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はじめまして
当ブログの主、nona(ノナ)と申します。


「花より男子」原作漫画の二次物語を書いています。
カップリングは×つくしです。

漫画「花より男子」が大好きで、この物語を生み出してくださった原作者さまに敬意を表しつつ、原作の設定、登場人物を拝借し、私独自の世界観で物語をお届けします。
ですので司が酷い男になったり、つくしを裏切ったり、つくしが男好きになったりするかもしれません。
結末に関しても基本的にはハッピーエンドですが、そこに向かう経過では悲劇が待っているかもしれません。

このように、登場人物のイメージを崩したくない方、原作者さまが描く司やつくしやその他の登場人物のキャラクター以外は受け入れられない方、また、原作の流れから逸脱したストーリーに抵抗がある方は自己責任で閲覧をお願いします。
読んでから「イメージと違う!」とのご批判は受け付けません。

当ブログ、およびブログ主は原作者さま、および出版社さまとは無関係です。
また、作中に登場する人物、団体等については、実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
あくまでも個人的趣味で書いておりますので、登場人物や組織・社会設定などの詳細は想像の範囲です。ご容赦ください。

また、内容の無断転載・複製・悪意ある二次使用、あるいは引用要件を満たさない引用等はお断り致します。



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以上、ご了承ただける方のみ、物語をお楽しみください。

よろしくお願い致します。

               nona











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2030.12.31




レストルームを出たところにはつくし付きの女SPが不安そうな顔をして立っていた。
レストルーム内のあの屈辱的な会話を聞かれていただろうか。
いや、きっと内容までは聞こえていないはずだと自分に言い聞かせた。
聞かれれば報告されるに違いない。
司には知られたくなかった。



ホールのロビーに向かうと人でごった返していて、女SPがヘッドセットで司付きのSPと連絡を取りながらつくしを庇うようにして司の下に誘導した。
でも、本当は司の顔を見たくなかった。
このまま屋敷に帰ってしまいたかった。
それほど、今のつくしは惨めな思いを噛み締めていた。


「おう、つくし! こっちだ。」


しかし無情にも、つくしは親友と一緒にいる司に早々に見つかった。


「ありがとう。」


離れようとする女SPにそう告げると彼女は少しだけ笑みを見せてくれた。


「つくし、長かったな。腹、痛いのか?」


司の身も蓋もない言葉で出迎えられ、つくしは真っ赤になった。


「司〜、お前なぁ、マジでそういうとこだからな。」

「道明寺家はシキタリを考え直すべきだな。結婚まで女とまともに絡んだ経験がないとこうなるって見本だぞ、お前は。」

「つくしさん、大丈夫?」

「お前らこそまだ独身なんだから経験ないだろうが! 類、お前はつくしに近づくな!」


そう言った司に抱き込まれ、司オリジナルのパフュームに包まれた。
いつもならうっとりとして力が抜けてしまうその香りも、今はつくしの空虚さを浮き彫りにするだけだ。
つくしはやんわりと司の腕の中から抜け出し、一歩距離を取った。


「つくし?」

「あの、ごめん。」


司から顔を背けたつくしを総二郎が覗き込んだ。


「つくしちゃん、俺らこれからあきらんとこの別宅に行くんだけど、司と一緒に来なよ。」

「総二郎、お前は人の嫁を勝手に誘うな!」

「お前が煮え切らねぇからだろ。どうせ屋敷には帰らずにつくしちゃんとどっかにシケこもうと思ってたろ。」

「うっ…」

「なら一緒に行こうぜ! あそこには離れもあるから二人きりにしてやるよ。な、あきら。」

「ああ、風呂もついてるから、ゆっくりできる。妹達も来るんだ。夕食だけ付き合ってくれたらいい。」


あきらの言葉につくしはパッと顔を上げた。


「妹さん達が? あの可愛らしい双子の?」


つくしが喰いついたのを見て、あきらの顔がフワッとした笑みになった。


「うん、つくしんさんはうちの妹達に会ったことがあったよね。また会いたい、連れて来てくれってせっつかれてね。きっと楽しいよ。どう?」

「はい! 私もお会いしたいです!」

「おい、つくし!」


先ほどとは打って変わったつくしの明るい顔に、司はなんだか面白くない。
つくしがあきらに楽しげな様子を見せるのも、そんなつくしをあきらが優しく見守っているのも、とにかくつくしの気が自分ではない人間に向いているのが面白くない。

普段、屋敷の中だけで会っているとわからなかったつくしの表情の豊かさや明るいオーラ、自分の友人達に歓迎される裏表のなさが外で見るとなお一層輝いて見えて、自分だけが独り占めしていた顔を他の人間、こと男に知られたくないという思いが湧き上がった。
だから司はつくしを強引に引き寄せた。
ウエストに腕を回し、あきらから引き剥がすようにして背後から抱き込んだ。
これは自分のものだと主張するように。


「なんだ? 司、どうした?」

「俺たちは行かねぇから。」

「えっ?」


つくしが背後を仰ぎ見た。


「クックック…司、お前、分かり易すぎ!」


口を尖らせて憤慨する司の様子に、その心情を察した総二郎がこみ上げる笑いを押し込めるように手で口元を覆った。


「あー、お前がこんなに可愛い男になるなんてなぁ。結婚って怖いなぁ。な、つ・か・さ・くん!」


総二郎が司の頭をグシャグシャとかき混ぜた。


「総二郎、手ぇ離せ! 俺たちは帰る! つくし、行くぞ。」


そう言って司はつくしの腕を掴んで出口に向かい始めた。
焦ったのはつくしだ。
さっき、レストルームであの3人にした宣言は本気だ。
司に似合う、そして司が愛せる素敵な女性を見つけようと本気で決意したからには、可能性のある女性には会っておきたい。

一度だけ美作邸で会ったことがあるあきらの妹達。
まだ子供だったが、それでも二人とも可愛らしく美しく、将来が楽しみだろうと思ったのだ。
それにこの人格者であるあきらの妹ならばなおのこと、きっと人柄も良い子達に違いない。
だったらあの子達があと数年して大人になれば、司が気にいるお嫁さん候補になるかもしれない。
だからもっと良く知り合いたかった。
それには今日のお誘いは有り難く、ぜひ、行ってみたかったのだ。


「司、待って! 止まって!」


痛いほど腕を掴まれ、足がもつれながら早足の司についていくのがやっとで、立ち止まって引き止めることなどできない。
だからつくしは懸命に訴えた。


「あたし、行きたいの! 妹さん達と会いたい!」


人をかき分けてロビーに出て、係員が誘導するエレベーターに乗り、控え室に使ったスイートのあるフロアボタンを司が押した。
やっと放された腕をさすりながら、つくしはそれでも司に訴えた。


「帰るんじゃないの? 帰らないなら美作さんとこに行きたい。」

「…うるさい」

「司、」


ポーン…と、エレベーターは到着し、ドアが開いた途端にまた腕を掴まれ、ズンズンと歩かされる。
部屋に入っても、森川も島田も帰っていて誰もいなかった。


「なんで…ここに…」


二人きりなんて嫌だ。
今は司と向き合いたくない。
掴まれている腕に伝わる司の手の温かささえ、今は鬱陶しい。

つくしはあの3人に、司が華園公子と交際していた、彼は彼女に恋をしていたと聞かされた時から吐き気がしそうなほどの胸のムカつきを覚えていた。

わかってる。
この感情がいかに理不尽か。
でもどうしようもなく腹が立つ。
そう…これは嫉妬だ。

女性と親しくしたことないなんて島田さんは言ってたけど、それは島田さんが知らなかっただけだった。
実際にはきっと何人も彼女がいたし、キスもしてたんだ。
そりゃそうだよね。
あたしにだって彼氏がいたくらいなんだから、司ならなおのこといるでしょ。
その一人が目の前に現れたからって、あたしが怒る謂れはない。

でもあの人に触れた手で触れられたくない。
あの人にしたキスをされたくない。
だって、あの人には恋する気持ちでしてたことかもしれないけど、あたしにはただ結婚したからってだけなんだもん。
そこに司の意思はカケラも反映されてない。
義務…
そうだ、あたしは義務で触れられたくないんだ。


掴まれた腕を引いて司から逃れようとするつくしに、得体の知れない焦りを募らせた司は再びつくしを抱きしめた。


「はな…して…」

「どうして、」

「え?」

「なんで嫌がるんだよ。夫婦だろ。」

「……っ」


夫婦…じゃなかったら、夫婦としてじゃなく、ただの男と女として出会っていたら、果たして自分は司の腕の中にいただろうか。
そうなれただろうか。

そんなことを考えると、泣きそうなほど悲しくなる。
だってあり得ないから。
ただの牧野つくしのあたしなんて、目にも留まらない。
そもそも出会うはずもない。
きっとすれ違うこともなく、互いに別の相手と違う人生を過ごしていたはずだ。
なのにここにいるのはあたしで、司はあたしを一生懸命に受け入れようとしてくれてる。
それが哀しい。
そうさせている自分が哀しい。

もういっそ全部投げ出して逃げ出せれば楽なのに、そうすれば司を解放してあげられるのに、包み込んでくれるこの腕を失いたくない想いの方が強くて、つくしは自分の身勝手さを詫びることしかできなかった。


「…ごめん。」

「いや、まぁ、謝んなくていいけど…」


今度はつくしが司にギュッと抱きついた。


「本当に、ごめんなさい。」

「つくし? どうしたんだよ。お前、おかしいぞ。」


司の胸に俯いていたつくしはドンッと司を押し除け、背中を向けた。


「帰ろう。その前にちょっとお化粧直してくるね。」


そう言ってつくしはベッドルームに入り、バスルームに駆け込み、嗚咽が漏れないように口許を両手で押さえた。










━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  明日からしばらく休載します。


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2020.04.02




涙がやっと落ち着いて、個室から出て手を洗い、パウダースペースに腰掛けて申し訳程度のバッグから出した化粧品で化粧を直して、大きな鏡に写る自分を思わずまじまじと見つめた。

普通…

ブスじゃないとは思うけど、取り立てて美人てわけでもない。
いや、もしかしたらあの美貌の夫の隣に立てば、ブスに見えるかもしれない。
総帥も社長も落差とかバランスってものを考えなかったんだろうか。

あの人、華園さんとおっしゃった女性…ステージで司と並んだ時、とってもバランスが良かった。
背丈やスタイル、あの美しさも。
お似合いってああいうことを言うんだなって素直に思えた。
きっと二人のダンスは見事なものだったんだろう。


「ハァ…」


こういう公の場に出ると今まであのお屋敷でどれだけ甘やかされていたかわかる。
何も持たないあたしが、なんの因果か道明寺司の妻になり、身に余る待遇で迎えられ、使用人にかしずかれ、一から教育を受けさせてもらって。
なのに何もかもが付け焼き刃で、司に恥をかかせちゃったよね。

何か一つでも秀でていれば…
容姿か家柄か能力か。
何か一つでもあの夫の隣に立つ自信を持てれば…
妻として堂々としていられるだろうに。

メイク台に肘をついて思わず額を抱えていたつくしは背後からの声に顔を上げた。


「もしや、道明寺夫人でいらっしゃいます?」

「え? あ…はい…」


“ 道明寺夫人 ”


他人からそう呼ばれたのは初めてだった。
振り返ると3人の女性が立っていた。
どの女性も豪華なスーツやセミアフタヌーンドレスや宝石で美しく着飾り、それなりの身分であることが窺えた。


「はじめまして、私、浅井百合子と申しますの。こちらは私のお友達です。」

「はじめまして、奥様。鮎原エリカです。」

「山野美奈子です。」


つくしは立ち上がり、いつもの癖で頭を下げたくなるのを堪えた。


「はじめまして、道明寺つくしです。皆さま、英徳学園のご出身でいらっしゃいますか?」


このフロアには大広間しかない。
だからこのフロアにいるということは即ちそういうことだろうとつくしは問いかけた。


「ええ、もちろんです。幼稚舎から大学までを英徳で過ごしました。奥様も英徳のご出身ですか?」


浅井は慇懃な態度だった。
なのになぜかそこに蔑みを感じるのは卑屈すぎるというものだろうか。
つくしは初対面の相手に自分が抱いた印象こそ無礼なものだと感じて、他愛もない会話に鷹揚に応じることにした。


「いえ、私は、」

「そう言えば、先程の華園様と道明寺様の睦まじいツーショット、奥様にはショックだったんじゃありませんか?」


つくしの言葉を遮ったのは鮎原エリカだった。
違和感を禁じ得なかったが、それでもつくしは今度は鮎原の問いかけに答えようと口を開いた。


「そんなことは、」

「ちょっとエリカさん、失礼なことをおっしゃらないで。道明寺様だって昔の彼女よりも今は奥様を大切になさってるわよ。」


そう言って侮蔑の視線を送ってきた山野美奈子に、さすがのつくしもこの3人の意図に気がついて黙り込んだ。
そんなつくしの様子にほくそ笑んだように見えたのは浅井百合子だった。


「あら、奥様、もしかしてご存知ありませんでした? 華園様は道明寺様の元恋人でらっしゃいますのよ。それはそれはお似合いのカップルで、私たちの憧れだったんです。なんせ華園様はあの華園グループ会長の孫娘でありあのお美しさ。私たち、お二人はそのままご結婚なさると思ってましたのに、別れられたと聞いた時には残念でしたわ。」

「百合子、その話、別れたのは道明寺様のお母様が反対なさったからだって聞いたわよ。華園様は一人娘。会長が道明寺様を婿に欲しがったからだって。」

「つまりエリカの話ではお二人は愛し合っていたのに引き裂かれたってことになるわけね。もしかして、今も…? あー、そうだったら素敵だわぁ。あのお二人のダンスはそれはもう、息ひとつ乱れずに見事なものでしたものぉ。あのお姿がまた見たいわぁ。」

「美奈子、奥様の前で失礼よ。いくら奥様のダンスが…プッ!」

「そう言うエリカこそ失礼じゃない。でも、道明寺様の奥様になられるほどの方だから、ダンスくらいは華園様以上かと思いましたのに…。あら、いけない。奥様、お気を悪くなさらないでくださいね。」


浅井百合子とその取り巻きらしき二人は、つくしに視線を送りながら、ニヤついた顔で聞こえよがしに言い合った。
どんなに高価な宝石で飾り立てていても、内面の醜さは外面に表れるものなんだとつくしは唖然とした思いで見ていた。
つくしは出来ることなら拳で反撃したかったが、まさか今の立場でそんなことができるわけがない。
ぐっと握り締めた手を片手で覆って怒りを隠し、煽られて相手の思うツボの失態をしないように努めて冷静な口調で答えた。


「気を悪くなんてしません。華園様は本当に素敵な方ですもんね。確かに、あんな素敵な方が妻なら夫も自慢になったでしょうね。」


つくしの言葉に3人は我が意を得たりとばかりに、もう今はつくしへの蔑みを隠そうともしなかった。
腕を組み、顎を上げ、見下す視線はまさに蔑視だった。
浅井百合子がもう今ははっきりとした嘲笑を浮かべた顔で言った。


「身の程だけはわきまえていらっしゃるようで安心しましたわ。でもそれなら話が早いですわね。道明寺様の妻の地位にしがみつくようなみっともないマネはお止めになって、私たちのようにもっと相応しい女性に譲るべきですわよ。ねぇ? 皆さん。」

「そうよ、私たちは時間もお金もたっぷりかけた最高の女なの。道明寺様のような最高の男性には私たちみたいな女こそ相応しいのよ。」

「それをよもぎだかつくしだか、雑草の名前をした女になんて横に立たれちゃ堪らないわよ。道明寺様がお優しいのはね、物珍しいからよ。珍獣は暇つぶしの遊び相手にはちょうどいいからよ。すぐに飽きて捨てられるのがオチなんだから、惨めになる前にさっさと自分から離婚届に判を押して出て行くことね!」


3人はパウダールームの入り口を塞ぐように立ちはだかって、その醜悪な顔には勝ち誇ったような優越感が浮かんでいた。
つくしは久しぶりに怒りが体に漲るのがわかった。


他人から見ればそれが答えなんだろう。
わざわざ言われなくても自分が一番身に染みている。
でも、それでも華園公子が直接、言ってくるならまだしも、なぜこんな下衆な女たちに言われなければならないのか。
それも司のことまで馬鹿にしたような言い方で。
あいつが道明寺家の後継者として、どれだけの覚悟を持ってあたしと夫婦になってくれたか、そしてあたしを妻として大切にしようと努力してくれてるか。
そういう司の真剣な思いまでこんな人たちに穢されてたまるもんか!


つくしは燃えるような目をして浅井たちを睨みつけ、持って行き場のない拳を無意識にパシッと掌に打ち付けた。


「あなたたちがあいつに相応しいって!? チャンチャラ可笑しいっての!!」


しかし、つくしの怒りなど歯牙にもかけず、浅井が後ろの二人に顎をしゃくった。


「ほら見て、本性を表したわよ。」

「本当! お育ちが悪いとこれだから。」

「嫌だわぁ。こういう人種とは同じ空気も吸いたくないわぁ。」


高笑いを始めた3人に、つくしはツカツカと歩み寄ると、浅井の横、パウダールームのオーク材の壁に拳を思い切り打ち付けた。
ガッと激しい音がして、3人は動きを止めた。


「言われなくても、あいつにはあたしが世界一素敵な女性を見つけるつもりです。でも天地がひっくり返ってもそれはあなたたちじゃないわよ。あんたたちみたいな性格の醜さが顔にまで出ちゃってるような女、1ミリも近づけない。あの人の視界にさえ、絶対に入らせないから、覚悟しといて!」


そう言い放つと、つくしはメイク台に置かれた自分のバッグを掴んで、3人の間を抜けてレストルームの出口に向かった。


「待ちなさい!」


その背中を浅井の声が追いかけてきた。


「庶民の分際で、私たちにそんな口を利けるのも今だけよ。道明寺様の妻の座を降りたら、容赦しないから!」


つくしはゆっくりと振り返った。


「降りたら? 降りなくても司が好きなら今、向かってきなさいよ。あたしから奪ってみなさいよ。できないのはあんたたちが見てるのは司じゃなくて、道明寺の名前だけだからでしょ? 名前におもねてすり寄って、あたしがあいつの女のうちは手を出さないって!? そんな人間、あたしは怖くない! いつでも受けて立つわよ!!」


その時、レストルームのドアがノックされた。


「奥様? どうかなさいましたか?」


それはつくし付きの女SPだった。
つくしのただならぬ声が外にまで漏れていたのだ。


「なんでもありません。大丈夫です。」


つくしは浅井たちに背を向けてレストルームを出た。









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2020.04.01




英徳学園は明治43年、当時、道明寺家の次男だった道明寺英介が創立した、良家の跡取りが帝王学を学ぶための学校だった。
イギリスから講師を招聘し、当時は華族の子弟の学舎となった。
戦後は一般庶民に開放されたが、その伝統から入学には一定の基準が設けられ、それを満たした者のみが入学を許された。

今年は英介が創立してから110年の記念の年だ。
10年前、司が高校2年の時の100周年には東京都の迎賓館で国内外の同窓生、現役・引退教授陣、関係者を招いての盛大な記念式典が行われた。
そこには司はもちろん、創立家直系である偀をはじめとする道明寺家一族が出席していた。

今年は節目と言っても110年ということで、創立記念パーティーとしてグランド・メープル・トーキョーの大広間で行われることになった。


司はオフィスから、つくしは屋敷から会場に向かい、メープルに司が控え室として押さえたスイートで合流した。
そこで司は森川が持参したチャコールグレーのセミフォーマルなダブルスーツに着替え、英徳のスクールカラーであるロイヤルブルーが入ったストライプのネクタイと同じくロイヤルブルーの無地のシルクポケットチーフを身につけ、いつもツーブロックにカットしている髪はサイドを撫で付け、スッキリとまとめた。

対して屋敷から支度をしてきたつくしは袖がレースになっている、フレアスリーブワンピース姿だ。
アイボリーよりクリームに近いそれはウエストで切り替えられていて、膝下丈のスカート部分は細くプリーツ加工がしてあり、落ち感のある生地で歩くたびに左右に揺れていた。
髪はストレートなままアレンジして一つに括ってまとめ、背中に落とし、アクセサリーは大粒サファイア のイヤリングをして英徳のロイヤルブルーを表した。

そんなつくしは島田を伴い、リビングで司を待っていた。
ソファに座り、見るともなしに大きな窓に目を向け、高層階からの空の景色を眺めていた。


「待たせたな。」


そこへ司が森川を伴ってマスターベッドルームから出てきた。
声の方向へ顔を向けたつくしは、思わず目を見張った。


「つくし? どうした? ……もしかして、見蕩れてんのか?」


司を見つめたまま微動だにしないつくしは、息さえも止まっているのではないかと思うほどに固まっていた。

滅多に目にしないスーツ姿はやっぱりカッコいい。
夜とはまた違う凛々しい姿に、その視線さえもキリリと引き締まっているように見えるのは恋の成せる割り増しなんだろうか。
ちょっと待って、今日はこの人の横に立つの?
しかも「妻です」って顔で?
いやいや、勘弁してほしいかも・・・
会場の隅っこでこっそりと司を鑑賞してるだけじゃダメかな・・・?

からかったのに反応を示さないつくしの顔を覗き込んで、司がその柔らかな頬にチュッとキスをした。
その感触でつくしはやっと我に返った。


「うわわっ! な、なにすんのよ!」

「お前が俺に釘付けになってるから、目を覚まさせてやったんだよ。さあ、時間だ。つくし、行くぞ。」


真っ赤になったつくしに「今日も可愛いな」と思いながら司は左腕を軽く曲げて差し出した。


「やっぱり、行かないとダメ?」

「俺はお前を連れて行きたい。ダメか?」


問いかけに問いかけで答えられて、つくしはしぶしぶうなずいた。


「わかった。」


司の腕につくしが手を添えた。

夫婦になって初めての公式の場だ。
どんな好奇の視線が待っているかわからない。
ここまで来たら何があっても何を言われても冷静さだけは失っちゃいけないと自分に言い聞かせながら、つくしは背筋を伸ばして司に寄り添った。








会場はホテル5階の大広間、ロイヤルルーム。
そこはすでにたくさんの人で溢れかえっていたが、司たちが乗ったエレベーターの扉が開いた瞬間、沈黙がモーセの海割りのように広がり、フロアに降り立つといよいよ人垣が割れ、道ができた。
しかし二人が歩き始めると沈黙してた人々からヒソヒソとした声が聞こえ始めた。


「道明寺さんだ。」

「道明寺さんよ。」

「確かご結婚されたとか。」

「まさか、あれが奥さん?」

「うそ〜、ショック。」


そんな言葉がそこここからつくしの耳に届いた。
覚悟はしていたがこれほどとは。
まだ会場のドアさえくぐっていないといいうのに、つくしはもう帰りたくなっていた。
結婚しておよそ3ヶ月。
ずっと屋敷で過ごしていた。
たまに出かけるのは司と二人きりのお出かけだけ。
自分がどれだけ世間の反応というものから隔離されていたか思い知った。

これが普通の反応なんだ。
名前や家柄だけじゃなく、これだけ容姿のいい人だ。
隣に立つ女性だってそれなりの人を世間は期待してただろう。
あたしが彼等でもきっとそう思う。

徐々に俯き始めたつくしに気がついて、司が自分の腕に乗ったつくしの手を撫でた。
つくしが顔を上げると、安心させるように微笑む司の顔があって、つくしはもう一度自分を奮い立たせて前を向いた。

会場に入ると、それは大広間の名にふさわしい、高校の時の体育館よりも広い空間で、大きなシャンデリアが計7つも下がっていた。
その下には千人にも及ぶ人々が集い、テーブルフラワーが飾られた丸テーブルの間を縫うボーイのトレイからグラスを手に取り、竹馬の友との再会を寿いでいる。
そして広間の一番奥にはステージが設られ、その上にはオーケストラと見まごうバンドが人々の、互いを懐かしむ声をかき消さない程度の音楽を奏でていた。


「司!」


聞き覚えのある声が会場内から聞こえ、そちらを見ると先日、紹介された司の親友の一人が手を振っていた。


「おう、あきら!」


近づくと総二郎も類も一緒だ。
ちょうど通りかかったボーイからシャンパングラスを受け取り、つくしを含めた5人で軽く捧げ持って口をつけた。


「お前らも来てたのか。」

「お前が来るって聞いたからな。噂の夫婦の登場を俺たちで見守ることにしたんだ。」

「なんだそれ。」


この前の不機嫌とは打って変わって司は友達にだけ見せる砕けた笑顔になった。
つくしは4人が揃ったところを改めて眺めた。
それはこの会場の誰よりも別格の4人で、彼らを包むオーラは温度があるように温かく感じ、そして照明のせいだけではなく光輝いている。
すると幾重にも取り囲んで彼らに視線を向けている招待客の中から微かにスマホのシャッター音のような物音が聞こえてきたが早いか、ホテルの警備と思しき係員が2名、司たちを写したスマホを持った人物に近づき、その場でデータを消させ、両脇を抱えて会場を出ていった。


「馬鹿な奴。俺たちだけじゃなく、英徳のOB・OGが集まる場で自由に撮影できるわけないのに。招待状にも明記してあっただろ。」

「不正入手した招待状で紛れ込んだパパラッチかなんかだろ。横流しした本当の招待者はすぐに身バレして永久追放だろうな。」


一部始終を見ていたつくしはそのセキュリティーレベルの高さに呆気に取られていた。
世界の首脳が集まるサミット会場でもないのに、すごい警戒レベルなんだ。
そんなことを考えて、連行されていった人が消えた向こうを見ていた時だった。


「つくし、」


頭上から司の低い声が聞こえてきた。


「はい。」


返事をして見上げると、額に青筋が立っている。

え? 怒ってる? なんで??


「キョトキョトするな。他の男を物色してるように見えるぞ。」

「キョトキョトって…」


言い方、可愛い…じゃなくて! そんなことしてない! と言おうとしてハッとした。
自分がどうかじゃない。
周りからはそう見えているってことが問題なんだ。


「すみません。気をつけます。」


そう返事をしてまた俯いたつくしに総二郎が声をかけた。


「つくしちゃん、司は怒ったんじゃないからね。ちょっと心配になっただけだから。」

「え?」


意外なフォローの言葉につくしはハッと顔を上げて声の主を見た。


「総二郎!」

「つくしちゃんが目移りしちゃうんじゃないかな?って心配になっちゃったんだよなー? 司クンは!」

「ふっ、ふざけんな! そんなわけねぇだろ!」


つくしは目移りと言われた意味がわからずに司を見上げてじっと見つめた。

目移り?
あたしの気が他の男性に向くってこと?
それが心配だって、司が思ってるって西門さんは言ってるの?
でもそんなわけないって、本人は言ってるし。

そんなつくしをチラリと見下ろした司はつくしと目が合うと頬を赤くしてサッと顔を背けた。


「今日は背中、見せてないんだね。」


まだ続く思考を遮ったのは光の王子の一言だった。
後ろからかけられた言葉に、つくしは司の腕に手を添えたまま振り返った。


「え…ええ、はい。今日は昼間のパーティーですし、あのドレスは…」

「司に着るなって取り上げられちゃった?」


なぜか類はクスクスと笑いながらまるでイタズラっ子のような目でつくしを見下ろしていた。


「いえ、そんなことはないですが、」

「あんたの背中、また触りたかったのに。」

「ええっ!?」


つくしは思わず赤面して俯いた。
それを見ていた司がまた不機嫌オーラを発し始めたのに気付いて、あきらが壇上を指した。


「類はつくしさんをからかうな。司もマジで怒んなよ。ほら、ステージ、なんか始まるぞ。」


それまで自由に歓談していた招待客が一斉にOBの司会者が現れたステージを向いた。
司会進行は定型通りに行われ、同窓会会長の挨拶に始まり、現学園長、卒業生である現役の大臣の挨拶に移った。


「チッ、クソだりぃ。俺ら帰るわ。」


つくしを着飾らせて見せびらかせたし、今日の目的は達したとばかりに司がその場を離れようとした時だった。


「まぁまぁ、もうちょっと待てよ。変わった演出があるみたいだぞ。」


そう言ってあきらがステージを指した。


『それでは堅苦しいご挨拶はこの辺りで終了としまして、次にご紹介するのは英徳学園高等部名物、プロムクイーン&キングです。その中でも本日、ご参加いただいている過去のクイーン&キングにご登壇いただきます! それでは第41代クイーン&キング、華園公子様、そして道明寺司様、どうぞステージへ!』

「なに!?」

「ほらほら、司、呼ばれてるぞ!」


そう言って総二郎が背後から司の肩を押した。


「ちょっと待て!」

「つくしさんは俺が責任もって守ってるよ。ね?」


類が司の腕からつくしの手を取り、その顔を覗き込んだ。


「え! いえ、あの…」


正視に耐えない王子様の顔が近づいて、つくしは頬を染めてまたも俯いた。


「類! つくしに触るな!」

「司、急げ!」

「押すな!」


司は総二郎とあきらによって強引にステージに押し上げられた。
そのあとにはブルーのドレスを纏った女性が登壇し、司の隣に並んだ。


『御二方、ご参加ありがとうございます! 皆さま、伝説のプロムクイーン&キングです!』


司会者の言葉に会場は盛大な拍手が起きた。
熱気に満ちた人々は司をもっと間近で見ようとステージを幾重にも取り囲み、司が降りようとしたその道に立ち塞がった。


『英徳のプロムはおよそ50年前に始まりました。男子部と女子部に離れている英徳学園高等部において、このプロムパーティーだけが男女が共にする行事でして、いや〜、私などは浮き足立ったものです。』


ここでドッと笑いが起きた。
英徳学園は中等部から男女が分かれる。
中等部では体育祭が男女合同で行われるが、高等部で男女が合同で参加する行事は卒業式とその後のプロムパーティーだけだった。
そのプロムで生徒の投票で選ばれた1組のカップルに与えられる栄誉がクイーン&キングの称号だった。


『そもそも校舎が離れてるのにどうやってパートナーを誘うんだ!?ってなもので、私は相手を探すのに苦労しましたが、お二人は探すまでもなかったでしょうね? ね、華園さん。』


司会者が華園公子にマイクを向けた。
その女性は長い黒髪を緩く巻き、細く長い手足に華奢な体、なのに出るところは出ているスタイルのいい美人だった。


「そんな、お恥ずかしいですわ。今だからこそ明かしますが、道明寺さんをお誘いしたのは私の方です。お優しい道明寺さんはすぐにYESのお返事をくださいましたの。」


司に流し目を送りながらそう言った女は、今でも誘いたいといった風情でうっすらと頬を染めた。


『そりゃ当時のティーン・オブ・英徳だ。さすがの道明寺さんだって断る理由なんてなかったでしょうね。ね! 道明寺さん。』


一層盛り上がる会場で、地獄に落ちたように盛り下がっている男が一人。
でもそれは、つくしが見ている場で他の女と並ばせられ、クソガキだった頃の既に記憶にもない昔話を突きつけられているからではない。
ステージからよく見えるつくしが、隣の類に何かを話しかけられるたびに背伸びをしてその耳に直接、答えるさまが逆鱗に触れていたからだ。
類には絶対につくしの香りが届いているし、つくしの唇はもう少しで類の頬に触れそうになっている。
しかしそんな中で救いだったのは、類の問いかけに答える以外のつくしはずっとステージ上の司を見ていたことだ。
司はつくしの出た都立高校にプロムパーティーがないことも、必然的にクイーンやキングがいないことも知らない。
だから自分の夫がプロムキングだったことは誇らしいに違いないと思い、もう少しだけこの状況に耐えることにした。
が、その決意も次の瞬間にあっさりと限界を迎えた。


『お二人の記念のダンスは今でも語り草です。英徳史上最高の美男美女による華麗なステップ、また見てみたいな…あっ、えっ! ちょっ…』

『おい、類! そのいやらしい手をつくしから離せ!!』


司会者からマイクを引ったくった司が叫んだ。
そして叫び終えるや否やマイクを床に叩きつけ、ステージの周囲の人間を蹴散らすように飛び降り、割れた人垣をまっすぐに類とつくしに向かって進んできた。

そして二人の前まで来るとつくしの腰に回された類の腕を掴み上げ、つくしを自分に引き寄せ抱き込んだ。
鋭い視線で類を睨みつける司は背後のステージでマイクを拾った司会者を呼んだ。


「おい、司会者!」

『はい!』

「ダンスなら俺は一生、妻としか踊らない。よく覚えとけ!」

『は、はい?』

「司!?」

「つくし、俺と踊ってくれ。」

「はぁっ!? ここで!?」

「音楽流せ!!」


その司の叫びに、二人の周りにいた人々はすぐに退き、ダンスフロアが現れた。
ここにいる人間が司よりも年長だろうが国家的な肩書きを持とうが関係ない。
創立者の子孫である道明寺司、名実ともに英徳の王として君臨した道明寺司、そして日本一の財閥次期当主である道明寺司に逆らう人間などいなかった。

司はつくしの片手を取り、片腕をその背に回し、ポジションを取った。


「ちょっと、司! こんなところで踊るなんてできないわよ!」

「なんでだ? お前もプロムで踊ったろ?」

「プロムなんて一般人の高校にはないの!」

「…マジか…でもレッスン受けてんだろ? なら大丈夫だ。俺に合わせてりゃいいから。」

「でも、そんな、人前で踊ったことない…きゃっ」


司はつくしを振り回すようにして踊り始めた。
つくしは婚約後からダンスのレッスンを受けていたが実践は初めてだった。
いつもはダンスの講師と島田と自分の3人だけという状況で踊っているのに、今日は周囲を何百人というギャラリーが囲んでいる。
経験のない状況に脚が固まり、いつもできているステップを迷ってしまう。


「イテッ!」

「ごめん!」

「いいから続けろ。」


失敗を恐れるあまり、つくしのステップは伸び伸びとは程遠く、それを見た人々は嘲笑とも言える笑いを漏らした。
その声が音楽の隙間から聞こえて来る。
つくしは恥ずかしさと悔しさで顔を上げられずに俯いた。


「つくし、足元ばっかり見るな。顔を上げろ。」

「無理…もうやめようよ…」

「いいから、足の運びは合ってる。俺を見ろ。つくし!」


つくしはおずおずとした様子で顔を上げた。


「大丈夫だから、堂々として俺だけを見てろ。」


そう言って司は背中に添えた手に力を入れてつくしの胸を自分に引き寄せ、背筋を伸ばさせた。
その手の温もりに、困ったように司を見ていたつくしのぎこちなかった動きは徐々に滑らかになり、その様子に司は満足げに微笑んだ。

それはつくしと結婚してから司が浮かべるようになった表情で、つくしにしか向けない、つくしにしか引き出せないスペシャルな顔だった。
その顔を見てつくしもまた安心したように微笑んだ。


「いい雰囲気じゃん。」


類の肩にポンと手を置いた総二郎がニヤリと口角を上げて呟いた。


「ん、司がイラつくの面白かった。それにあの奥さんも司のこと好きっぽいし。」


あきらも近づき、会話に加わった。


「だな。司、幸せそうじゃん。…おっと、華園のこと忘れてた。ちょっと行ってくるわ。」


あきらは人をかき分けステージに近づいて乗り上げると、蒼白になり司夫婦に顔を歪める華園公子の手を取ってダンスフロアに誘い、踊り始めた。
華園公子とあきらのステップは一糸乱れぬ華麗なもので、それまでつくしと司カップルに向いていた視線はそちらに集まり、今度は感嘆のため息がそこここから漏れる。

そうして1組だけだったダンスカップルが2組、5組と徐々に増え、会場はプロムさながらの盛り上がりを見せた。
大勢のカップルに紛れることでつくしは周囲の視線が気にならなくなり、司とのコンビネーションを楽しんだ。

やがて曲が終わり、互いのパートナーへの挨拶が済むと司はつくしをもう一度引き寄せ、その髪に頬を寄せた。


「踊れたじゃん。だから大丈夫だつったろ?」

「ん、ありがとう。」

「お前と…」

「え?」

「お前と高校で出会ってたら、絶対にお前をパートナーに誘ってた。」


驚いたつくしが司を見上げると、被さるようにしてつくしを見つめる司の顔が近くにあった。
その顔が優しくて、甘えたくなる。
甘えて「あたしも、司のパートナーになりたかった」と本心をさらけ出したくなる。
「もう2度と他の女性の手は取らないで」とワガママを許してもらいたくなる。
でもそれが言えない代わりに、つくしはギュッと一度だけ、司を抱きしめた。


「…ありがとう。本当に。」


それだけを言ってつくしは司から体を離した。
少しのことが嬉しくて、嬉しいとすぐに泣けてきてしまう。
つくしは司に背を向けた。


「あたし、ちょっとお手洗いに行ってくるね。」


そう言うが早いかもう人波をかき分けていた。


「あっ、おい、待て! つくし!」


司の制止も聞かずにつくしは大広間を出た。









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2020.03.31




皆様、こんばんは。

今夜を皆様はどんな思いでお過ごしでしょうか。
この記事は全くの個人的感情を綴ったもので、花男には1ミリも関係しておりませんことを先にお断りしておきます。


私は今日、仕事の休憩中に志村けんさんの訃報に接しまして、数十秒、動きが止まりました。
文字を読んでるのに理解ができないという状態を初めて経験したように思います。
そして職場なのに泣きました。
静かに、ただ静かに隠れてこっそり泣きました。

このブログは花男の二次小説のためのものですが、今日だけはどうしても吐き出したくて記事にしています。

私は昭和の生まれです。
物心ついた時には「8時だヨ!全員集合」を観て大爆笑してました。
ちょっと面倒な家庭環境のせいもあって、「nonaの笑い声が聞けるのはドリフを観てる時だけだね」なんて言われたりもしました。
髭ダンスも坂落ちも「志村、後ろ!」も毎週、同じ展開なのがわかってるのにワクワクして観て、合唱団ではあの中に混ざるにはどうしたらいいか、と本気で考えてました。

「全員集合」が終わっても「カトちゃんケンちゃん」を引き続き観てたし、フジの「ドリフ大爆笑」だって齧りついて観ながら大笑いだったし、バカ殿の過激なコントも楽しみました。エロってものを教えてくれたのも志村さんだったなぁ。
志村さんと研ナオコさんや、志村さんと柄本明さんのガチな掛け合いも最高で、私の笑いのツボは志村さんに作ってもらったと言っても過言じゃないです。
私よりも30歳近く年上なのに、なんだか一生、志村さんの笑いを観てられるような気がしてました。

だからなんか、なんだろう、この喪失感は。
10代の時に美空ひばりさんが亡くなって、その時もひとつの時代が終わった感があったけど、今も同じような気持ちです。
ひとつの偉大な星が落ちたような、大切な何かを失ってしまったような、これで本当に最後の昭和のカケラが消えたような、もうあの笑いが観られないのが悲しくて悔しくて。


今、中島みゆきさんの『時代』を聴いています。


今はこんなに悲しくて
涙もかれ果てて
もう二度と笑顔にはなれそうもないけど
そんな時代もあったねと
いつか話せる日がくるわ

あんな時代があったねと
きっと笑って話せるわ
だから今日はくよくよしないで
今日の風に吹かれましょう



志村さん、私の子供時代に笑顔をくれてありがとう
笑いで日常を忘れさせてくれてありがとう
笑いすぎて、鉛筆を手に刺しちゃったこともあったけど、それも志村さんのお陰で笑えました。
志村さんがいなくて寂しくて悲しいけど、残してくださった映像で、私はまた笑います。


「花より男子」連載開始が1992年。
当時、高2だった牧野つくしならきっとドリフ世代のはず。
彼女もきっと驚いて悲しんで、志村さんの死を悼んでいると思います。
今頃は落ち込んでるところを司に「どうした?」って言われて肩を抱かれて、志村けんを知らない司に一生懸命にその素晴らしさを語ってるような気がします。


志村さんのご冥福を心よりお祈りすると共に、この新しい感染症が一刻も早く終息することを願います。


個人的なつぶやきを最後まで読んでくださった読者の皆様もありがとうございました。
どうか、どうか、ご体調を崩されませんように。


                   nona









2020.03.30
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