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はじめまして
当ブログの主、nona(ノナ)と申します。


「花より男子」原作漫画の二次物語を書いています。
カップリングは×つくしです。

漫画「花より男子」が大好きで、この物語を生み出してくださった原作者さまに敬意を表しつつ、原作の設定、登場人物を拝借し、私独自の世界観で物語をお届けします。
ですので司が酷い男になったり、つくしを裏切ったり、つくしが男好きになったりするかもしれません。
結末に関しても基本的にはハッピーエンドですが、そこに向かう経過では悲劇が待っているかもしれません。

このように、登場人物のイメージを崩したくない方、原作者さまが描く司やつくしやその他の登場人物のキャラクター以外は受け入れられない方、また、原作の流れから逸脱したストーリーに抵抗がある方は自己責任で閲覧をお願いします。
読んでから「イメージと違う!」とのご批判は受け付けません。

当ブログ、およびブログ主は原作者さま、および出版社さまとは無関係です。
また、作中に登場する人物、団体等については、実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
あくまでも個人的趣味で書いておりますので、登場人物や組織・社会設定などの詳細は想像の範囲です。ご容赦ください。

また、内容の無断転載・複製・悪意ある二次使用、あるいは引用要件を満たさない引用等はお断り致します。



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以上、ご了承ただける方のみ、物語をお楽しみください。

よろしくお願い致します。

               nona











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2030.12.31
注)今回の分岐は司の記憶障害がわかった時点です。
その後のもろもろは起こっていない設定です。






抵抗も虚しく、セダン型高級車の後部座席に乗せられたつくしは、この状況をどうしても飲み込めずにいた。
隣の男は何も言わない。
それが余計につくしを混乱させていた。

何であそこにいたの?
私を助けてくれたのは偶然?
類の話をしてた?
俺の女とか一目惚れとか、何の話をしてたの?
もしかして記憶が戻ったの??

しかしそれを確かめる気は、もうつくしにはない。
やっと、やっと司の呪縛から解き放たれて、さあ、新しく踏み出そうとしたその一歩目を挫かれた怒りが沸々と湧き上がっていた。


「ここで結構です。下ろしてください。」


つくしは毅然とした声で運転手に告げたが、運転手からは何のリアクションもない。

ああ、そうだ。
この人たちは主人の言うことしか聞かないんだ。

では、と、司に向くと司もこちらを見ていた。


「あの、」「なぁ、」


同時に話し始めて、同時に一瞬間を開けたが、つくしが先に話しはじめた。


「助けていただいてありがとうございました。私はもう大丈夫ですので、ここで下ろしてください。」


司の目をまっすぐに見たのは負けたくないから。
惚れただなんだの言葉に流されたくもない。
過去の男に振り回されるのは金輪際、御免だった。
しかし司は司だ。
つくしの記憶を失くした以外は1ミリも変わっていない。


「なぁ、シズク、お前、マキノっつーんだな。フルネームは?」


負けたくないのに、流されたくないのに、振り回されたくないのに、その言葉に落胆した自分に気づいて、つくしは悔しかった。

あーあ、あたしってホントにバカ。
期待しちゃってたんじゃん。
思い出すわけないのに。
戻ってくるわけないのに。

何だかさっきまでの気負いも虚しく感じたつくしは力が抜け、革張りのヘッドレストに頭を預けて車内の黒い天井に向いた。


「ハァ…牧野つくし」

「つくし、シズク…上手く考えたな。」

「あんたの名前は…道明寺…さん…」


天井を向いたままつくしは気だるげに答えた。


「ああ、やっぱりお前も知ってたか。」

「うん、知ってたよ。」


では、あの時の涙の意味は?
なぜあれからコンタクトを取ってこなかった?

つくしについて知りたいことは山ほどあった。
いや、彼女のことは何もかも全て知りたかった。
知りたすぎて、何から問えばいいのかわからないくらいだ。
だから沈黙した司に、つくしの方が問いかけた。


「なんであそこにいたの?」

「それは…仕事で行ってて、たまたま…見つけて…」


探さない、というのがコールガールのルールだ。
それを破ったことを知られたくなかった。
愚鈍な男だと思われたくなかったし、もっと運命的だと印象付けたかったのかもしれない。


「視察だったんだよ。そしたらお前がいたから驚いた。」

「あたしだってよくわかったね。」

「一晩過ごしただろ。……忘れねぇよ。」

「ふーん…」


つくしは天井を見つめたままで、司を見ようとしなかった。
司は戸惑っていた。
つくしの態度に、自分との温度差に、何より自分の中にあった願望に。
無意識にシズクも自分との再会を望んでいると思っていたのだ。
だから会えば喜んでくれると思っていた。
でも、今のつくしの態度から感じられるのは疎ましさだけで、喜びのカケラも感じられなかった。


「あの男、夏目つったか。好きになってたのか?」

「関係ないでしょ。」

「ある。お前は新しい恋をするって言ってたよな? その相手があいつか?」


つくしの中に怒りが再燃した。
今日は朝からすべてが上手くいっていた。
新しい自分に出会い、新しい関係に希望を見出し、新たな出発の予感がしていたのはつい先ほどのことだったのに、それも全部、司がぶち壊した。


「なんで…」

「え?」


つくしは身を起こし、司に向いた。
その目は怒りで燃え上がっていた。


「なんでよ! なんで邪魔したのよ!! やっと忘れられると思ったのに、やっと前を向いて生きていけると思ったのに! 何してくれてんのよ!!」


その煉炎が見えるかの如く怒りに燃えた瞳は、すぐに涙で満たされ、萎んでいった。


「うっ…なんでよ…なんであたしを解放してくれないのよ。」


パタ…と、つくしの涙がシートに落ちる。
つくしの涙。
司は覚えている人生の中では、初めて罪悪感というものを感じていた。
口許を手で押さえて嗚咽するつくしの腕を引き、シートを滑らせるように抱き寄せた。


「悪かった。また会いたいと思ってたんだ。新しい恋の相手は俺にしとけって言いたくて…俺が忘れさせてやるから。」


その言葉につくしはますます泣き出した。
「バカ…バカ…」と司をなじりながら。
そんなつくしの背を、司はいつまでも撫で続けた。












次回更新は未定です。
がんばります


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2022.03.27






つくしはレストランでキャラクターのショーとコース料理を堪能して出てきた。


「はぁ〜、美味しかったし、ショーも素敵でした。ご馳走様でした。」

「気に入ってくれてよかった。頑張って予約した甲斐があるよ。」


微笑み合う二人の間には穏やかな空気が流れている。
つくしは、自分が求めているのはこういう空気感だと思った。
穏やかに、少しずつ醸成されていく恋心。
優しい時間を重ねていって、いつか強い気持ちで繋がることができたら…夏目とならできるかもしれない。
そんな期待が徐々に膨らんでいた。


「次はどこに行く?」

「そうですねぇ…お城はどうですか? あそこのガラス工房が見たいです。」

「いいね。そうしよう。」


レストランを出た二人はまた手を繋いで歩き出した。
時刻は昼を回ったところ。
もうすぐ始まる昼のパレードのために、通路では場所取りをする人が増え始めていた。
そのためか、いつもは人気のお城に向かう人波も心なしか少ない。
これはゆっくりと見られるかもしれないね、と夏目と話しながら正面の大階段を上がっていた時だった。
背後の広場がにわかに騒然となり、誰かが「ドラマの撮影だって!」と叫んだ。
すると、つくしたちの2段前を登っていたカップルが立ち止まり、振り返ったかと思ったら急に階段を降り始めたのだ。


「きゃっ」


と、つくしが叫んだ次には夏目の「牧野さん!」と叫ぶ声がつくしには聞こえた。
カップルにぶつかられたつくしは階段を踏み外し、夏目と繋いでいた手が離れた。
そして視界には、驚いている夏目の顔と城の尖塔と青い空が順番に入ってきた。
スローモーションのように流れる景色を見ながら、つくしは自分が仰向けに階段を落ちようとしていることを理解した。




***




その数秒前、司は男と手を繋ぎ、城の大階段にさしかかったつくしを見つけた。

シズク…!
もう新しい恋を見つけたのか?
そいつが相手か?


「させねぇ…!」


つくしに向かって走る。
司の視線はつくしにロックオンされ、その周囲は灰色になって消えていく。
走る…走る…走る…
追いかけてくるSPも、まとわりつく衆人も、何もかも振り払いながら司は走る。
つくしが階段の中程に差し掛かり、司はその下まで追いついた時だった。


「きゃっ」

「牧野さん!」


その声と同時に……シズクが……落ちてきた。


「くっ!!」


ボスッッ!


階段を駆け上がり、間一髪間に合い、足を踏ん張ってつくしを背中から受け止めた。

やっと出会えた。
やっと捕まえた。
誰にも渡さない。

そんな思いで強く抱きしめた。


「牧野さん! 大丈夫!?」


夏目が駆け降りてきてつくしに手を伸ばした。
司は触れさせまいとつくしを横抱きに抱え、そのまま階段を降り始めた。


「ちょっと、あんた! 待て!」


夏目は尚も駆け降り、司の正面に回った。


「た、助けてくれたのはありがとう! でも、もういいから彼女を放してくれ!」


司は腕の中のつくしの顔を見下ろした。
あの夜と同じ黒きセレンディバイトは呆気に取られたように司を見つめ、唇が小刻みに震えていた。

やっぱり間違いない。
あの夜のシズクだ。
ここにいると思ってた。
見つけられると思ってた。


「『運命の女ならきっとまた会える』類の言った通りだったな。」


司の言葉につくしは眉根を寄せた。
そして何か言葉を発しようとした時、先に発したのは夏目だった。


「何言ってんだ!? その子を下ろせ!」

「お前はこいつの何だ。」


夏目が怯んだのは、冷たい表情で見下ろされ、威圧されたからではない。
自分の立場の曖昧さを突きつけられたからだ。


「俺は!…俺は、彼女の…か、彼氏…候補だ。」

「ハッ!」


司の嘲笑に夏目はカッとなった。
が、次の言葉に怒りは困惑に変わった。


「こいつは俺の女だ。」

「はぁ!???」


夏目は今度はつくしに問いかけた。


「牧野さん、この人と知り合い?」


急転直下の事態に混乱していたつくしは、やっと我に返った。
あの夜のことは知られてはいけない。
ならば答えはひとつだ。


「え!? いや、し、知ら…」


つくしの返答に司が被せた。


「一目惚れだ。今日からこいつは俺の婚約者だ。」

「はいぃ???」


思わず突拍子もない奇声を発したのはつくしだった。
夏目の表情はますます険しくなった。
この会話の間、二人の周りは秘書とSPによって囲まれ、警備員が集まり出して周囲の客を遠ざけていた。


「あんた、何を言ってんだ? 一目惚れって、初対面ってことか?」

「そうだ。さっき、俺に落ちてきた一瞬で惚れた。お前なんかに渡さねぇ。」

「ちょっと、からかわないで下さい! 下ろして!」


つくしが暴れても司のホールドは緩まない。


「下さない。絶対に離さねぇ。おい、お前、」

「夏目だ!」

「夏目、俺を知ってるか?」


大河原の若手営業マンが道明寺司を知らないはずがない。
敵にした時の脅威もよく知っていた。
でもだからといって、やすやすと引き下がるわけにはいかない。
何よりつくしは嫌がっている。
彼女のためにはここは男気を見せないと、と、夏目は自分を鼓舞するように拳を握り、大きく息を吸い込んだ。


「知ってる…道明寺…つ、司…だろ!」


敬称を付けるか一瞬迷ったところで勝負はついた。


「なら、自分の立場をわきまえた方がいい。将来を棒に振るか?」

「脅すのかっ!? あんたこそ、自分の立場がわかってるのか!?」

「俺は自分の立場なんかどうでもいい。この女さえ手に入ればいい。俺の持てるもの総動員でこいつをモノにする。お前、その俺に歯向かうほど馬鹿か?」


司の目が冷酷に光る様には、さすがの夏目も背筋に冷たいものを感じざるを得ない。
一瞬、つくしと自分の将来を天秤にかけた。


「ま、牧野さんの意思は、」

「ンなもん、関係ねぇんだよ!!」


司の威圧に耐え兼ねた夏目は、ビクッと震えて一段後ずさった。


「こいつの意思も関係ねぇんだよ。俺がこいつを欲しいんだ。欲しいものを手に入れる。それだけだ。」


その言葉を最後に、つくしを抱えたままの司は階段を降り始めた。
夏目はもう道を開けるしかなかった。
司を中心とした物々しい黒の集団がデスティニーランドのエントランスに向かって行った。










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2022.03.26





つくしはデートを大いに楽しんでいた。

アトラクションに並び、ショップで並び、手を繋いで散策をする。
その度に夏目の気遣いを感じて、彼への好感度がグングンと上がっていくのがわかった。
好きになれるかもしれない。
恋できるかもしれない。
そんな予感がしていた。

夏目に促され、空いているベンチを見つけて小休止することになった。


「牧野さん、どう? 楽しんでる?」

「はい! すごく楽しいです!」

「僕も楽しいよ。もしかして今日は渋々OKしてくれたのかなって心配してたんだけど…」

「え! そんなことないです!」


出張の多い夏目は、清算のために経理部への出入りが多い。
そこで出会ったのが新卒で担当になったつくしだった。
清純そうな雰囲気、新人にして堅実な仕事ぶり、そして可愛い笑顔。
そんなところに惹かれた。
でも今日のつくしは今までと違っていた。
色気というのか、艶というのか、そんなものが漂っている。
これまでになく笑顔も増えて、もしや自分に好意を寄せてくれるようになったのだろうか、そんな気さえした。


「よかった。少しでも僕に興味もってもらえたらなって思ってる。僕ももっと牧野さんのことを知りたいよ。」

「私も、夏目さんのことを知っていきたいです。」


ハニカむように答えたつくしに、夏目は今夜、必ず告白をしようと決めた。


「そろそろお腹空かない?」

「空きましたね。」

「パーク内のレストランを予約してあるんだ。ショーを見ながら食べられるとこ。」

「え! すごい!」


夏目に手を引かれて、つくしは立ち上がった。




***




司は広いパークを足早に移動していた。

今日、ここへ行ってみろと言ったのは滋だ。
「女はデスティニーパークが好きだから〜」なんて言っていたが、もしやシズクを知っている?
まさか、今回の事の顛末を知っているはずはないのに。

しかし司にとって滋は、ただの元婚約者の友人というだけの存在ではなかった。
密かにライバル視している相手だった。
普段、滋は天真爛漫な仮面をかぶっているが、その実、非常にビジネスセンスのある女だ。
時流の読みも的確で、その事業展開は常に進取の気鋭に富んでいた。
その滋がただの思いつきや気まぐれででこんなところに行ってみろと言うわけがない。

シズクは今日、必ずここにいる。

司にはその確信があった。



家族連れやカップルばかりのパーク内を、スーツ姿の超絶美男子が走り回っている。
その後をまたスーツの集団が追いかけ回している。
なんだ、なんだ、ドラマの撮影か?と、司がシズクを探し回る先々で人々は足を止め、スマホを構え、ザワザワとささやき合った。


「いねぇな…」


あらかた見て回ったはずだが、シズクの姿はない。
シズクと出会ったのは夜で、闇の中で絡み合い、夜明け前に別れたのだ。
その姿をはっきりと眺めたわけではなかった。
ましてやあの夜のシズクはきっと特別な装いだったはずだ。
普段はどんな服装をして、どんな顔をしているのか。
何も知らないことに司は初めて気づいた。


「チッ」


だが、それでも見つけられる自信はあった。
根拠はない。
なんの根拠もないが、自分とシズクは引き合う運命だと感じていた。
一度しか会ったことがなくても、それが闇の中だったとしても、彼女が今、どんなに大衆に紛れていたとしても、必ず彼女だと気づき、見つけることができる。
それは野生の勘などという不確かなものではない。
もっと確実な決定事項に思えた。


「じょ、常務っ!」


やっと追いついた秘書とSPが司を取り囲んだ。


「な、なにかお探しなんですか?」


上がった息をどうにか整えようとしている秘書の問いかけも司の耳には入らない。
尚もキョロキョロと周囲を見回している司の視線が一点で止まり、その目が大きく見開かれた。


「いたっ!!!」


と、叫んだが早いか、司はまた走り出した。










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2022.03.25





週末、ミモザ柄のベージュのロングスカートとオフホワイトのアンサンブルニットに着替えたつくしは、久しぶりに心が浮き立つのを感じていた。

いつもより少し色を加えた化粧をして、いつもひとつに束ねている長い髪を今日は自分で緩く巻き、ハーフアップにし、飾りもつけた。

こうして男性と会うのにオシャレをして、鏡の前で化粧に瑕疵がないか最終チェックし、小振りなバッグを持つ。
何もかもつくしには新鮮だった。


「よし! 大丈夫!」


準備が整ったところでタイミングよくスマホが鳴った。


「はい、あ、はい。私もちょうど準備できました。今、出ます。」


夏目はつくしより2歳年上の25歳。
身長は175センチ前後、痩身なイケメンだ。
グローバル戦略営業部に所属し、その実直で誠実な仕事ぶりは滋にも評価されていた。


「つくしー! 今日は帰ってくるのー?」


居間の千恵子が玄関で靴を履いているつくしに声をかけた。
今、牧野家は家族4人で狭いながらもマンションで暮らしている。
滋の力添えによって晴男が再就職をし、家族みんなで力を合わせて働き、支え合って暮らしていた。


「帰るわよ! 旅行じゃないんだから!」


千恵子はヒョコリと顔をのぞかせ、意味深に二ヒヒと笑った。


「知ってるわよ。デートでしょ? だから聞いてんの。」

「ちょっと、なに言ってんのよ!」

「いいの、いいの。あんたも23なんだから、そろそろいい頃だとママは思うわよ〜?」

「何がどういい頃なのよ…」


呆れながらも、それ以上の詮索は勘弁してほしいつくしは「行ってきます!」と言い残して足早に部屋を出た。






デスティニーランドに来るのはこれで三度目だ。
初めては幼い頃に家族で来たが、その日は台風が迫っていて、主要なアトラクションはほとんど休止状態だった。
二度目は大学時代に滋たちと。
デスティニーホテルのスイートに宿泊し、部屋で夕食を食べながらパレードや花火を観た。

今日の三度目はデートだ。
男性と二人で訪れるのは初めてだった。


「うわぁ〜! やっぱりいつ来てもここは素敵ですね!」


そう言ってつくしは満面の笑みになった。


「なんか牧野さん、明るくなった?」

「え? そうですか?」

「髪、下ろしてるの初めてだね。いつものきちんとした牧野さんもいいけど、下ろしてるのもいいね。」


爽やかなイケメンから爽やかに褒められて、つくしは照れて俯いた。


「ありがとうございます」


男性からの褒め言葉がくすぐったいのは初めてだ。
それは自分が恋愛に前向きになったからかもしれない。


「行こうか」


夏目が片手を差し出した。
つくしはその手を取った。


「はい!」


これまでも新しい恋に踏み出そうとしたことはあった。
しかし常に司への想いが纏わり付き、相手がどんなに良い人でもその呪縛から逃れられなかった。
でもその呪いは他ならぬ司によって解かれた。
今度こそつくしは真っ新な気持ちになって、自分の人生の幸福に向けて歩き始めた。




***




その頃、スーツ姿の司はピンクの世界に迷い込んでいた。
右を見てもピンク。
左を見てもピンク。
そして足下を見れば磨き上げられた革靴が真っ赤なハートのレリーフを踏んでいる。


「ここはなんだ……」


司の呆気に取られたつぶやきに、居並ぶSPや秘書を掻き分けて揉み手で近づいたのはこのデスティニーランドのスポンサーマーケティング部の担当者だ。


「道明寺様、ここはデスティニー“LOVE”エリアです。つまり"運命の恋の場所"です。当園はファミリー向けでございますが、来春オープンするこのエリアはカップルの集客に特化したエリアでございます。」

「それは知ってる。この痛すぎる空間に呆れてるんだ。カップルだからピンクか?恋愛だからピンクか? 安直すぎるだろ。目眩がしてきて一刻も早く出たい空間でしかない。こんなところに道明寺の名を使わせられるか。」

「えっ!? しかし御社のご担当者からはGOサインが出て、」

「うちの担当? だったらそいつはクビだ。今から別のスポンサーを探すか、作り直すか、どうする?」

「わ、わかりました。せめて壁は塗り直させます。」

「ああ、それがいいだろうな。」


今更スポンサーを降りられては自分の進退に関わると思った担当者は、司の意識を逸らせようエリアの奥にあるチャペルに誘導した。


「当園ではこれまで、併設のホテルでの結婚式は可能でしたが、パーク内では執り行っておりませんでした。それを今回、実現すべく、ラブエリアにチャペルを新設いたしました!」


緩やかな丘陵に建つのはこれまたピンクの教会だった。
司の額に青筋が浮かぶ。
秘書が担当者に首を振って見せた。


「あっ、あのっ、もちろん色は塗り直します!」


焦る担当者の声を遠くに聞きながらピンクの教会を眺めていると、司は不意にシズクと自分の結婚式のシーンが頭に浮かんだ。
純白のウエディングドレスを着たシズクと同じく白いフロックコートを着た自分。
光が溢れる教会で、友人たちに祝福されながら愛を誓い合う。
シズクも自分も笑顔だった。


「おい」

「はい?」


司は担当者に振り向いた。


「あの教会、貧乏臭すぎる。建て直せ。」

「えっ!? た、建て直すんですか??」


最終確認は来月のはずだった。
道明寺の担当者にOKをもらい、その後、スタッフ教育に入る予定になっていた。
それなのに突然、超大物の視察連絡が来たと思ったら、ここへ来て根底からのダメ出しだ。
それでもどうにか最低限の修正で済ませたかったのに、チャペルを建て直す!?
冗談じゃない。
そうなれば約束のオープンには間に合わない上に、大幅な予算オーバーだった。


「あの〜、建て直すというのはちょっと…。増築くらいならなんとか…」

「俺にあんなチンケな教会で式を挙げろというのか?」

「はぁっ??」


司の言葉に担当者だけでなく、秘書も目を丸くして自分のボスをふり仰いだ。


「俺は決めた。あそこで結婚式をする。俺たちが第一号だ。その記念すべき教会があんなもんじゃ末代までの恥だ。建て直せ。」

「〜〜〜っ!!!」


担当者も秘書も驚愕に目を見開き、口をぱくぱくとさせ、言葉にならない。


「光が溢れる設計にしろ。天井は高く、内装は白。収容可能人数は200人」

「に、にひゃくにん!?」

「バージンロードは長く取れよ。」

「えっ、えっ?」

「俺が使うまでは誰にも使わせるな。」

「そっ、それは、いつになるんですかっ??」


もはや泣きそうな担当者の言葉に、司は今日、ここへ来た目的を思い出した。


「そうだったな。相手が必要か。」

「ええ〜!??」


そこからですか!?と言わんばかりの担当者と秘書を尻目に、司はラブエリアの出口に向けて歩き出した。


「常務! どちらへ!?」


司を追いかけながら、秘書が呼び止めた。


「あいつを探しに行く!」


言いながら、司は駆け出した。









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2022.03.24
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