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はじめまして
当ブログの主、ノナと申します。

花より男子の二次小説を書いてます。
CPは司×つくしです。

基本的にハッピーエンドを目指してますが、キャラのイメージを崩したくない方や、原作以外のストーリーに抵抗がある方は閲覧をお控えください。

また、作中に登場する人物、団体等については、実在の人物・団体等とは一切関係ありません。

原作者さま、および出版社さまとは無関係です。
あくまでも個人的趣味で書いておりますので、登場人物や組織・社会設定などの詳細は適当です。ご容赦ください。
また、内容の無断転載、複製、二次使用等はご遠慮ください。






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2025.01.01




24日 NY JFK国際空港  13:56


NYに着くとDMAA担当者からメールがきていた。

“ ホテルはグランド・メープルです。明日はよろしくお願いします。 ”

やっぱりね。

つくしはタクシーでマンハッタン中心地にあるグランド・メープル・ニューヨークに向かった。





『Ms.ホワイト、キィーはこちらです。』

渡されたキィーはインペリアル・スイートのものだった。

やっぱりね。

『あの、部屋を変えてもらえない? ダブルか、ツインでいいわ。』
『申し訳ございません。Ms.ホワイトのご予約はこちらのお部屋で入っておりまして、変更は出来かねます。』
『あ、そう。じゃあいいわ。キャンセルしてください。他を当たるわ。』

つくしは踵を返して出て行こうとした。

『Ms.ホワイト! あの、お待ちください!』

フロントが呼び止めるのも構わず、つくしはそのままロビーを横切った。

『Ms.ホワイト!!』

身なりのいい年配の男性が大慌てでつくしの前に立ちはだかった。
この荘厳なホテルのロビーを走るような教育は受けていないはずだが、男性にとってつくしに出て行かれることはその禁を破るに値する事態だったらしい。

『わかりました!! 変更いたします。しかし、せめて、せめてジュニアスイートでいかがしょうか?』

ハァハァと息を切らせながら申し出る男性が不憫になってつくしはうなずいた。
男性は支配人で、今日は特にMs.ホワイトを丁重にお出迎えするように “ 上の者 ” から言付かっているとのことだった。

やっぱりね。

あの男のやりそうなことはわかりやすい。




ジュニアスイートにチェックインしたのは15時半を過ぎたころだった。
日没まではまだ少しある。
久しぶりにブロードウェイでも訪ねてみようと思い立った。

グランド・メープル・ニューヨークはミッドタウンイーストにあり、ミッドタウンウエストのブロードウェイまで歩いても20分かからない。

つくしはエマとしてではなく、牧野つくしとしてゆっくりNYを眺めるのは初めてだった。


まさか自分がこのマンハッタンをホームタウンとして生きていたなんて未だに信じられない。
あの貧しかった高校生が、いまやNYで新進のフォトグラファー。
ブロードウェイだって「ちょっと暇つぶしに」なんて感覚で鑑賞したりなんかして。

・・・もし、もしも、あのまま牧野つくしのままだったら、私はどんな人生を送ってたかな?
きっとずっとバイトを続けて家計を支えてる。
大学は行けたのかな?
ってか、英徳を卒業してないかも。
きっと家計が苦しくなって、都立に転校してる。
それならそれでいいか。

!!

・・・やっば・・いま思い出した。
道明寺に70万借りたままだ。
しかも10年も・・・。
あー、またあいつと関わらなきゃいけない案件増えたよ。
面倒だなぁ。
忘れててくれないかなぁ。
って、そういう問題じゃないよね。
借りたものは返さないと。
今なら一括で返せる。
当時の70万円て何ドルだ??


つくしは面倒なことはさっさと済ませようと、ブロードウェイに向かっていた足をキャッシュディスペンサーに向け、司をコールした。






RRRR. RRRR. RRRR. RR……


〈…牧野?〉
「うん、元気?」
〈あ、ああ。どうした?〉
「あー、あのさ、いまNYに戻ってんだけど、会えないかな? 返したいものがあってさ。」
〈返したいもの?〉
「うん、それが言いにくいんだけど、10年前に借りた100万の残りの70万。さっき思い出してさ。かなり今更なんだけど。」
〈・・・・〉
「忘れてた? 忘れてたならいいかな? 道明寺にとっちゃ70万なんてはした金…」
〈返せ・・・今すぐ返せ。いまどこだ?〉
「ウエスト49番通りと7番街通りの交差点。」
〈ブロードウェイに向かうところか?〉
「そう。時間あるから観ようと思ってて思い出した。」
〈今から行く。待ってろ。〉
「いいよ! 仕事中でしょ? あたしが行くよ。オフィス?」
〈今日はもうオフだ。そこで待ってろ。〉


通話は切れた。
つくしは携帯の時刻表示を見た。
16時過ぎだ。
日暮れが迫り、賑やかな街の灯りが瞬き始めている。


16時にオフのわけないじゃん。
何考えてんだろ。


そんなことを思いながらも、司に会えることに少し心が浮き立った。








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2019.01.21




ベルリンからパリに飛んだつくしは、類に連絡を取った。



RRRR. RRRR. RRRR. RR……


『Yes?』

花沢類が出た。英語だ。
まだ聞いてないのかな?

「花沢類?」
〈・・・・・〉
「えーと、エマだけど、」
〈・・・・・牧野?〉
「あっ! そう。牧野。牧野つくし。記憶が戻ったの。」
〈・・・・いま、どこ?〉
「パリ。オペラ座の前。」
〈待ってて。〉
「え、忙しいのにごめん。大丈夫なの?」
〈・・・待ってて〉


20分ほどして、ルノーの運転席からスーツ姿の類が降りてきた。

「牧野!」
「花沢類!」

類はつくしに駆け寄り、その両手を握り締めた。

「記憶、もどったの?」
「うん。そう。心配かけてごめんね。」
「わかった。場所を変えよう。」
「え、仕事は?」
「いい、今日はもうオフだ。車に乗って。」
「花沢類の運転?」
「そう。パリじゃリムジンは邪魔。」
「あはは、そうだね。」

つくしをエスコートし、自分も運転席に乗り込むと類はチラリとバックミラーを見た。

「・・・あんたのSPが慌ててるけど、あれ司んとこの?」
「うん、そう。まだついてくるんだね。」

つくしは今も自分に司がつけたSPが張り付いていることはわかっていた。
でも司に外すように訴えることはなかった。
なぜだろう。
司がまだ自分を大切に思ってくれていると感じたかったのかもしれないし、言っても聞かないとわかっていたからかもしれない。
いずれにせよ、司がSPを外す時が本当の終わりの時だとつくしは感じていた





*****





類の運転するルノーはパリ郊外の花沢邸に入った。
類は16区のアパルトマンに暮らしているが、両親や来賓は邸を利用していた。
アパルトマンの方が近かったが、類はつくしのSPから司に行われる報告でいらぬ誤解を受けたくなかった。

つくしは豪邸でありながら、華美を排したフレンチクラシックな応接間に通された。
類とは窓を背にして向かい合って座る。
つくしからは部屋全体が見渡せた。
豪勢なマントルピースの上には一族の写真が並べられ、壁にはどこかで見たことのある絵画が掛けられていた。

メイドがアフターヌーンティーを運んできた。
カラフルなマカロンをソーサーに乗せ、ソーサーごと膝において香り高い紅茶を味わった。


「で、いつ戻ったの?」
「クリスマスの日。また雪山で遭難して、死にかけたの。」
「…あんた、そこまでくるともう趣味かよ。」
「10年前の医者は記憶は戻らないって言ったらしいんだけど、神の御技で戻っちゃったんだよね。」
「司にはすぐに言ったの?」
「ううん、言えなかった。話したのは年明け。」
「で?」
「まぁ、驚くよね。固まってた。」
「…で?」
「…で、別れた。」
「なんで?」
「道明寺はエマを愛してた。あたしはエマじゃなくなった。それが理由。」
「本当にそれだけ? 赤札のことは? 」
「そのことはもういいの。花沢類も忘れて。もうあのことであたしに申し訳ないとか思わなくていいから。」

類は持っていたソーサーを目の前のローテーブルに置いた。
そして膝の上に肘を置き、手を組んで、視線を伏せた。

「…いや、やっぱり謝らせてほしい。あの時、あんたに出会うまで俺は自分の堅牢な要塞に閉じこもってた。司が何をしてても俺には関係ないと思ってた。それがあんたにエマの人生を強いたんだ。悪かった。」
「クスッ、花沢類は助けてくれたじゃない。だからあたしはあなたを好きになったんだよ?」

類は目を上げてつくしを見た。

「…初めての恋は俺で、初めての愛は司だったろ?」

つくしは視線を流したまま足下に落としながら、肯定するように寂しげに微笑んだ。

「愛してるなら別れる必要あった?」

つくしもソーサーをテーブルに置き、脚を組んだ。

「・・・あいつはあたしから逃げた。あたしと自分の罪に向き合わなかった。そしてエマを手に入れた。あたしを選ばなかったのはあいつだよ。あたしを拒否したのはあいつなの。だから別れた。」
「牧野、あんたも人を愛したならもうわかってるだろ? それも愛だよ。時に唾棄すべきほど醜悪になる。悪魔に魂を売り払っても相手を手に入れたくなる。司はあんたを手に入れるためにそうしたまでだ。もう一度、チャンスをやれない?」
「チャンスって、あいつが魂を売ってまで手に入れたかったのはエマでしょ? エマは手に入ったじゃない。あたしは必要とされてない。花沢類の言ってることはおかしいよ。」

類もソファにもたれ脚を組んで、「はぁぁ〜」とため息を吐いた。

「あんたって変わんないね。鈍感なまま。大人の女になったって思ったのに、結局、16歳の牧野つくしのまま。司も苦労するよな。」
「なによ! どこが鈍感なのよ! 花沢類の思い込みだよ。あの時もあたしが鈍感な子で本当は道明寺を好きだったとかエマに言ったでしょ!? 今思い出すとムカつく。」
「本当だもん。あんたは16歳の時も司を好きだったよ。今だってそうだろ? 司を好きだろ? 大人になったんだ。素直になりなよ。」

つくしは類を見ていた視線をもう一度、部屋の壁に掛けてある絵に向けた。
もしかしてあれはフェルメール? 本物?だよね。
さすが花沢家。何億だろう?
なんてことをぼんやりと考えた。

「……好きだよ。だから耐えられなかった。あたしの中にエマを探されることに。そして見つけられないとわかったときに落胆されることが。」
「牧野・・・牧野は思い違いをしてる。司が愛してるのはあんただ。名前が何だろうが本質はあんただ。名前にこだわってるのはむしろあんた自身だよ。…前にも言った。司がどうじゃない。あんた自身はどうしたいのさ? 」
「・・・・・あたしは・・」

会いたい。
そばにいたい。


つくしの目から涙がこぼれた。

苦しい。
人を愛することがこんなに苦しいなんて知らなかった。
エマの時に知った苦しみは手に入らない苦しみだった。
でもいま感じる苦しみは、彼がエマを愛した温もりが自分のものだと感じることができない苦しみ。
エマを乗り越えられない。
彼が愛したのが全く別の女だったらよかったのに。
そうすれば愛される喜びを知らずに済んだのに。
知らなければ、失くす痛みも感じない。


静かに、ただ涙だけがサラサラとつくしの柔らかな頬を伝っていた。
類はつくしの横に座り直し、その肩を抱いた。

「いくらでも泣いていいよ。俺がこうしててあげるから。」

つくしは類に身を預け、泣いた。
この涙に愛が溶けて、全部流れて無くなってしまえばいいと思いながら。









「ブッ、へんな顔。」
「うるっさいなぁ。泣けばこうなるのよ。」

ひとしきり泣いたつくしの顔は瞼が腫れて、鼻が真っ赤だ。

「それで司のこと、忘れられる?」

つくしはハァァと一つ息をついた。
そしてソファの背もたれに身を預け目を閉じた。

「・・・・・あいつ、ほんっとに迷惑なヤツ。もうあたしの心に住みついちゃってるから、追い出せないかもね。」
「プックククッ、お前たちってここまでくるとコメディみたい。」

頭をもたげてジロリと類を睨む。

「笑い事じゃないわよ。」

類は真面目な顔になって、隣のつくしを覗き込んだ。

「牧野、これだけは覚えておきなよ。司は牧野だったからエマを愛したんだよ。牧野を置き去りにしたけど、それもお前を愛してるからだよ。あいつにしちゃ、弱気だったけどね。」
「皮肉だね。あいつがエマに真実を隠したことが牧野つくしの記憶を戻させたんだから。最初から全部を知らされてたら、記憶は戻らなかったかもね。」
「それが神の御技だろ。」
「フッ、そっか。」



それから数時間後、類に送られてつくしはパリ市内に戻り一泊した。
翌日、パリを飛び立った飛行機は航路を西へと進んだ。







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2019.01.20




日本滞在1週間、つくしはドイツへ旅立とうとしていた。


「本当にまた帰ってくるね?」
「ママ、うん、大丈夫。日本が私の家だから。どこにいても必ずまた帰るよ。」
「待ってるから。」
「パパ、ごめんね。体、大事にしてね。じゃ、行ってきます。」



タクシーに乗り込み、最寄りの駅へ向かう。
その時、DMAAの担当者から連絡が来た。


『はい』
《Ms.ホワイト、仕事の話をしたいんですが、よろしいですか?》

つくしは「ついに来たか。道明寺にしては時間をかけたな」と思った。

『どうぞ。』
《特定業務をお願いしたいのです。》

そう来たか。断らせない作戦ね。

『わかりました。内容を教えてください。』
《いえ、それはこちらでお会いした時に。NYへはいつ戻られますか?》
『戻る予定はありませんが、どうしても、と言うなら1週間後です。この後、ドイツ、その後パリに寄りますので。』
《わかりました。では25日の10:00でどうでしょう?》

25日・・・VOGAの発売日が28日。全世界同日発売だから時差の関係で日本の方が早く発売する。デジタル版の配信は午前0時だから、NYの27日の朝10:00には日本で発表になる。
その時点で道明寺はあれを見ることになる。
その時、あたしもきっと同じNYにいる・・・これも私たちの運命だね。

『結構です。場所はDMAA社でよろしいですか?』
《いえ、5番街の道明寺本社でお待ちしております。》
『・・・わかりました。』
《ホテルはこちらで手配しますので。》
『はい、お願いします。』

きっとグランド・メープルね。


通話は切れた。

「はぁ〜…」

憂鬱なため息が出た。
道明寺が仕掛けてくるのは想定内。
きっと顔を合わせることになる。
でも会いたくない。

会えば陥落してしまいそうな自分がいる。
身代わりでもいいからそばに居たくなる気がして、つくしは自分の弱さに初めて気づいた。





*****





ドイツ ミュンヘン空港

つくしは三条桜子に会うためにベルリン経由でミュンヘンに降り立った。
あきらの情報によれば、桜子はミュンヘン大学の大学院で心理学教授の助手をしているという。
人の美醜に対する心理の研究をしているんだとか。

つくしはメモを頼りに、ミュンヘン大学の門をくぐった。



東の大学院棟に入る。
受付で第一心理学教室を聞く。
英語が通じてよかった。

そこは4階にあった。



コンコン


『どうぞ』

中から返事が聞こえ、ドアを開ける。
そこは壁という壁が書籍で埋まっている。
正面にデスクがあり、男性が座って老眼鏡を下げてこちらを見ている。

『どなたかな?』
『はじめまして、英語で失礼します。私は牧野つくしといいます。こちらに三条桜子さんはいらっしゃいませんか?』

つくしの言葉を聞いて、突如、男性が椅子を倒す勢いで立ち上がった。
その顔は瞬時に紅潮し、驚愕に目が見開かれている。

『ツクシ? ツクシ・マキノ? 』
『は、はい。あの、どうかし・・・』
『サクラコ!!サクラコ!!』

男性は慌ててデスクの左側にあるドアを開け、続き部屋に入っていった。

ど、どうしたんだろう??

すると、男性の入っていった部屋からカッカッカッ! とハイヒールの靴音が高らかに響いた。
そしてドアから見覚えのある美しい女性が姿を表した。
女性は目を皿のようにしてつくしを見つめている。

「・・・先輩・・」

「桜子・・・」

優に10秒は見つめ合っていた。
桜子の視線がつくしを隅々までなぞった。

カッカッカッ

ガバッ

「先輩!!」

桜子はつくしに近づいてそのまま思い切り抱きしめた。

「桜子、ごめん、心配かけて」
「生きてたんですね! やっぱり、生きてたんだんだ! 殺してもタダじゃ死なない先輩が・・吹雪なんかで死ぬはずないと思ってたんですよ・・・ 」

憎まれ口を叩きながらも、その体は震えていた。
途中から声も震えていた。

「うん、そうだね。」

つくしも桜子を抱きしめた。
10年間、忘れないでいてくれたことが嬉しかった。

「ぅぅううぅうわーん、うえうええん!」

桜子はそのままひとしきり泣いた。





*****





大学のカフェで向かい合ってコーヒーを飲んでいる。
桜子の美しさはそのままだが、当時は感じなかった知性がプラスされ、ますますコケティッシュな魅力を放っていた。
ミュンヘン大学でも有名な東洋の美女らしく、カフェでは彼女のおかげでケーキをサービスしてもらった。

「さっきの人は教授?あたしのこと知ってるみたいだったけど。」
「ああ、はい。私が事あるごとに先輩の話をしてたから。興奮してましたよ。まったくもう! 驚かさないでくださいよ!」
「驚かそうと思ったわけじゃないわよ。あんたに会いたかったから。」
「先輩のせいで瞼は腫れるし、化粧は崩れるし、せっっかくの美女が台無しじゃないですか。」
「あんたねぇ、10年経っても性格は1ミリも変わってないってある意味すごいよ。」
「私のことはいいんですっ。で? 今までどこで何をしてて出てこなかったんですか?」
「うーんと、カナダで記憶喪失になって、NYでカメラマンやってた。」
「ハァ、相変わらずの波乱万丈ってやつですか。記憶喪失なんて普通なります? で、記憶が戻ったんですか? 」
「うん、最近ね。それで心配をかけた人たちに会って回ってるの。」
「じゃ、日本にはもう?」
「うん。両親と優紀、美作さんと西門さんに会ってきた。この後はパリに花沢類を訪ねる予定。」
「・・・重要な人が抜けてますけど、まさかNYにいたってことは、もう道明寺さんとは・・」

・・・・・

「・・・ふーん。そういうことですか。」
「な、なにが? なにがそういうことなのよ? 」
「こっちのセリフです。何があったんですか? こう見えても心理学の助手ですよ。隠し事は無駄です。さあ、全部、吐いてください。」






「へー、そんな面白い話を美作さんも西門さんも私に秘密にしてたんですね。」

桜子の目に悪魔が宿る。

「エマ・ホワイトですか。「VOGA」はドイツでも販売されてますからね。私も購読してます。まさか、あの道明寺さんの写真が先輩の仕事だったとはねぇ。運命の神様っているんですね。」

もしそんな神が本当にいるのなら殴り込みに行くのに、とつくしは思った。

「で、別れてこれからどうするんですか?」
「それなんだよね。DMAAの契約が残ってるから、縁は切れないのよね。来週はその件でまたNYだし。ガブリエラのオファーを受ければDMAAとは切れるけど、そしたら今度は日本に帰れなくなる。」
「・・・先輩、先輩があんな目に遭ったのは道明寺さんだけのせいじゃありません。私にも罪があるんです。だから、道明寺さんのこと、許してあげられませんか?」
「桜子、そのことはもういいよ。赤札があってもなくても、あんたのことがあってもなくても、騙されたのはあたし。あの3人とはそういうことは関係なく、元からお互いに気に入らなかったんだから、ちゃんと確認すれば済む話だったんだよ。あたしの軽率さのせいで、どれだけの人の人生が変わったか。あたしの方こそみんなに謝まらなきゃいけないと思ってる。」
「ハァァ…お人好しがパワーアップしてません? 私、今の研究やめて先輩のお人好しを研究しようかな。」
「…道明寺にもこの10年、十字架を背負わせて悪かったと思ってる。でも側にはいられない。あいつの中にはもうあたしはいないから。」
「先輩がいないなら、どうしてエマ・ホワイトを愛したんでしょうね。」
「え?」
「先輩がいるから、エマを愛したんでしょ? やっぱりエマは先輩の身代わりだったんですよ。」
「・・・・」

桜子はコーヒーに目を落とした。

「…あの時、先輩を失った道明寺さんは見てられませんでしたよ。自暴自棄に暴れるわけでもなく、元の傍若無人に戻るわけでもなく、表情も無くなってただの抜け殻でしたね。食べないし、寝ないって邸のメイド頭のお婆さんが本当に泣きながら嘆いてました。それで、お姉さんが迎えに来て、そのままNYに旅立ってしまわれて。
だからあの「VOGA」を見たとき、驚きました。だって、道明寺さんの目に光が宿ってたから。それも、先輩を追いかけてたときみたいな強い光が。だから私、腹が立ったんです。先輩以外の女を愛したんだって思って。道明寺さんには一生、先輩だけを愛してて欲しかったから。でもあれは先輩を見つけた日だったんですね。だからだったんだ。納得したし、安心しました。」

桜子は最後はつくしに向いて、普段は見せない素直な表情でニコッと笑った。
つくしはそれが居たたまれずに両手で包んだマグカップに視線を落とした。

それを聞いたからって、もうあたしには何もできないよ。
最初はエマがあたしの代わりだったかもしれない。
でもいつのまにか道明寺の中で、エマが本物になったんだよ。
それを責める立場でもない。

「じゃ、あたし行くね。桜子、会えて嬉しかった。あんたももうあたしのことで自分を責めないで。あたしは大丈夫だから。」
「先輩、先輩はどうしたいんですか?道明寺さんがどうじゃなく、先輩がしたいように行動してくださいね。せっかく戻ったんですから。」
「・・・ん。わかった。ありがとう。」



ミュンヘンを後にしたつくしは、ベルリンに戻り一泊し、翌日、パリに向かった。








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2019.01.19




司は未だにつくしに付けているSPからの定期報告を受けていた。

家族の住むアパートを訪ねたこと。
玄関先で抱き合って泣いていたこと。
西門邸で西門総二郎と美作あきらに会ったこと。

つくしの行動が、本当に牧野つくしが戻った証のように感じられた。
だからこそ覚える違和感があった。


牧野は自分にSPが付いていることをわかってるはずだ。
なのに未だに外せとは言ってこない。
あいつなら真っ先に嫌がるはずなのに。

・・・きっとわかってんだな。
何を言っても俺が外さないことを。
それともいちいちコンタクトを取るのが面倒だって言うのか?
それさえも疎ましい?

フッ、俺は馬鹿か。
あれだけの仕打ちを彼女にしておきながら、あくまでも自分は傷つきたくないのか?
俺のことが疎ましくてもそうじゃなくても、牧野の動向が把握できるんだ。
御の字じゃないか。


つくしからの一方的な別れを、司は受け入れたわけではなかった。
つくしを諦めたわけではなかった。
しかし、つくしが戻った事実を受け入れるには、あまりにも唐突すぎた。

それに司はつくしの真意を測りかねていた。

” お互いを解放しよう ”

つくしが自分を憎んでいないことが、責めていないことが信じられなかった。
そしてあの6日間が信じられなかった。
好きでもない男に抱かれる女じゃないことは重々承知していても、それでも「まさか、」という思いを拭えなかった。


司は先日、DMAAの担当者にメールした案件についての返答をチェックしていた。
クライアント承認を受けて、エマ・ホワイトへ特定業務としてオファー了承との返答だった。


よし、これで牧野をNYへ呼び戻せる。
牧野に会って、次こそはあいつの本当の心を見てやる。


司はつくしを取り戻す希望を捨てていなかった。




*****




西門邸を訪ねた翌日には、つくしはある大病院の前にいた。
千恵子から教えてもらったのは、優紀の職場だった。
優紀はここで看護師として働いていた。

総合受付に行く。

「あの、すみません。ここで働いている、松岡優紀さんにお会いしたいんです。高校時代の友人だと伝えてください。」


つくしは一番謝らなければならない人間は優紀だと思っていた。
英徳とは関係ない、ましてやF4とも関係ない優紀を巻き込んでしまったのは自分だ。
そのせいで彼女がどれだけ苦しんだか。
つくしにも容易に察することができた。


総合受付にフワフワの髪をひとつに束ね、看護師のウエアを着た女性が現れた。

「松岡です。友人てどこですか?」
「あちらの方です。」

受付がつくしを示した。
優紀が振り向く。
その目がみるみるうちに見開かれ、そして涙に濡れていくのがわかった。やっとのことで声が出た。

「つ・・・つ、くし??」
「優紀!! うん、つくしだよ。」

優紀は驚きで動けない。
つくしが近づいた。

「私、生きてたの。優紀、ごめんね。」

つくしは優紀を抱きしめた。

「つくし・・・」

優紀はまだ信じられない。

「優紀、いま仕事中だよね? 休憩時間はいつ?」

優紀はじっとつくしを見ている。

「優紀?」
「あ、あの、いま大丈夫だから。・・・ほんとにつくしなの?」
「優紀、出られる?」
「あ、うん。コート着てくるから、待ってて。」

と、言ったが優紀は腰が抜けてその場に座り込んだ。

「優紀!」

ここは病院だ、すぐに他の看護師がやってきて、かがみこんで様子を伺う。

「すみません。大丈夫です。ちょっと驚いて力が抜けて・・・」
「こんなとこに来てごめん。立てる?」

つくしが手を貸して優紀はようやく立ち上がった。
ロビーで待合の椅子に座る。
優紀はつくしがもうどこにも行かないように、その両手を自分の両手でグッと捕らえた。

「つくし、本当に生きてたの?」
「そうだよ。詳しいことを話していい?」
「うん、話して。」
「私ね、ある人に助けられたんだけど、最近まで記憶を失ってたの。でも取り戻したから帰ってきたの。」
「記憶を!? 10年も?」
「そう。10年ぶりに思い出したの。心配かけて本当にごめんなさい。」

つくしは頭を下げた。

「うっ!うぅ・・」

優紀はやっと事の次第を理解し、親友が帰ってきた実感に泣き出した。
つくしはあわててハンカチを取り出した。

「グスっ、あ、ごめん。やっぱり外行こう。私、看護師なのにこんなとこで泣いてたら勘違いされるから。もう立てるから大丈夫。エントランスで待ってて。」





2人は病院近くのカフェに入った。
つくしは司のことは省いてこれまでの経緯をかいつまんで話した。

「そっか、今はカメラマン。つくしがねぇ」
「ねえー、あたしもビックリだよ。」
「それで、誰には話したの?」
「もちろん家族と、あとは西門さんと美作さん。この後、パリとドイツに行って花沢類と桜子に会うつもり。」
「・・・道明寺さんはニューヨークだよ。会わないの?」


ギクッ


「…会う必要ある?」
「・・・ごめん。そうだよね。赤札を貼った人だもんね、会いたくないよね。」
「…あの日、道明寺はどうしてた?」
「道明寺さんはすぐに別荘を飛び出してつくしを探しに行ったけど、見つけられなかった。別荘に戻ったり探しに行ったりを何度も繰り返してた。
そのうちに道明寺さん自身が体力的に危なくなってきて、西門さんとかに止められて、暴れて、それでも止められて、最後は顔面蒼白になってた。みんな、本当に心配して無言だった。」
「そっか…あたしが馬鹿なせいで、本当にごめん。」

つくしはもう一度頭を下げた。
頭を下げながら、つくしは自分の涙を見られまいと隠した。
司が自分をそんなにも心配して探してくれたことが嬉しかった。
エマの身代わりで司のそばにいるのが辛くて自分から別れを選んだのに、もう会いたくてたまらなかった。


「つくし、私が言うのはおかしいことはわかってる。でも道明寺さんも美作さんも西門さんも花沢さんも、みんな後悔してた。だから、もしつくしが、、、できることなら許してあげてほしい・・・ってほんとに私が言うべきことじゃないけど。」
「ううん、ありがとう。もうね、恨んだりしてないよ。そんな時間、無駄だもん。それにこの10年、あたしが遭難したせいでいろんな人の人生が変わった。優紀だってそうでしょ? きっと自分を責めたでしょ? もうやめよう。あたしは不幸じゃない。いまはちゃんと仕事もあるし、3ヶ国語を操れるようになったし。だから優紀、どうか幸せになって。」
「うっ…つ、つくしぃ〜〜〜」


2人はいっしょになって泣いた。
女2人が人目もはばからず大泣きした。
10年分の澱が溶けていくようだった。








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2019.01.18
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