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はじめまして
当ブログの主、ノナと申します。

「花より男子」原作漫画の二次小説を書いてます。
CPは×つくしです。

基本的にハッピーエンドを目指してますが、キャラのイメージを崩したくない方や、原作以外のストーリーに抵抗がある方は閲覧をお控えください。

また、作中に登場する人物、団体等については、実在の人物・団体等とは一切関係ありません。

原作者さま、および出版社さまとは無関係です。
あくまでも個人的趣味で書いておりますので、登場人物や組織・社会設定などの詳細は適当です。ご容赦ください。
また、内容の無断転載、複製、二次使用等はご遠慮ください。






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2025.01.01




同棲生活

それは甘い響きを持って俺を極上の世界に誘ってくれるはずだった。
なのに翌日から牧野は遅番の上、バレンタインフェアの準備だとか言い出して残業続きだ。
迎えに行くと言っても退社時間が読めないとかで断られる。
断られたって行くけどな。

そうして22時を大幅に過ぎて帰宅すれば、今度は疲れてるだなんだといい、挙句は月のものだとか言って別の寝室で寝ようとする。
俺はもう10日近くもオアズケをくらった状態だった。


「な、一緒に暮らしてたらそういう時もあるだろ。だからってなんでいちいち別々に寝なきゃいけないんだよ。襲いかかるわけじゃないんだから、そばにいたっていいだろ。」


自分の部屋に引っ込もうとする牧野を後ろから抱きしめて、体温とともに伝えれば牧野はしぶしぶ折れた。


「本当になんにもしないでよ。」


アノ日の女に何するってんだよ!
最後までできないと生殺しになって苦しむのは俺だ。


「しねぇよ。大人しく寝ろ!」

「それはあたしのセリフ!」


ベッドの中で抱きしめてもまだモゾモゾと抜け出そうとする牧野。
寝返りを打って俺に背を向けたところで声をかけた。


「な、」

「………」

「な・あ!」

「なによ。こっちは寝てんの。」

「お前さ、なんか俺のこと避けてねぇか?」

「えっ?」


牧野の肩に手をかけて仰向けにさせて被さり、その表情を伺った。
俺を見上げている。


「あれからだよな。あのネックレスのケースを開けた時からだ。」

「そんなことないよ。」

「避けてないって?」

「そんなことしてないよ。仕事が忙しくなったのも、生理になったのもたまたまだし、こういう時ってホルモンの関係でちょっと気分が荒れちゃって、それで一人になりたかっただけだし。」

「…本当か?」

「本当だよ。クスッ、心配し過ぎ。」

「なぁ、俺のこと好きだよな?」


そう言えば、こいつから「好き」って単語、聞いたことなかったかもしれないな。


「俺はお前が好きだ。お前は?」

「…あたしもだよ。」

「あたしも…なんだ?」


牧野の目がまた弧を描いた。


「あたしもあんたが好きだよ。」


笑顔で言われたのに、俺の心に残ったのは不安のカケラだけだった。




***




もうすぐ俺の誕生日だ。
昔みたいな派手なパーティーは20歳を最後に催していない。
その後は親友同士、都合のつくヤツと飲むだけだ。



RRRR RRRR RRRR ………


仕事中に総二郎から着信だ。
31日の件だろう。


「よう」

『よっ! 上手くやってるか?』


いきなり本題に入ったらしいが、牧野と付き合い出したことはまだ話してない。
だからとりあえずはぐらかすことにした。


「何の話だよ。」

『牧野だよ。まだ会ってんだろ?』


なんか面白くなってきた。


「ああ。まぁな。」

『お前の誕生日、連れてこいよ。』

「あ?」

『牧野だよ。連れて来いって。俺も久し振りに会いてぇし。』

「連絡先も知らねぇつったろ。」

『まだンなこと言ってんのかよ。いい加減にちゃちゃっと調べて連絡とれ! ったく、30過ぎまで10代の恋をこじらせてんじゃねぇよ。』

「うるせぇ。」

『じゃーな。いつもの店だ。絶対に連れて来いよ!』

「わかった。だがその日は遅くなる。また連絡する。」

『リョーカイ!』


連れて行って、いきなり交際宣言とか総二郎も驚くか?
いや待て。
そんなん普通だな。

俺は内線を手に取った。










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2019.10.18




クローゼットの中で、牧野はゆっくりとジュエリーケースを開けた。
俺は正面からその様子を伺った。

牧野の目はじっとケースの中を見つめていた。
そして手を伸ばすとケースから土星のネックレスを取り出し、透かすように部屋の灯りにかざした。

14年ぶりに見るそれは、昔のままに、光を受けてキラキラと瞬いた。


「変わらねぇな。まるで俺たちの想いみたいに。」


そう言って視線を牧野に戻した俺が見たのは、土星のネックレスを見つめたまま、その瞳からハラハラと涙を零す姿だった。


「牧野!?」


牧野はネックレスを胸元で握りしめると、その場に座り込んだ。


「……ぅ…」

「牧野!? どうした!」


驚いた俺は屈みこんで牧野の顔を覗き込んだ。
牧野は眉根を寄せて目を閉じていたが、それでも溢れる涙を塞きとめることはできず、連なって落ちる跡が頬についていた。


「道明寺…道明寺…うっうぅっ」

「牧野…」

「ごめん…ごめん…道明寺ぃ…」


泣きながら俺の名を呼ぶ牧野を思わず抱きしめた。


「謝るな。お前は悪くない。お前は何にも悪くないんだから。大丈夫だ。俺はここにいるから。」


そう宥めながら細い体を強く抱きしめた。
その間も牧野は俺の名を呼び、泣き続けた。




***




規則正しい呼吸音を立てて俺の横で牧野が眠っている。

あれから泣き続ける牧野を抱き上げ、一番近いベッドに一緒に横たわって包むように抱きしめた。
1時間ほどして、牧野は泣き疲れたのかそのまま眠った。
その手にはしっかりと土星のネックレスを握りしめていた。

俺は混乱していた。

何が起こった?
土星のネックレスを見た途端に泣き出した。
俺の名を呼び、何度も謝っていた。
俺が答えても否定しても止まなかった。
まるで、俺の声など届いていないかのように。

牧野の呼ぶ「道明寺」は俺のことだろ?
なのに遠いところにいる誰かに呼びかけるような牧野の声だった。

そうか。きっとフラッシュバックが起きたんだ。
あの雨の夜、一番辛かったのはこいつだったんだ。
強大な権力に脅され、俺を切り捨てさせられた。
権力の言いなりになるなんてこいつの最も嫌悪するところなのに、他人に迷惑をかけられない性分を突かれた。

俺の中の後悔が再び大きく膨れ上がった。

何で俺はあの時、自分のことしか考えられなかったんだ。
脅されて離れていくこいつの腕を、どうして掴もうとしなかったんだ。
それでも好きだと、俺が大きくなってお前を迎えにいくと、どうして言えなかったのか。
地獄の果てまでも追いかけると言ったのは俺だったのに。

結局、あの時の俺にはこいつを守るってことの本当の意味がわかってなかった。
わかってないってことを、牧野はわかってたんだ。

俺は深く眠る牧野を再び腕の中に閉じ込めた。

今度こそ、何があっても俺が守る。
もう絶対に、お前から離れない。離さない。
お前の悲しみが癒えるなら何でもするから、だから、お前はずっと俺のそばにいてくれ。




***




牧野を抱きしめながら、俺も眠ったらしい。
真夜中に牧野が起きる気配を感じて、俺も目を開けた。
ここは牧野の部屋の寝室だ。
室内は真っ暗で、シフォンカーテンがかかる窓から東京の街の光が微かに差していた。

手を伸ばし、ベッドの上で座る牧野に触れた。


「ごめん、起こしちゃったね。」

「ん…いや、いい。俺もシャワー浴びて寝直すから。」

「あたしもそうするよ。」

「一緒に入ろうぜ。」

「こんな夜中にやだよ。今夜はそういうのはなし。じゃ、あんたは自分の部屋のバスルーム使ってね。」


そう言って牧野はベッドから降りると、クローゼットから着替えを出してバスルームに入って行った。

んだよ。
ちょっとくらいいいじゃん、と拗ねた顔をしてみても、誰が見てくれるわけでもない。
俺もベッドを出て、自分の部屋に向かった。





シャワーを浴びて、スウェットを履きバスローブを着て、また牧野の部屋に戻った。
あいつは洗面で髪を乾かしている。
ドライヤーの音が聞こえた。

ノックをしてから開けると、牧野はバスローブ姿で鏡の前に立ち、黒髪をなびかせていた。
そしてドライヤーを止め、鏡の中の俺を見た。


「なに?」

「俺もこっちのベッドで寝る。」

「は? なんでよ。」

「何でって、同棲初日だろ。一年の計は初日にありって言葉あるだろ。」

「それを言うなら元旦にあり、ね。今夜はもう遅いし、明日はお互いに仕事だし、自分のベッドでゆっくり寝れば? 着替えるから出て行って。」


そうして俺は追い出された。
仕方なくベッドに腰掛けて待ってると、部屋着に着替えた牧野が出てきた。


「まだいたの?」


そうため息をついて俺を通り過ぎベッドに入った。


「おやすみ。あんたも早く寝なよ。」


なんでここまで邪険にされなきゃいけねぇんだよ。
イラついた俺はバスローブを脱いで牧野の横に滑り込んだ。


「ちょっと!」

「なんもしねぇよ。ただお前を抱きしめて眠りたいんだ。」


俺は牧野の体に腕を絡ませて引き寄せた。
牧野の息が喉元にかかる。


「あのネックレス、どうした?」

「またケースに仕舞ったわよ。」

「何でだよ。つけてろよ。」

「いい。お客様に見えたらまずいし。」

「見えねぇだろ。」

「あたしの歳でするにはピンクのルビーが可愛らしすぎ。でも思い出の品だから、大事な時につけるよ。」


確かに17の牧野に似合うように作らせた。
32の女がするようなデザインじゃないかもな。


「じゃ、新しいのを作らせる。今度はそれをいつもしてろ。」

「そんなことしなくていいって。思い出はひとつでいいから。」

「なぁ、牧野」

「眠いよ…なに?」

「俺が悪かった。」

「なにが?」

「あの雨の夜、お前にあんな役目をさせて悪かった。お前を守るって言ったのに、俺はガキで、なんにもわかっちゃいなかった。お前は自分を責めなくていいんだからな。」

「…………」

「もう忘れろ。今、俺たちはこうして一緒にいられるんだから、過去のことはもういい。」

「過去…か。確かにね…忘れなきゃね…」


牧野が俺の背を抱きしめて胸にすり寄った。


「今のあたしにはあんたがいるんだもんね。」

「ああ。」


俺たちは抱き合って眠りについた。








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2019.10.17




俺は英徳卒業後、26までをNYで過ごした。
帰国後は都内にマンションを建て、そこの最上階にオーナーとして暮らしている。
道明寺社屋からほど近い都心の一等地に建つそのマンションは15階建ての分譲で、一番コンパクトな部屋で90平米、階を上がるごとに広くなり、俺の住むペントハウスの下階は200平米がニ戸だ。
もともと俺が住むことを前提に建てられたから、14階と15階の間にもう一層挟み、互いの生活音は完全に遮断されている。

俺の部屋は400弱の平米数に部屋の間取りは2LDKだ。
俺しか住まないし、招くのもあいつらくらい。
だからベッドルームは最低限にした。
その代わりにベッドルームに付随するウォークインクローゼットは各ベッドルームと同じ広さを取った。
キッチンとダイニングはリビングとは独立していて、部屋の東側に位置しているから射し込む朝日を浴びながら朝食を楽しめる。


牧野と付き合うようになって一カ月。
最初の夜こそメープルで過ごしたが、その翌日からは毎日、こいつを拉致り、俺の部屋で朝を迎えている。
クリスマスも牧野の誕生日も年末年始もずっと一緒にいた。
それはまるでこれまでの14年を埋めるかのような濃密な時間だった。


「な、お前もここに住めよ。」


髪を無造作に纏め、俺のTシャツと短パン姿で朝食を準備する牧野にキッチンで後ろから抱きついて、俺は甘えるようにそう囁いた。


「何言ってんのよ。同棲だけはイヤだって何度も言ってるでしょ。」

「なんでだよ。このままじゃ効率悪いだろ。お前の部屋の家賃ももったいねぇじゃん。」

「そうだけど、それでも男女が一緒に暮らすって、煩わしいこともたくさんあるよ。今の距離感がちょうどいいと思う。」

「それはバツイチの経験から言ってんのか?」

「そうだね。」


ちぎったレタスを皿に移しながら、牧野は平然と認めた。


「な、牧野。お前はその男を愛してたのか? 違うんだろ? なら俺とは状況が違うだろ。俺たちなら上手くいくって。」


いつも牧野が家にいて、会いたいと思わなくても会える幸せ。
そんな幸せを常に感じていたいって、真っ当な感情だろ?

俺は牧野を振り向かせ、いつでも触れていたいその唇に自分のそれを被せた。


「ん…」

「なぁ…頼むよ…越してこいよ。」


キスをしながら同棲をねだる。
俺のお願いはだいたいこれで通る。
この一カ月でそれがわかった。
こいつはそれほど俺に惚れてんだと思うと、くすぐったいような、それでいて温かいものに包まれる。
その温かさを感じたくて、つい俺は些細なことでもねだってしまう。


「ん…もうダメ…わかったから。んっとに、ワガママ!」

「わかったって言ったな? よし、じゃ今日中に引っ越し作業させる。」

「今日!? 急すぎだよ!」

「善は急げ。俺もお前も忙しいし、オフは貴重だし、俺の誕生日も近いし。今日からお前の家はここな。」

「ハァ…どこまでも我を通す男、道明寺司さんですか。わかったわよ!」

「よっしゃ! じゃ、俺は業者の手配しとくわ。」

「家賃は?」

「甘えとけ。」

「はいはい。」


俺は楽しくて仕方がなかった。
牧野のオフは店長に言って俺に合わせさせてる。
そんな休みの日の朝、牧野との同棲が決定した。




朝から秘書に連絡して引越し業者を手配させ、牧野と一緒に牧野の部屋に行って荷造りや搬出の様子を眺めて、また俺ん家に戻って搬入を見守った。

大まかな荷物はメイドによって荷ほどきがされ、あとは牧野のプライベートな荷物だけ。
牧野がそれだけはどうしても自分でしたいと言い張った荷物がクローゼットの床に積み上げられていた。
その荷ほどきを、俺は牧野の部屋のベッドに腰掛けて見守っていた。


「なぁ、寝るのは俺の部屋だろ?」

「えー? なにー?」


牧野がクローゼットの奥で声を張り上げた。
俺は立ち上がり、開け放たれた扉からクローゼットルームに入り、入り口にもたれかかった。


「荷物用にここをお前の部屋ってことにしたけどよ。寝るのは俺の部屋だろって言ったんだ。」

「そんな日ばかりじゃないわよ。」


牧野は座り込んで下着をチェストに片付けながら答えた。


「あたしだって一人で休みたい時もあるわよ。」

「どんな時だよ。」


空になった段ボール箱を持って立ち上がった牧野が俺に向かって歩いてきた。


「はい、廊下に出しといて。ついでに潰しといて。」

「彼氏を顎で使うな。」

「彼氏なら手伝え。」


そう言ってまたチェストに戻りながら大きな瞳を俺に向けてクスリと笑んだ。

こういう何気ない瞬間に俺は実感する。
俺たちの間の繋がりってものを。
お互いに14年経っても忘れられなくて、歯車が再び俺たちを巡り合わせたのは運命だったってことを。


「仕方ねぇな。俺の手伝いは高くつくぞ。」


俺は積まれた段ボール箱の一番上の箱を開けた。


「あ…それは最後でいいのに。」

「『その他』って何が入ってんだよ。…なんだ、これ?」


その箱にはマトリョーシカのように段ボール箱よりひとまわり小さな缶で出来た箱がピッタリと入っており、その箱を取り出し、蓋を開けるとそこにはガラクタが詰まっていた。
真っ赤なメガホンに市松模様の法被??


「あー、それはね『思い出箱』そのメガホン、懐かしー! 家族で九州に旅行に行ってさ、野球の試合を見たときに隣のおじさんがくれたんだよね。あっ、その法被は大学時代の学祭で応援団したときの! すっごい練習したの。」


思い出話を滔々と語る牧野は楽しげだった。
俺は、俺の知らない時間の牧野をもっと知りたくて『思い出箱』から次々と品物を出しては「これは?」と牧野に見せていった。
その度に牧野は生き生きと思い出を語ってくれた。

6つ目ぐらいの思い出話を聞いたときだった。
俺の視線は箱の底に眠るように入れられたあるケースに釘付けになった。

__土星のネックレス

それは紛れもなくあのジュエリーケースだった。
俺はそれを取り出し、掌で撫でた。


「あ…それ」


牧野も俺の手にあるそれに気づいた。


「まだ持っててくれたんだな。」

「そりゃ、どうしようもできないでしょ? 捨てるわけにも売るわけにも、誰かにあげるわけにもいかないんだから。」


18の俺が作らせた特注品。
土星の輪の下側には “ Tsukushi ” “ Tsukasa ” と彫ってあるって知ってたか?
我ながらロマンチストだったよな。


「もう『思い出箱』に入れとく必要ないだろ。」

「……そうかな…」

「開けてみろよ。」

「あの時もそう言ったよね。」


俺が差し出した小さなジュエリーケースを牧野は手に取った。
あの時、これを見たこいつはどんな顔をするのかって思ってワクワクしたよな。
今も同じだ。
18の時から俺のこいつに対する想いは褪せてない。


「あたしも10年近く開けてないわ。」


今回も俺は、ワクワクした気持ちで牧野の顔をじっと見つめていた。
久しぶりにそれを見るこいつの顔はどんな表情を見せるのか。
曇るのか、輝くのか。
願わくば輝いて欲しいと思いながら。

そして牧野はジュエリーケースを開けた。


…しかしそれは、俺たちのパンドラの箱だった。








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2019.10.16




大きな瞳を皿のようにして俺を見つめていた牧野だったが、ほどなくして冷静さを取り戻し、呆れたように息をついた。


「そういうことは好きになった女性に言うべきでしょ。あたしにじゃなくて。」


その言葉を聞いて俺は立ち上がり、牧野の隣に腰掛けた。
そして牧野の左腕を取り、その手首から時計を外すと、黒いトレイに牧野が並べた腕時計の中から、白蝶貝のオーバルフェイスの周囲をダイヤが囲み、プラチナで編まれたブレスレットの腕時計を手に取り、それをその細い手首に巻きつけた。

その間、牧野は口を閉じ、自分の手首にヒンヤリとした金属の感触が触れるまでじっと俺の顔を見つめていた。


「…なにしてんの…?」


俺は牧野の目を見た。


「お前の言う通りだ。だからちゃんと言う。俺はお前が好きだ。14年経っても気持ちは変わらなかった。だから俺と正式に付き合ってくれ。」


牧野は表情を変えず、ただ瞬きを繰り返した。


「返事は? OKだよな?」

「…え?」

「俺の彼女になってくれるよな?」

「あたしが?」

「ダチのことなら心配するな。俺はもう18の何も持たなかったガキじゃねぇ。今はお前を守れる力がある。ただの口先だけでも意気込みだけでもない、本物の力だ。」

「あの…でも…」


俺は戸惑う牧野の顔を両手で包んで、その瞳を覗き込んだ。


「お前が好きだ。やっぱり俺にはお前しかいない。牧野つくししかいない。今度こそ本気で守るから、俺に飛び込んでこい。…お前が必要なんだ。」


俺のその言葉に、牧野の瞳の揺らめきが凪いだ。


「あたしが必要?」

「ああ。」

「そばにいて欲しいの?」

「いて欲しい。」


俺に向けられた瞳が弧を描いた。


「…わかった。いいよ。あたしは今日からあんたの彼女ね。」

「ッ!! 牧野!!」


言われた瞬間、俺は息を呑み強く牧野を抱きしめた。
やっと、やっと、想いが通じた。
やっと、やっと、俺のものになった。

俺にあるのはその喜びだけだった。




***




その後、俺は牧野の手首に巻きつけた時計を買い取り、改めて牧野に贈った。
「こんな高いもの、どこに着けて行くのよ。」とブツクサ言っていたが、俺とデートするときに着けると約束してくれた。
そして「商談特別室」に店長と外商を呼び出すと、早速、交際宣言をした。


「牧野は俺の恋人だ。ぞんざいに扱うなよ。今日はこのまま連れて帰るから。」


驚きのあまり二人とも口が開いてたが知ったこっちゃねぇ。
「何言っちゃってくれてんのよ!」と俺の腕を叩いていたが構わずに俺は牧野と店を出た。
出たところでライオンの頭をもうひと撫でしてから車に乗り込んだ。

やっぱあれを邸に持って来させるか。


「あーあ、早退なんて初めて。で、これからどこに行くの?」

「お前の行きたいところ。どこでもいいぞ。」

「あたしは別に。あんたは? どこに行きたい?」

「俺か…とりあえずもう夜だからな。お前をドレスアップさせてディナーでもするか。」

「ドレスアップは必要ないけど…確かにお腹は空いた。」


そんな会話をしながら、俺は後部座席で牧野を抱き寄せ、その髪に頬を寄せていた。

こいつは俺のものだ。
体だけじゃなく、心も繋がったんだ。

その高揚感たるや、俺の背中に翼が生えたんじゃないかと思うほどだった。
脳内に麻薬のように幸福が押し寄せ、顔の筋肉が笑顔を作りっぱなしだった。


「顔、気持ち悪い。」

「テメェ、俺の顔が気持ち悪いだと? そんなことが言えるのはお前だけだ!」

「って、まだ笑ってんじゃん! ちょっ、痛いって!」


肩を強く抱き寄せて、頭の上に顎の乗せてグリグリしてやった。

あー、楽しい!
人生がこんなに楽しいものだとは今の今まで知らなかった。
車窓には俺たち二人が映ってる。
外はすっかり日が暮れ、クリスマスイルミネーションに包まれていた。


「もうすぐクリスマスだな。何が欲しい?」

「は? いやいや、もういただきましたから。」


そう言って牧野は左手首を見せた。


「それは交際記念だ。クリスマスはもっと特別なものがいいな。バカンスに行くか。」

「バカンス!? 平日だよ。仕事でしょーよ!」

「じゃ、一泊でリゾートにするか。」

「ハァ…だから仕事だって。一泊したいなら付き合うけど。」

「当たり前だろ! お前はもう俺の女なんだからな。」

「わかったから、ちょっと落ち着きなよ。ね?」


牧野を抱きしめ、牧野の声をすぐそばに聞いて、牧野と他愛もない会話をして。
14年のブランクも、半年悩んだことも全部吹き飛んで、俺は心ゆくまで牧野を堪能した。




***




「牧野っ…牧野っ…好きだっ」

「あっ…あっ…やぁん…道明寺…だめっ…イくっ」


あれから牧野を飾り立てようとハイブランドブティックに降り立ったが牧野が強硬に抵抗したため、ラフなイタリアンレストランでディナーをして、今夜は早々にメープルでも最高位のインペリアルに入り、一緒にバスに浸かって繋がり、そしてベッドに移って繋がった。

牧野は濡れないどころか滴るほどに濡れて、やはりこいつが愛してた男は俺だったんだと実感した。

こいつは17の時からずっと俺を愛してくれてたんだ。
そう思うと、狂おしいほどに愛しさが増した。
雨の中で俺に別れを告げた牧野は、どれほど辛かっただろう。
そんなこいつの気持ちに気づきもせずに恨んだこともあった。
俺は本当にガキだったんだ。


「くっ…」


あわよくばデキちまえと牧野の中に放って、まだ繋がったまま抱き合った。
いつも終わればこいつは帰っちまう。
それを見送ることしかできなかったけど、今夜からは帰さない。


「今夜は泊まっていけよ。」

「帰っちゃダメなの?」

「帰る必要ない。俺の女だ。朝まで一緒にいたい。」

「わかった…」


そう言って牧野は俺の背を撫でた。








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2019.10.15
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