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はじめまして
当ブログの主、nona(ノナ)と申します。


「花より男子」原作漫画の二次物語を書いています。
カップリングは×つくしです。

漫画「花より男子」が大好きで、この物語を生み出してくださった原作者さまに敬意を表しつつ、原作の設定、登場人物を拝借し、私独自の世界観で物語をお届けします。
ですので司が酷い男になったり、つくしを裏切ったり、つくしが男好きになったりするかもしれません。
結末に関しても基本的にはハッピーエンドですが、そこに向かう経過では悲劇が待っているかもしれません。

このように、登場人物のイメージを崩したくない方、原作者さまが描く司やつくしやその他の登場人物のキャラクター以外は受け入れられない方、また、原作の流れから逸脱したストーリーに抵抗がある方は自己責任で閲覧をお願いします。
読んでから「イメージと違う!」とのご批判は受け付けません。

当ブログ、およびブログ主は原作者さま、および出版社さまとは無関係です。
また、作中に登場する人物、団体等については、実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
あくまでも個人的趣味で書いておりますので、登場人物や組織・社会設定などの詳細は想像の範囲です。ご容赦ください。

また、内容の無断転載・複製・悪意ある二次使用、あるいは引用要件を満たさない引用等はお断り致します。



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以上、ご了承ただける方のみ、物語をお楽しみください。

よろしくお願い致します。

               nona











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2030.12.31




つくしはあの夜から世田谷の道明寺邸で暮らしていた。


翌週には、使用人頭を引退して甥のいる金沢で隠遁生活をしていたタマが戻った。
もう使用人として仕えることはできなかったが、つくしの心の支えとして楓が呼び戻したのだ。

現在の使用人頭は宮本洋子と言い、ミヤと呼ばれていた。
テキパキと使用人を統率する様子とは裏腹に、柔和な雰囲気を持つ50代のふくよかな女性だった。

タマ同席のもと、全使用人、庭師、運転手、邸の警備員が集められた。

つくしが邸に住み始めた日の朝、邸に関わるこれらの人々は、朝からの報道で道明寺が苦境を脱したことを知り、これを機に道明寺家は司とつくしを結婚させることにしたのだと思い、期待に沸き立った。
2人を夫婦として迎え、新しい世代に仕えられることを心から喜んだ。

しかしその数時間後、司と五条院蝶子の婚約が伝えられると全員がしばらく動けず、中にはすすり泣く者さえいた。

と同時に、ではなぜつくしはここにいるのか。
婚約発表の今日から暮らし始めた意味はなんなのか。
謎は深まるばかりだった。

地下の使用人食堂に集まった面々に向けて、ミヤが話し始めた。


「ご存知の方もいらっしゃるでしょうが、先日から、保守管財部の牧野つくし様がお邸にお住まいになられています。牧野様は司様ご結婚後もこの邸に住まわれることが決まっています。それは五条院様の強いご希望です。」


そこまで話したとき、「そんな!」「お可哀想に」「あんまりだ!!」と怒声まで上がり、騒然となった。


ドンッドンッ!!


その時、ミヤの後ろに座って聞いていたタマが立ち上がり、杖を打ち付けた。


「静かにおし!!」


ピタリッと声が止んだ。


「これから話すことは他言無用、門外不出、絶対に漏らすんじゃないよ! いいねっ!」


全員がコクンとうなずく。


「五条院が道明寺を助ける条件が司様とのご結婚だ。」


ザワッ


「そして、その条件には続きがある。」


シーン…


「つくしを…つくし様を司様の内妻にすることだよ。」


“ 愛人 ” などとは言いたくなかった。
あれほど司と結ばれることをタマ自身が願った可愛い後輩を、自分の口で貶めたくはなかった。

一同が水を打ったように静まり返った。
想像だにしない事態に、誰も言葉を発することができない。


「だから後日、司様が戻ってこられたらつくし様は司様のお部屋にお移りになる。そして道明寺家の私財を管理しながら、今後、ずっとこの邸でお暮らしになるから、そのつもりでお仕えするように。」


…はい…


小さな声が聞こえた。


「返事が小さいっ!」


ドンッ!!


「「「 はいっ! 」」」




***




その時、つくしは「保守管財人・牧野つくし」に与えられた書斎にいた。


メープルのブライダル部を突然辞めてしまってみんなはどうしているだろう。
担当していたカップルの引き継ぎは上手くいってるだろうか。
弓浜先生にお願いしたドレスは来週にも仮縫いの予定だったのに、最後まで受け持ちたかった。


しかし、今はそんな感傷に浸っている場合ではなかった。
書斎の応接セットに腰掛けて、向かいの男性の話に集中しなければならなかった。
男性は保守管財部部長・篠田邦彦
まさに管財にふさわしい四角四面な風体だった。

・・・西田さんの兄弟とかじゃないよね?

西田利彦……篠田邦彦……似てる…


「牧野さん、」

「あ、は、はいっ」

「・・・この仕事はブライダルのように華やかでも喜びにあふれたものでもありませんが、仕事を面白くするかどうかは牧野さん次第です。」

「はいっ、すみません。」

「一応は「部」ですが、部員は私とあなた、そしてもう1人の3人です。道明寺家の私財に関わるんだ。信用がないと配属されない部署です。」


3人で管財しきれるんだろうか。
つくしはこの広大な屋敷に加えて、世界中に点在する邸宅や別荘の管理・管財の膨大さを想像して寒気がした。


「心配には及びません。あなたにはここを管理・管財してもらうだけで十分です。というより、かなり助かります。」

「そうですか?」

「はい。道明寺家の内側の人間になるあなたが本家であるこの広大で複雑な屋敷を担当してくれると社長から聞いて、私も遠藤くんも安堵しましたよ。ここを任せられるだけで私たちの仕事の3割は軽くなります。」


いやむしろ、そんな話を聞かされては不安になった。
では、これから自分がしようとしている仕事はいかほどのことなのか。全体の3割にあたるほどの業務をこなせるのだろうか。
・・・いや、急ぐことはない。
ゆっくりやっていけばいい。
「もういらない」と愛人をクビにならない限り、ずっとこの邸で暮らすんだから。
もしかしたら一生・・・


つくしは篠田部長から一通りの引き継ぎを終えるとタマの部屋へ足を向けた。




***




「タマ先輩」


馴染みの和室には先週からタマが戻ってきていた。
しかし流石に高齢者になったタマはもう昔のようにキビキビと動けるわけではなかった。
ただ、その威厳だけはいつまでも昔のままで、つくしに向ける慈愛に満ちた眼差しも変わっていなかった。

座敷の一枚木の座卓に座布団を並べて座る。
つくしが玄米茶を淹れ、タマ専用の湯のみと客用の湯のみに注いだ。
この部屋には司専用の湯のみもある。

年配者は往往にしてエアコンを嫌がるがタマも例外ではなく、欄間の見事な彫刻の向こうに見える味けない白い機械はその口を閉じたままだ。
縁側に面した障子は開け放たれ、庭に出るガラス戸も開かれ、網戸になっていて、庭園の蝉の大合唱が伝ってくる。
網戸の前には緑の渦巻き状の線香が焚かれ、夏特有の害虫を追い払っていた。
ここだけ見れば、孫が会いに来た田舎のおばあちゃん家だ。
新しく敷き変えられた畳の青々とした香りがこもったその部屋は、つくしには心落ち着く空間だった。


「つくし、引き継ぎは終わったかい?」

「はい、なんとか。あとはやってみないとわからないので。」

「この広大な屋敷の管理だ。そう簡単に覚えられるわけはないよ。まずは1年を過ごしてじっくり取り掛かるんだね。あんたならできるよ。」

「はい。わかりました。」


湯のみを近づけると香ばしい玄米の香りが湯気と共に鼻腔をくすぐる。
この邸でこんなにも落ち着くことができるのは青畳と玄米茶の香り、そして隣のタマの存在があればこそだろうとつくしは思った。


「あんたと坊ちゃんは、どこまでも平行に寄り添う運命なんだねぇ。」

「平行に寄り添う?」

「空と海さ。あるいは空と陸かい? いつでも向かい合って相互に作用しあってる。自分の存在は相手があってこそだ。なのに永遠に交わることはできないのさ。」


永遠に交われない

空を空たらしめてるのは地上があるから、地上を地上たらしめているのは空があるから。
そんな存在だと例えられてもつくしにはその哀しさの実感がまだなかった。


「屋敷の皆様にはご心配をおかけしたみたいで、すみません。」

「あんたが謝ることじゃないだろ。彼らも弁えてるさ。なによりあんたを守りたい者ばかりだ。遠慮せず頼りなさい。」

「…はい。」


蝉の大合唱はどうやら主演が交代したようで、アブラ蝉だったのがヒグラシに変わっていた。
この部屋の風情にはこっちの方が合ってるなと、つくしはその姿の見えない声の主に視線を向けた。






***





婚約発表から1ヶ月が経っていた。
司も世田谷の道明寺邸に住むことになった。

マンションのセキュリティーを静脈認証で解錠し、自分の部屋に入った。
荷物の運び出し作業が終わった部屋を眺め、寝室のクローゼットからつくしの部屋に入った。

空っぽになってしまった室内を眺める。
つくしと隣り合って住んでいた2年間。
愛や幸福がここには満ちていた。

朝は一緒に食事をして今日の予定を伝え合って、夜はティータイム。
その後は必ず抱き合って眠った。

もっと早く結婚しておけば。
その後悔に苛まれた1ヶ月だった。
恋人期間を楽しみたいだとか、道明寺の責任からまだしばらく逃れたいだとか、そんなことを考えずに帰国してすぐに入籍しておけばこんなことにはならなかったのに。

死ぬまで続くと信じていた幸福はある日突然に変質してしまった。

司はマンションを出た。

振り返り、もう一度マンションを見上げた。
北側のエントランスからは夏の日差しが見切れて影に入っている。
その明暗のコントラストはこれからの二人の人生を表しているようだった。











ここまでです。
司が政略結婚、というところまでは今までもあったと思いますが、「つくしと別れなかったらどうなるか?」と妄想した結果、こうなりました。
さて、五条院蝶子の真意は?二人の行く末は?
なによりも本連載はあるのか!??

期待せずにお待ちください(^^)



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2021.01.20




翌朝の朝刊各誌の一面には、新道製鋼の数値改ざん疑惑は払拭され、潔白だったという記事が踊った。

そして正午のヘッドラインで道明寺と五条院の提携及び司と蝶子の婚約が発表され、道明寺関連株は軒並みストップ高となった。
その後、アメリカ政府の輸入禁止措置も解除され、五条院顕信が言った通り、新道製鋼の取引額は3割増え、今期の最終経常利益は黒字となった。


司の婚約が発表されると、あきら、総二郎、滋が司のオフィスになだれ込んだ。
中でも何も知らされていなかった滋の剣幕は凄まじく、いつもの陽気な仮面を脱ぎ去り、本来の冷たさを隠さなかった。


「司、どういうことなの? 今回のこと、潔白が証明されたんでしょ? なのになんで五条院蝶子と婚約なの?」

「滋、落ち着け。司が一番辛いんだ。仕方なかったんだからよ。」


総二郎が取りなす。


「何言ってんのよ! 一番辛いのはつくしに決まってるでしょ!」

「司、牧野は・・・いや、そうだよな・・・これからどうするつもりかな、あいつ。」


あきらは司と別れただろうつくしを思うとそのことを口にするのも、憚られた。


「つくしはあたしが幸せにする! 大河原に来てもらって、あたしの秘書をしてもらうから!」

「それは無理だよ。」


類が入ってきた。
司を一瞥すると、総二郎の横に腰掛けた。


「類くんなに? 無理じゃないわよ。つくしのことはあたしがなんとしても説得する。あたしが守るから。」


類は目の前のテーブルを見つめながら言った。


「司、黙ってないで本当のことを話せよ。みんな仲間だ。お前たちの苦しみを分かち合ってくれるよ。」


類を除く3人が司を振り向いた。


「本当のこと? なんだよ、司。」


総二郎が怪訝な顔で尋ねた。
司は立ち上がり、みんなに背を向けて大きな窓から下界を眺めた。


「道明寺を嵌めたのは五条院だ。」

「な!? じゃ、なおさら、」


滋が叫ぶ。


「手を引く条件が俺との結婚だ。」


総二郎とあきらは先日、楓から告げられた内情が真実だったことを聞かされ、うなだれた。


「そしてその結婚の条件が、」

「結婚の条件? 条件の条件って、なんなの・・・?」


滋は顔を歪めて司の次の言葉を待った。


「牧野を俺の愛人にすることだ。」


!!!


3人は目を見開き、驚愕の表情で司の背中を見た。


「あい…じん…?」

「おい、待てよ、冗談だろ?」

「おいっ! 司!!」


司は振り向いた。
その表情はかつて見たことのない悲壮なものだった。


「五条院蝶子には好きな男がいる。身分違いのそいつとは結婚できないから、そいつを連れて俺と結婚する。つまり、俺との結婚はカムフラージュだ。だから俺にも牧野を連れてこいとさ。」

「そんな…なんで断わんなかったんだよ!!」


総二郎が立ち上がって怒りを露わにした。


「断れば、道明寺が潰れるまで叩くつもりだからだよ。」


答えたのは類だった。


「アメリカ政府に根回しできる相手だぞ。国内では唯一、道明寺の上をいく組織だ。それが徹底的に道明寺をぶっ潰すって宣言したんだ。牧野が断れるはずないだろ。」

「牧野の性格まで読んで、そこまでして五条院が欲しいのはなんだ? 司か? 牧野か?」


あきらが力なく呟く。


「…牧野なんじゃないかな。」


類のつぶやきに今度は視線が類に集まる。


「五条院蝶子が欲しいのは道明寺という隠れ蓑と牧野だ。なぜかはわからない。でも牧野に執着してる。」


司も同じ意見だった。
あの場で蝶子は確かにつくしを挑発していた。
つくしに断らせる道を絶った。
性格を知っていないとできないことだ。
つまりつくしを手に入れるためにかなり周到に準備された計画だった。


「は、はは、ははっ…つくしが愛人? あのつくしが?」


滋は立ち上がり、司に走り寄り、その腕を掴んで揺さぶった。


「つくしにそんな道を歩ませるの!? 日陰の女にするっていうの!? なんで、どうしてその前になんとかできなかったの!!? つくしはっ司の奥さんになるはずだったのにっ!!」


わかってる。
滋にもわかっている。
選択肢がなかったことはわかっていた。
同じ世界に生きる者として、道明寺が置かれた立場も、五条院の脅威もわかっていた。
でもそれでも叫ばずにはいられなかった。


「つくしは太陽がないと生きられないのに・・・」


滋は力なく崩折れた。
涙がポロポロとこぼれた。


「2人が決めたことだよ。俺たちがその決断に口を挟むべきじゃない。」


類はゆっくりと司に視線を向けた。
司も類の視線を受け止めた。


「ああ、そうだ。俺たちで決めたんだ。どうなっても離れない。」


動き出した。
進むしかない。

もう誰も言葉はなかった。










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2021.01.19




引っ越し作業は速やかに指示された。
つくしたちは楓の執務室から世田谷の邸に入らなければいけなかったが、まだそんな気持ちにはなれなかった。
そこに入れば最後、もう共に歩くことはできないように思われたから。

夏の長い日が暮れようとしていた。
2人は手を繋いで思い出の場所にやってきた。






守衛に話をつけ、校舎に入る。



出会った階段
飛び蹴りした廊下
駆けつけてくれた校舎裏
非常階段



「ね、」

「ん?」

「ずっと聞いてみたいことがあったんだよね。」

「なんだ?」


非常階段の手すりに2人でもたれながら、つくしは長年の謎をついに司に問いただそうとしていた。


「あの時、何があったの?」

「あの時?」

「夏休み明け、ここに忘れ物を取りに来てあんたがいた。」

「・・・」

「すごく怒ってたよね。そして追い詰められた。」


それは互いに忘れもしない衝撃的な出来事だった。
司はあまりのバツの悪さに背にしていた手摺に向き直って大学との境にある雑木林に向き合った。


「本気であたしをめちゃくちゃにしようと思ってた?」

「……思ってた…」

「なんで? 何があったの?」

「お前が、類に惚れてるって知った日だった。」

「え…」

「俺に見せたことのない顔を類に見せてた。恋する女の顔だった。」

「それで…ショックを受けたってこと?」

「お前を好きだと自覚する前に失恋したんだな。自分でも怒りの正体がわからなかった。ただ真っ黒い感情が暴れまわって飲み込まれた。理性を失うほどに。」

「でも、やめてくれた。」

「フッ、お前の肌に触れて恍惚となったんだ。そこにお前の声が聞こえた。我に返ったよ。」

「あたし結構、知らない間に道明寺を傷つけてたよね。」

「そうだよ。お前は酷い女だった。」

「元はと言えばあなたが悪いんだけどね。」


笑い合って次の場所に向かう。



校庭
パティオ
カフェテリア
屋上



「な、」

「え?」

「あの時さ、俺をここに呼び出して、本当は何言うつもりだった?」

「えっ!」

「なぁ、なんだった?」


つくしは告白するつもりだった。
バスを降りて、“ 橋 ” を渡って、スタートラインに立つつもりだった。
でも言い損ねて、大事なことを置き去りにしたまま付き合うことになった。

それを思い出すつくしの赤面は宵闇に紛れて見えない。


「…それは、」

「それは?」

「あ、えーっと、」

「俺も正直に話したんだから、お前も話せよ。」


何年も経って、今、こうしているのに恥ずかしくて暗闇でも司の顔を見られない。
つくしはそっぽを向いて答えた。


「…告白するつもりだった……」

「はっ?」

「だから、あんたに「あたしも好きだよ」って言って、スタートラインに立つつもりだったの! なのにあんたがお腹空かして怒り出したから、言えなかったの!」

「そんなの気にせず言えよ!」

「気にするでしょ! これから告白しようとしてんのに、相手はすでに怒ってるんだよ? こっわーい顔で睨んじゃってさ。言えるか!」


つくしはもう恥ずかしくて体ごと反対を向いた。
後ろから司が抱きしめる。


「じゃ、今言えよ。」

「……やだ」

「やだじゃねぇ。なぁ、ほら、言ってみ?」

「…………あ、あたしも道明寺が好きだよ…」


ギュ、と、司の腕に力がこもった。


「すげー聞きたかった。」


つくしは、自分の胸の前で組まれた司の腕を抱きしめた。


「ここで言えなかったから、みんなの前で叫ぶことになっちゃってさ。」

「ああ、あれ最高だった。やっぱ、ここで聞かなくて正解だったかもな。」

「…バカ」


司はつくしを自分に向かせ手摺りに押し付け、両手を付いてつくしを閉じ込めた。


「今もまだ、いっぱいいっぱいか?」

「……いつでもドキドキしちゃって、いっぱいいっぱいだよ。」


次の瞬間に唇は奪われた。
真夏の濃厚な夜風が2人を包み、キスの温度をさらに上げていく。
離れがたく絡みつき、溶けるように混ざり合う。
恋人として最後の夜に交わしたキスを2人は生涯忘れないだろう。









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2021.01.18




午後3時

五条院邸の応接室に楓と司、そしてつくしが揃って座っていた。
ドアが開き、顕信、蝶子、そして本所桐仁が入ってきた。
立ち上がって出迎える。
顕信が着席するのと同時に全員が座った。


「さて、では返事を聞かせていただこうか。牧野さん。」


部屋の全員がつくしに向いた。
つくしは一度司を振り返ってから、堂々と蝶子を見つめた。


「謹んでお受けいたします。」


目を逸らさずにそれだけを言い切った。
司はつくしが揃えた膝の上の手を握っていた。


「牧野さん、受けてくださってありがとう。これでわたくし、本当に安堵いたしましたわ。」


五条院蝶子は本当にほっと息を吐いた。
隣に座った桐仁が蝶子の肩を抱き、その顔を覗き込んで微笑んだ。


「では、道明寺社長、事は急ぎたい。道明寺と五条院の業務提携は明日、発表する。と同時に司くんと蝶子の婚約も発表するつもりです。よろしいですか?」


五条院顕信が楓に向かって言った。


「ええ、もちろんです。こちらとしても一刻も早く手を打ちたいところですので。」

「申し訳ないが、結婚までの段取りはすべてこちらでさせていただく。婚約発表は文書でのみだ。会見はしない。入籍・披露宴は4ヶ月後の12月。それまでに蝶子たちの部屋をご用意いただきたい。」

「わかりました。」

「それとお母様、道明寺邸の敷地内にチャペルを建てさせていただきたいわ。もちろん、費用は五条院が出します。」

「チャペルを? なぜ?」

「わたくしと桐仁の結婚式のためですわ。」


!!


「司さんとは式はしませんわ。披露宴だけ。ビジネスですものね。誓い合う愛はありませんもの。そうだ!司さんと牧野さんもチャペルで式をお挙げになったら?」


この女はまた何を言い出すのか、と司はもう呆れ返る思いだった。
よくもここまで道明寺をコケにできるものだ。
楓の心中に荒れ狂う怒りが見えるようだった。

そしてチラとつくしを見遣った。
もしやつくしもそれを望むのか?と。
しかし、つくしの表情はかつて見たことのない無表情だった。
それは彼女が初めて見せた氷の心。


「いえ、私達は結構です。でも、蝶子様のお式には何かお手伝い出来ることがあれば是非、携わらせていただきたいです。」

「あら、よろしいの?もちろん、牧野さんにはプランニングをお願いしたいのですもの。いろいろ相談に乗っていただきたいわ。」


蝶子はニッコリ微笑んだ。




***




「フゥ、…道明寺も舐められたものね。」


珍しく疲労の吐息をいつた楓からは言葉よりも深い怒りが感じられた。
司との結婚が条件だったにもかかわらず、他の男との結婚式を道明寺の敷地内で行いたいと言う申し出には、怒りでこの話をぶち壊してしまいそうだった。


「ええ、あまりのことに驚きました。」


ここは楓の執務室。
五条院から戻り、3人はツノ付き合わせていた。


「ここまでコケにされりゃ怒りも通り越すけどな。」


楓がジロリと司を睨んだ。


「いいわ、これからのことね。」


楓はデスクから立ち上がり、2人が座るソファに座り直した。
つくしの目の前に一枚の紙を差し出す。


「牧野さん、受けていただいて感謝するわ。本来ならそのような立場、私が干渉するものではありませんが、あなたは特殊な事情で“ そう ”なるのですから、全てこちらで段取りさせていただきます。」

「はい。」

「まず、本日から世田谷の本宅で暮らすこと。」

「今日から!?」


司が口を挟んだ。


「司、気持ちはわかるわ。でも、明日、あなたの婚約が発表された瞬間から牧野さんは愛人になるのよ。守るためにはすぐに本宅に移るしかないわ。」


司はグッと拳を握りしめた。
その手をつくしが包み込む。


「大丈夫だから。」


二人の様子にチラリと送った視線はすぐに目の前の紙に戻った。


「そして職場も異動してもらいます。」

「え!?」

「本日付けで、あなたには道明寺文化財団の保守管財部へ移ってもらいます。」

「保守…管財?」


道明寺文化財団とは社会貢献の名目で国内外の文化財を収集、修復、保存、管理し、時には一般公開する活動をしている、道明寺唯一の非営利組織だ。


「保守管財部は主に道明寺家の私財を管理する部署です。あなたには世田谷の邸およびその敷地を管理してもらいます。もちろん使用人の人事に関しても、邸で行われるいかなる行事についても全てです。」


それは住居と職場が同じ場所であることを示していた。
つまり世田谷の邸に住む理由として、住み込みの管理人になるのである。

司は、それが楓の精一杯の心遣いだと気づいた。
今のままの仕事を続けた場合、つくしは司と蝶子の披露宴に携わることになる。
そんな残酷なことはさせられなかった。
それに、つくしと司が恋人関係にあることは周囲も気づいているに違いない。
そこで婚約発表となれば、つくしには御曹司に捨てられた女との醜聞が待っている。
つくしを守るにはこの選択しかなかった。


「…よろしくお願い致します。」


つくしは唇をキュッと噛み締めていたが、やがて頭を下げた。










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2021.01.17
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