。体じゃないから安心して。』
『お前・・・これだけか?』
『は?』
『服は?』
『・・・・』
『・・・出せ。』
『いや、待って!服はいいじゃない。服に魂なんて宿らないから。あれはただの布だから。』

司は自分の家の中に他の男のカケラが紛れていることが耐えられなかった。
自分とエマとの空間を2人だけの空気で満たしたかった。
司は立ち上がるとさっさと廊下を歩き、エマの部屋に入った。

『ちょっと!』

エマのクローゼットを開け、中のものをベッドに出していく。

『わかった、わかったから!もう!!なんなのよ!!』

そう言って今度は服を分け出した。

『明日っから何着りゃいいのよ。ブツブツ……あっ、それはジェフがプロムのために買ってくれたドレスだから!そのドレスでプロムクイーンになったんだから!』

本当はジェフからのものも許したくなかったが、彼はエマの父親だ。

結局、クローゼットがガラガラになるほど、エマは服もバッグも男から貢がれていた。

『私のサイズって大人用ではなかなかないのよ。だから見つけたら買ってくれてたの。別に他意はないわよ。』
『ないわけないだろ。鈍感もいい加減にしやがれ。』

司の言葉に、エマは瞳に怒りを宿して司に食ってかかった。

『自分がそうだからってみんなもそうだと思うからでしょ!そんなに言うならこれも持って行きなさいよ!』

エマは今着ている服を脱いで司に投げつけた。

『お、おい!何してんだ!やめろ!わかったから。』

ブラとショーツだけの姿になって晒された白磁のような肌を司は直視できずにベッドからシーツをはがし、エマを包んで姿を隠した。

『ツカサにもらったものも返す!だってそういうことなんでしょ!?』
『ぐっ』

とんだ藪蛇で、司は嫉妬のコントロールに失敗したことをやっと思い知った。




シーツにくるまったまま、エマはベッドに丸くなり、不貞腐れている。
司は冷静さを取り戻し、ベッドに腰掛けシーツの上からエマの腕を撫でた。

『なぁ、悪かった。こっち向けよ。』
『やだ。』
『今日の分のキスがまだだぞ。』

それを聞いたエマは『はぁぁ』とため息を漏らし、シーツから頭だけを出した状態でベッドの上に膝立ちで起き上がり司に向き合うと、両手で掴んでいたシーツをバッと広げた。
その瞬間、司の視界には下着姿のエマが映り、息を呑んだと同時にシーツに閉じ込められていたエマの甘い香りを強く吸い込んだ。
そしてエマはシーツを持ったまま自分と司を包むようにその首に腕を回し、唇に軽くキスをした。


司は目を閉じてしばらく脳の痺れに身を任せた。
彼女が好きで好きでたまらない。
もうどうにでもなれと襲ってしまいたい衝動が全身を駆け巡る。
我に返るのに何秒そうしていたか。
エマはまたシーツにくるまって、そのままベッドに横になっていた。


『・・・おやすみ。』

司は明かりを消して部屋を出た。







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2018.11.14
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